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☆7☆
烈火と星図の二人が広間に戻ってから、俺はトイレに行った。
素早く制服を脱ぎ、ゴミ箱に捨てると、
制服の下から身体にピッタリとした黒いスーツが現れる。
リュックタイプのカバンを背負い直し、通風口からビル内に侵入する。
ハイハイで中を進み、途中、監視カメラの配線に仕掛けを施す。
この先の監視カメラの映像が、三十分前の映像をループするようセットする。
画面をループに切り替えるさい、一瞬、ノイズが走るが、異常に気づく奴はいないだろう。
さらにハイハイで進むと、単独で警備している警戒の手薄な場所に出る。
俺は通風口から踊り出て、スタンガンで警官を眠らせる。
そいつを大きな美術品の影に隠し、制服を脱がせて縛り上げ、その警官の制服を着て変装する。
あとは、大手を振って大広間へと歩いて行く。
廊下で星図とすれ違うが、俺だとは気づいてない。
「竜破っ!?」
ギクッ!
星図の声が廊下に響く。
俺は声色をガラガラのオッサン声に変え、
「本官に何かご用でしょうか?」
星図が目を丸くして、
「えっ? あの? なんとなく、その、竜破に似ていたので、すいません。間違えました」
「では失礼します」
本当に鋭いな。
一応、さっきの警官に顔つきを似せておいたんだが。ていうか、賊がいつ来るかわからないのに、館内をウロウロするなよ。
俺は心の中で星図の事を毒ずきながら、大広間に入る。
同時に缶コーヒーサイズの筒を広間中央に投げ入れる。
すると、
筒が眩しく発光し、大量のガスを吹き出す。
大広間は、あっという間にあたり一面、白い煙に包まれた。
「炎のルビーを守るのだ!」
鬼頭警部の怒声が響く。
視界を遮られ、混乱しながらも、警官たちは炎のルビーのケースに殺到する。
もちろん、俺もその一人だ。
俺がケースを見つめると、ケースに緑色の走査線が走り、
ザーーー。
ケースが砂になって穴があく。
俺はその穴から炎のルビーを取り出す。
途端にその腕を捕まれ、
「貴様が怪盗ゲロデムだなっ!」
鬼頭警部が鬼のような形相で俺をにらむ。
俺は偽の右手を外し、本物の手でルビーをつかむ。
同時にケースの上に飛び上がった。
「なにっ!?」
偽の手をつかんだ鬼頭警部が叫ぶ。それを尻目に、俺は天井に向かってリストバンドを向ける。それに搭載した杭打ち銃を発射。
杭の底には鋼糸がついていて、リストバンドの強力なモーターが鋼糸を巻き上げる。
俺の身体は、あっという間に天井まで引き上げられた。
俺はガラスの丸天井を見つめる。すると、緑色に光る走査線が走り、
ザーーーッ!
ガラスが砂になって穴があく。
俺はその穴に飛び込み、屋上に逃げた。