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   ☆41☆


 七階は室内競技場だ。が、シアロンは、

「スポーツなどルールからして、さっぱり分からん。これで案内は終わりだな」

 俺は、

「いや、もう一か所残っているぞ。今は冬だから時期はずれだが」

 シアロンが首をかしげ、

「もう、今まで見たぶんだけで充分だ。時期はずれなら余計、見る必要はあるまい」

 俺はシアロンの背中を押すように、

「だけど、もったいない事に今が一番綺麗なんだよ。まるで宝石みたいにな」

 宝石という言葉につられてシアロンがついてきた。

 俺は階段を上がる。

 シアロンが、

「何だ。屋上の事か。がっかりだな。無断立ち入り禁止と看板にあるぞ。大丈夫なのか?」

 とか言いながら、気にせず進む俺のあとに律儀についてくる。

 俺はピンを取り出し、屋上の扉の鍵を開ける。

 屋上へ入るやシアロンが、

「むっ! こっ、これはっっ!」

 感嘆の声をあげる。

「屋上プールだよ。冬でも水を張っているんだぜ。都心のど真ん中、新宿駅からわずか徒歩五分で登校できる学園の屋上に、プールがあるなんて信じられるか? いったい誰が考えたのやら、しかし」

 屋上プール越しに見える新宿は絶景だ。

 東には、いくつもの大型デパートが立ち並び、

 南にはNTTタワー。

 てっぺんに大時計がある。

 西は新宿御苑が一望出来る。

 北は都庁と、

 新宿を代表する超高層ビル群がそびえ立っている。

「本当に絶景だと思わないか?」

 シアロンが、

「うむ。なかなか驚いた。が、宝石と比べるほどの物ではないな」

 俺はニヤリと笑い、

「だろうな。やっぱりシアロン姫はこっちをご所望かな?」

 と言って俺は炎のルビーを胸ポケットから取り出す。

 シアロンが飛び掛からんばかりの勢いで、

「貴様! それをどこで手に入れた! 事としだいによっては」

 クシャリ。

 俺は炎のルビーを指先で潰した。

 シアロンが唖然とするなか、

 ビヨョ〜ン。

 と、元に戻す。

 特殊なプラスチックで出来た、

「こいつは偽物。本物は怪盗ゲロデムが」

 シアロンが物凄い形相で、

「地獄の少女道化師だ!」

 俺は落ち着き払って、

「誰でもいいが、そいつが盗んだってことだろ」

 シアロンが一瞬、口籠ったあと、

「お前の、そのニヤけた口許、どこかで見た覚えがあるぞ。どこだったかな?」

 シアロンが訝しげに俺を見つめる。やがて、ハッとしたように、目を見開き、何か言おうとする。が、正門から響いてきた生徒のざわめきに邪魔された。

 俺は、

「何だ?」

 正門を見下ろすと、

 シアロンもそれを見下ろした。

 正門には、

 片腕を失った水虎がいた。





 





 

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