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烈火が、
「昨日はよくも竜・・アールをやってくれたのだ! 今日は、昨日のようにはいかないのだ!」
啖呵を切ったものの、腰が引けているうえ、地獄の少女道化師のビシビシ唸るムチをさばくので精一杯、防戦一方だった。
相性が悪いのは間違いない。
俺が、
「かわるよ烈火。お前の大剣じゃ分が悪いだろ」
烈火がホッとしたように、
「なら竜、いや、怪盗アールに任せるのだ! 三分、時間を稼いでくれれば、獄界神ゲヘナスを召喚するのだ! 敵を瞬殺するのだ!」
俺は、
「三分って、なんかカップ麺みたいだな」
烈火がホッペをふくらませ、
「カップ麺ではないのだ! 獄界神ゲヘナスなのだ!」
俺は、
「わかったから、俺に任せておけ、三分稼いでやる」
烈火が後退し、
「うむ! 頼んだぞ、竜、いや、怪盗アール!」
烈火が校舎側まで戻り、大剣を地面に突き立てると、なにやら呪文を詠唱し始める。
地獄の少女道化師が、
「フンッ、貴様の化けの皮を剥がして、昨日の二の舞いにしてやるわ!」
スバンッッッ!!!
地面を引裂き、液状のムチが俺を襲う。が、まるで闘牛士のように、その攻撃を俺は華麗に避けた。
地獄の少女道化師が驚愕の表情を浮かべ、
「なにいいいっっ! ばっ、バカなああっ? なぜ、当たらないっ?」
種を明かせば仮面に秘密がある。
振動感知センサーを取り付け、地下の微弱な振動を察知し、危険を知らせるようにした。
青い背広に赤い蝶ネクタイの子供のメガネか、アイアンなヒーロー並みに高性能にした仮面だ。
地獄の少女道化師が歯噛みしながら、
「ならば正攻法でいくまでよ!」
地獄の少女道化師が口許に皮肉な笑みを浮かべ、
「これなら避けられまい! 死ねっ!」
蜘蛛の糸のように細い液状ムチを、蜘蛛の巣状に振るう。
「ハハッ! 巣に掛かった虫ケラめっ!」
が、その巣をすり抜け、俺は水鉄砲を地獄の少女道化師に向ける。
種を明かせば、
水鉄砲に仕込んだ硫酸で液状ムチを溶かしたのだ。
硫酸は化学実験室で失敬した。
地獄の少女道化師がとっさに水鉄砲の攻撃を避ける。
飛び散った硫酸があたりを溶かすのを見て、
シアロンが憤慨し、
「女の子に硫酸をかけるとは、騎士道精神の欠片もないクズめっ!」
俺は、
「蜘蛛の巣状に切り刻む奴が言っても説得力ないわな」
シアロンが切れる。
「うるさいウルサイ五月蝿い!」
子供のように目くら滅法に攻撃してきた。
俺は硫酸で液状ムチを溶かしつつ攻撃をかわし、烈火を振り返る。
「まだか烈火! そろそろ硫酸切れだぞ!」
烈火が吠える。
「準備万端整ったのだ! 万事、あたしに任せるのだ!」




