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☆79☆
アルタ手前の紀伊國屋書店で岡月律華先生と出会う。
男性同士がからんだ少女漫画風の絵が描かれた、
大きな紙袋に、
妙に薄っぺらい本をいっぱい詰め込んでいた。
俺は、
「何ですか? その薄っぺらい本の束は? ずいぶん大量に買ったんですね。安いんですか?」
律華が、
「一冊千円として三十冊だから、三万円だな」
俺は仰天し、
「何で、そんなに薄っぺらい本が、そんなに高いんですか!?」
律華が、
「これは同人誌と言ってだな。
大手出版社と違って、
小さな印刷会社で印刷している部数の少ない本だから、
コストがどうしても高くなって、値段が高くなるんだよ」
俺は感心しつつ、
「高いのは分かりましたが、何だってそんなにいっぱい、まとめ買いしたんです?」
律華が、
「発行部数が少ないからな。早めに買わないと売り切れるんだよ」
俺は、
「そんなに面白いんですか? その本?」
俺は半信半疑だった。すると、
律華が鋭い眼差しで、
「この本はBLといってな、
少年同士の熱くて深い、
とてつもなく深い友情を描ききった本だ。つまらないわけが無いだろう」
俺は、
「友情ですか。ジャンプみたいですね。一つ俺に見せて下さいよ」
律華が一冊取り出して俺に渡す。
はずだったが、
横からシアロンの手が伸びて本を横取りされてしまった。
「おいシアロン! 俺が読もうとしているのに、横取りすんなよ!」
シアロンがジロッと俺を睨み、
「貴様はレディーファーストという言葉を知らんのか! これだから愚民は!」
と言いながら本を開く。
しばらくするとページをめくる指先がブルブル震えてきて、
冷や汗をダラダラたらし、
顔が赤くなったり、
青くなったり、その様子を見ていた俺は、いても立ってもいられない、
「シアロン! もう、いいだろう! 俺にも見せ!」
ゲシッッッ!!!
いきなり顔面に強烈なシアロン・キックを浴びて吹っ飛ぶ俺。
「痛たた、な、何だよ? 何か悪い事したか?」
シアロンが顔を真っ赤にして、
「と、突然、覗くからだ! バカチンが!!」
「わけがわからん」
律華が、
「つまり竜破、お前は覗いてはいけない、地獄のカマドのフタを開けたんだよ、不運だったな」
俺は、
「禁書かよっ! て、じゃあ何でシアロンは見てもいいんだよ? 禁書なんだろ?」
律華が、
「男子禁制の乙女の花園本なんだよ。それを覗こうとするから、キックを食らう事になる」
俺は、
「なら俺に渡すなよ」
律華がフッと笑い、
「お前はオタクだからな。
まあオタク見聞録を広めるためにも、見せてやってもいいかな〜。
と、思ったんだよ。
正常な男子生徒には絶対、見せられない内容だがな、アッハッハ」
俺は、
「オタクは正常じゃないのかよ? たく、ますます、わけわからん」
不平をこぼすと、
アルタの大型ビジョンにノイズが走り、映像が切り替わる。
そこに映っていたのは、
怪盗アールだ。




