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早乙女邸を出たあと炎華が、
「いったん日陰市に戻って日陰大学病院に行きましょう。このあたりの総合病院はあそこしかないから、病気やケガをしたなら、必ず、あの病院に行くはずよ」
俺は、
「おいおい、美墨ばあさんの前じゃ早乙女教授を疑うなんて、とんでもないみたいな話しかただったくせに、結局、教授を疑ってんのかよ」
炎華が、
「裏を取るだけよ。早乙女教授が本当に犬に噛まれて病院に行ったかどうかをね。私は教授を疑ってるわけじゃないわ」
俺は、
「いや、それを疑っているって、痛っ!」
俺の足を炎華が踏んづける。
炎華が、
「とにかく行くのよ。今度はタクシーで行きましょう」
俺は、
「わかったよ。そんな、ムキになんなよ」
炎華が俺を睨み、
「いつ私がムキになったの?」
俺は足下を警戒しながら、
「待て待て、今すぐタクシーを呼ぶから、そんな顔で睨むなっての」
一触即発の危機を俺は回避した。




