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   ☆63☆


 雷夢が、

「ごめんアル。アタシが油断したせいで、竜破が死んじゃったアル。ごめんアル!」

 俺の身体を揺さぶる雷夢。

 まだ死んでないって、言いたかったが、言うだけの力は無かった。

 雷夢の瞳が涙に濡れる。

 烈火が、

「雷夢、離れるのだ。そろそろ始まるのだ」

 雷夢が、

「えっ?」

 サヤが、

「絶対復元能力デス」

 雷夢が、

「まさか! 本当アルか!? あっ! この光は、竜破の話していた緑色の走査線アル!」

 緑色の光が走査した部分から、次々に切り裂かれた身体が元に戻っていく。

 俺の意識もはっきりしてきた。

 俺は、

「やれやれ、結局、巡の占い通りになったな」

 雷夢が、

「竜破! 本当に治ったアル! 

 信じられないアル! 

 死者が甦るなんて! 

 デタラメと思っていたアル! でも、本当に生き返ったアル! やったアル!」

 俺は、

「まあ、話を聞いただけじゃ、なかなか信じられないよな」

 雷夢が、

「アタシは決めたアル。

 竜破はアタシを命がけで守ってくれたアル。だから、

 アタシの命は、竜破の物も同然アル」

 は?

 俺は、

「そんな、たいした事じゃ」

 雷夢が真剣な顔で、

「だから、アタシは竜破と結婚するアル!」

 俺、

「えっ!?」

 烈火、

「んなっ!?」

 サヤ、

「命の恩人デスから当然デスね」

 俺が、

「待て待て待て! 何でそうなるんだ!? そもそも俺にはラクリスという心に決めた人が」

 雷夢が、

「そんな事は分かっているアル! でも、でも好きになったんだから、仕方ないアル! 

 アタシはもう、誰も止められないアル! 

 今はダメでも、いつか、きっと、竜破の一番になってみせるアル!」

 烈火が安堵し、

「なんだ、そ、そういう事か、ちょっと、ビックリしたのだ」

 サヤが、

「一目惚れ。という奴デスね」

 俺は、

「いや、マジでちょっと待ってくれ、今はそういう気分じゃないんだよ。スコーピオンを捜さにゃならんし」

 雷夢が、

「アタシも一緒に捜すアル。そのほうが効率的アル」

 俺が、

「スコーピオンとの戦いは命がけなんだよ」

 雷夢が

「アタシの命は竜破の物アル」

 俺は、

「スコーピオンを倒したら、俺は迷わずラクリスと」

 雷夢が、

「その前にアタシが竜破の一番好きな人になるアル」

 何を言っても無駄みたいだ。

 どっからそんな自信が出てくるのやら。

 烈火が、

「諦めるのだ、竜破。雷夢に何を言っても無駄なのだ」

 確かに。

 サヤが、

「恋は盲目なのデス」

 仕方ない。

 俺は、

「分かった分かった。俺の負けだ。雷夢の好きにしたらいい。ただし、スコーピオン捜しの邪魔にならないようにな」

 雷夢が、

「分かったアル!」

 と言うと突然、雷夢のスマホが鳴った。

 雷夢がスマホを取り出し、

「大変アル! 母ちゃんからの電話アル!」

 という事は、星図の伯母さん。

 確か、刀華、とか言ってたな。

 雷夢がスマホを耳にあて、

「ら、雷夢アル。何の用アルか? 母ちゃん?」

 スマホ越しに刀華の声が響く。

『雷夢っ! 

 あんた修行もしないで何やってんのよ! 

 今どこにいるの? 

 母さんに何も言わないで、勝手に修行を止めて出てくなんて、何考えてんのよ!』

 雷夢がオロオロしながら、

「アタシは今、東京にいるアル。

 ハンターとして、怪盗ゲロデムを捕まえるために、ここまで来たアル」

 刀華が、

『それで、捕まえたの? そのゲロゲロ?』

 雷夢が、

「ゲロゲロじゃないアル。ゲロデム、アル」

 刀華が、

『ど、どっちでもいいのよ! ともかく捕まえたの? そのゲロリンを?』

 雷夢が肩をすくめ、

「それが、逃げられたアル」

 刀華が、

『しょうがないわね~。

 雷夢は昔っから何をやっても中途半端なのよね。

 アタシがあなたぐらいの年齢の時はバンバン、ハンターの仕事をこなしたもんよ。

 高層ビルを巻き添えにしてブッ壊した事もあったっけ。

 それはともかく、怪盗ゲロヨンを捕まえられないなら、もうハンターの仕事は諦めて、香港に帰ってきなさい。

 これは、ギルド長としてのアタシの命令よ! いいわね!』

 雷夢が、

「アタシ、困るアル。アタシはまだ、香港には帰れない理由が出来たアルよ」

 刀華が、

『どういう事よ! そんなにゲロドンが捕まえたいの? そんならアタシが行って捕まえてやるわよ! それでいいわね!』

 雷夢が、

「ち、違うアル! ゲロデムは関係ないアル」

 刀華が、

『じゃあ何なのよ? 何で香港に戻って来ないのよ?』

 雷夢が、

「ア、アタシは、アタシは好きな人が出来たアル! だから帰れないアル!」

 刀華が、

『うっそ! マジで? 本当なのその話? 相手は誰よ?』

 雷夢が、

「有世竜破。アタシと同じ高校生アル」

 刀華が、

『本当に好きなんでしょうね、その、

 アルセーヌ・ルパンが』

 言い間違いだろうが、

 奇しくも、刀華は俺の転生前の名前を言い当てた。

 雷夢が、

「そうアル。アタシは竜破の事が大好きアル。でも、まだ片思いだから、今は香港には帰れないアル」

 刀華が、

『雷夢、お前は修行やハンターの仕事なんかより、もっと、大切な物を見つけたって事ね。

 分かったわ。それなら、

 アタシとしては何も言うことはないわ。

 雷夢、あなたの好きにしなさい。そのかわり、

 男をモノにするまでは、香港に帰ってきちゃダメよ。いいわね!』

 雷夢が、

「うん。わかったアル。母ちゃんありがとうアル」

 雷夢がスマホを切り、胸元から炎のルビーを取り出し、俺に渡す。

「竜破の疑いは解けたアル。炎のルビーは竜破が持つアル」

 俺は炎のルビーを受け取り、

「よし。これでまた地獄の少女道化師をおびき寄せる事が出来るぞ」

 雷夢が、

「今度こそやっつけてやるアル」

 烈火が、

「三度目の正直なのだ。次は倒すのだ」

 サヤが、

「何かいい方法があるといいのデスが」

 俺が、

「俺にちょっと考えがある。上手くやれば地獄の少女道化師をなんとか出来るかもしれない」


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