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雷夢が、
「ごめんアル。アタシが油断したせいで、竜破が死んじゃったアル。ごめんアル!」
俺の身体を揺さぶる雷夢。
まだ死んでないって、言いたかったが、言うだけの力は無かった。
雷夢の瞳が涙に濡れる。
烈火が、
「雷夢、離れるのだ。そろそろ始まるのだ」
雷夢が、
「えっ?」
サヤが、
「絶対復元能力デス」
雷夢が、
「まさか! 本当アルか!? あっ! この光は、竜破の話していた緑色の走査線アル!」
緑色の光が走査した部分から、次々に切り裂かれた身体が元に戻っていく。
俺の意識もはっきりしてきた。
俺は、
「やれやれ、結局、巡の占い通りになったな」
雷夢が、
「竜破! 本当に治ったアル!
信じられないアル!
死者が甦るなんて!
デタラメと思っていたアル! でも、本当に生き返ったアル! やったアル!」
俺は、
「まあ、話を聞いただけじゃ、なかなか信じられないよな」
雷夢が、
「アタシは決めたアル。
竜破はアタシを命がけで守ってくれたアル。だから、
アタシの命は、竜破の物も同然アル」
は?
俺は、
「そんな、たいした事じゃ」
雷夢が真剣な顔で、
「だから、アタシは竜破と結婚するアル!」
俺、
「えっ!?」
烈火、
「んなっ!?」
サヤ、
「命の恩人デスから当然デスね」
俺が、
「待て待て待て! 何でそうなるんだ!? そもそも俺にはラクリスという心に決めた人が」
雷夢が、
「そんな事は分かっているアル! でも、でも好きになったんだから、仕方ないアル!
アタシはもう、誰も止められないアル!
今はダメでも、いつか、きっと、竜破の一番になってみせるアル!」
烈火が安堵し、
「なんだ、そ、そういう事か、ちょっと、ビックリしたのだ」
サヤが、
「一目惚れ。という奴デスね」
俺は、
「いや、マジでちょっと待ってくれ、今はそういう気分じゃないんだよ。スコーピオンを捜さにゃならんし」
雷夢が、
「アタシも一緒に捜すアル。そのほうが効率的アル」
俺が、
「スコーピオンとの戦いは命がけなんだよ」
雷夢が
「アタシの命は竜破の物アル」
俺は、
「スコーピオンを倒したら、俺は迷わずラクリスと」
雷夢が、
「その前にアタシが竜破の一番好きな人になるアル」
何を言っても無駄みたいだ。
どっからそんな自信が出てくるのやら。
烈火が、
「諦めるのだ、竜破。雷夢に何を言っても無駄なのだ」
確かに。
サヤが、
「恋は盲目なのデス」
仕方ない。
俺は、
「分かった分かった。俺の負けだ。雷夢の好きにしたらいい。ただし、スコーピオン捜しの邪魔にならないようにな」
雷夢が、
「分かったアル!」
と言うと突然、雷夢のスマホが鳴った。
雷夢がスマホを取り出し、
「大変アル! 母ちゃんからの電話アル!」
という事は、星図の伯母さん。
確か、刀華、とか言ってたな。
雷夢がスマホを耳にあて、
「ら、雷夢アル。何の用アルか? 母ちゃん?」
スマホ越しに刀華の声が響く。
『雷夢っ!
あんた修行もしないで何やってんのよ!
今どこにいるの?
母さんに何も言わないで、勝手に修行を止めて出てくなんて、何考えてんのよ!』
雷夢がオロオロしながら、
「アタシは今、東京にいるアル。
ハンターとして、怪盗ゲロデムを捕まえるために、ここまで来たアル」
刀華が、
『それで、捕まえたの? そのゲロゲロ?』
雷夢が、
「ゲロゲロじゃないアル。ゲロデム、アル」
刀華が、
『ど、どっちでもいいのよ! ともかく捕まえたの? そのゲロリンを?』
雷夢が肩をすくめ、
「それが、逃げられたアル」
刀華が、
『しょうがないわね~。
雷夢は昔っから何をやっても中途半端なのよね。
アタシがあなたぐらいの年齢の時はバンバン、ハンターの仕事をこなしたもんよ。
高層ビルを巻き添えにしてブッ壊した事もあったっけ。
それはともかく、怪盗ゲロヨンを捕まえられないなら、もうハンターの仕事は諦めて、香港に帰ってきなさい。
これは、ギルド長としてのアタシの命令よ! いいわね!』
雷夢が、
「アタシ、困るアル。アタシはまだ、香港には帰れない理由が出来たアルよ」
刀華が、
『どういう事よ! そんなにゲロドンが捕まえたいの? そんならアタシが行って捕まえてやるわよ! それでいいわね!』
雷夢が、
「ち、違うアル! ゲロデムは関係ないアル」
刀華が、
『じゃあ何なのよ? 何で香港に戻って来ないのよ?』
雷夢が、
「ア、アタシは、アタシは好きな人が出来たアル! だから帰れないアル!」
刀華が、
『うっそ! マジで? 本当なのその話? 相手は誰よ?』
雷夢が、
「有世竜破。アタシと同じ高校生アル」
刀華が、
『本当に好きなんでしょうね、その、
アルセーヌ・ルパンが』
言い間違いだろうが、
奇しくも、刀華は俺の転生前の名前を言い当てた。
雷夢が、
「そうアル。アタシは竜破の事が大好きアル。でも、まだ片思いだから、今は香港には帰れないアル」
刀華が、
『雷夢、お前は修行やハンターの仕事なんかより、もっと、大切な物を見つけたって事ね。
分かったわ。それなら、
アタシとしては何も言うことはないわ。
雷夢、あなたの好きにしなさい。そのかわり、
男をモノにするまでは、香港に帰ってきちゃダメよ。いいわね!』
雷夢が、
「うん。わかったアル。母ちゃんありがとうアル」
雷夢がスマホを切り、胸元から炎のルビーを取り出し、俺に渡す。
「竜破の疑いは解けたアル。炎のルビーは竜破が持つアル」
俺は炎のルビーを受け取り、
「よし。これでまた地獄の少女道化師をおびき寄せる事が出来るぞ」
雷夢が、
「今度こそやっつけてやるアル」
烈火が、
「三度目の正直なのだ。次は倒すのだ」
サヤが、
「何かいい方法があるといいのデスが」
俺が、
「俺にちょっと考えがある。上手くやれば地獄の少女道化師をなんとか出来るかもしれない」




