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どこからともなく桃太郎の声が響いてくる。いわく、
「ワシは館で休養するゆえ、我が三人のシモベよ! あとは任せたぞよ!」
俺は、
「三人のシモベだって? 犬、猿、キジの事か?」
俺の問いに答えるように甲高い少女の声が響く。
「まったく酷いよね〜。酷いと思わない? 自分勝手なんだからさあ、もう、早くシモベ生活を止めたいよ〜!」
少女は孫悟空のコスプレをしてい。年は十二、三歳か?
俺は、
「孫悟空!?」
少女が、
「孫空子だよ!」
空子が耳から耳かきを取り出し、
「猴仙術っっっ! 如意なる棒よ!」
耳かきが、みるみる大きく、伸びていく。
電柱ほどになった途端、
少女が、
「どりゃ、どりゃ、どりゃ〜っ!」
とか叫びながらブンブン、ブン回す。
「ブンブン丸か!?」
竜巻のような突風まで発生し、
足元がよろけた所へ電柱棒が迫る。
ガッキッッッ!
凛華がマジカル☆スターソードで電柱棒を受け止め、
空子をにらみつける。
「学校で電柱を振り回しちゃ駄目って教わらなかったの!? 校則を破っちゃ駄目なんだよ!!」
空子が、
「アハ、なかやかやるね、魔法少女のお姉ちゃん。でも、これなら、どうかな!」
空子が髪を抜き取り、
「妖毛変化! ボクに変われっ!」
数十本の髪の毛が次々に空子に変わる。
空子集団がいっせいに凛華に襲いかかる。
ズドン、ズドン!
なりふり構っていられなかった。
俺はワルサーP38軍用拳銃に実弾を詰め撃ちまくる。
暗褐色をした空子の分身は、さほど強いわけではなく、
ワルサーの銃弾に次々と倒れていく。
凛華も空子を追い詰め始める。
空子が、
「ズルイぞ! 二対一なんて!」
泣き言を並べ始める。
所詮はお子様か。すると、
ちょっと大人っぽい声が、
「一人で大丈夫だから、手を出すなって言ったのは、あんたでしょ、空子。だから、最初からアタイに任せときゃ良かったんだよ」




