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☆42☆
よせばいいのに律華が校舎から飛び出してくる。
律華が、
「何だお前は? コスプレか? 変な格好をして! 帰れ、帰れ!」
水虎が悲しげな、そして無論、不気味な表情と声音で、
「俺は腕を探しに来たんだよ。腕が、腕が、俺の腕がああ!」
失った腕のかわりに、鉄板を盾のように付けている。
その鉄板をさすりながら、ギョロリと律華をにらみつけ、
「痛いんだよおおおっ!」
言いながら残った腕を振り上げ、刃のような爪を律華目掛けて振り落ろす。
ガッキッッ!
受け止めたのは、サヤの身体から伸びた剣だ。
少しでも遅れたら、律華は真っ二つになっていた。
怖いもの知らずも考えものだ。
俺はシアロンに、
「案内は終わりだ! じゃっ、またな!」
俺は階段を降りつつ、仮面を付け、制服を脱ぎ捨て、黒いスーツ姿の怪盗アールとなる。
そして、七階の窓から飛び降りる。
無論、リストバンドの杭打ち銃を壁に打ち込み、ワイヤーを使って降りた。
サヤは複数の剣を操つり、水虎に果敢に挑んでいる。
水虎は盾でその攻撃をふせぐ。
さすがに、もう不意討ちは通じないようだ。
サヤに合流した俺は、
「いいのか? 身体から剣が飛び出す大魔術を披露して?」
サヤが、
「九百九十九振りある魔剣の一つ、幻魔剣の能力で、生徒も教師も眠らせているから大丈夫デス」
俺は、
「お前の身体は、まるで四次元のポケットみたいだな」
サヤがニヤリと笑う。
校舎を見ると、正門をのぞいていた生徒たちや教師が、みんな眠りこけていた。
俺は律華を抱え、
「安全な場所に運ぶから、それまで頼む」
サヤが無言でうなずく。
俺が校舎のそばまで律華を運ぶと烈火が、
「これはいったい何の騒ぎなのだ! 正門が騒がしいから駆けつけて来たが、みんな眠っているから、何が起きているのか、さっぱり分からないのだ!」
俺は正門で戦っているサヤと水虎を指差し、
「荒川で女子高生を殺した犯人だよ」
烈火が、
「何っ! あの二人が? 一人は謎の包帯女ではないか? 戦っているのは何故なのだ?」
俺は、
「包帯女のサヤは味方っぽいぞ、律華を水虎から助けたからな。虎模様のカッパみたいなのが水虎だ」
烈火が紅蓮剣を取り出し、
「なら水虎をやっつけるのだ!」
紅蓮剣片手に水虎に突進する烈火。
烈火が、
「紅蓮羅弾!」
展開した魔法陣から炎のつぶてが水虎に襲いかかる。
水虎が仰天し、
「新手かよっ!」
とっさに盾をかかげる。が、
今度は紅蓮剣の剣戟をまともに受け吹っ飛ばされる。
盾がなかったら、今ごろ真っ二つになっていた。
烈火とサヤは、とくに打ち合わせしたわけでもないのに、上手く連携してジリジリと水虎を押しまくる。
水虎が、
「テメエら汚えぞ! 二対一なんて! 卑怯だぞ!」
そこへ液状のムチが唸り、烈火とサヤの剣を弾き飛ばす。
「ならワタクシ様が助太刀してやるよ! 水虎!」
そう言って戦いに割って入ったのは、
「「怪盗ゲロデム!」」
「地獄の少女道化師だっっ!!」
烈火とサヤの間違いを地獄の少女道化師が訂正した。




