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☆44☆
「冥界の剣!
闇の軍勢、最強の鎧!
亡者を鎮める獄界の番人!
来たれ!
火の〈冥装機〉――〈ゲヘナス〉!」
地面が裂ける。
深淵へ続く暗い穴が開き、
暗闇から巨大な手が伸びる。
漆黒の鉄板を無理矢理〈人型〉に押し込めた無骨なシルエット。
獄界の番人に相応しい巨躯。
巨人が地獄の亡者さながら、暗闇から這いずりあがる。
全長五メートル。
俺は巨人を見上げる、
〈ゲヘナス〉。
巨体の隅々に紅いファイヤー・パターンが施され、
実際に炎をあげている箇所もある。
胸元?
らしき装甲が開き、
烈火が〈ゲヘナス〉内部に飲み込まれる。
指先を不気味に開き、また握る。
機体が床に突き立てた〈紅蓮剣〉を握る。
烈火の大剣も〈ゲヘナス〉が握ると、丁度良いサイズの剣になる。
不思議な事に、
地面の裂け目が元に戻った。
『必殺! 紅蓮地獄! なのだ!』
烈火が叫ぶ。
すると、直径十メートルほどの魔法陣が地面に展開され、
俺はとっさに魔法陣の外に逃げ出した。
それを見て危険を感じたのか、地獄の少女道化師も、俺と反対側に逃げた。
水虎とチャンチャンバラバラやっていたサヤも、危険を察知し、魔法陣の外に逃げ出した。
残った水虎が逃げ出そうとするが、サヤの放った数十本の長剣が地面に突き刺さり監獄の柵のように逃亡を阻止する。
「てめえっ! くそっ! 出しやがれ!」
水虎が叫ぶ。が、遅かった。
魔法陣を中心に結界が張られ、内部にいる者はすでに脱出不可能だ。
烈火が無慈悲に、
『燃やし尽くすのだ!』
結界内が炎に包まれ、阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。
基本、黒い塗装のゲヘナスが、今は真紅に燃えあがっている。
形勢不利と見たのか、地獄の少女道化師は姿を消した。




