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二階には職員室と放送室、保健室。などがあるが、興味なさそうなので、
「三階から五階は1年から三年までの各教室。その上の六階は、美術室、音楽室、視聴覚室、化学実験室、パソコンがいっぱい置いてある情報室。行きたい所はあるか?」
シアロンが瞳を輝かせながら、
「音楽室に行きたいな。ピアノはあるのか?」
俺は、
「グランドピアノが一つあったな」
シアロンが厳かに、
「では案内せよ」
音楽室に入るとシアロンがピアノを弾き始めた。
時間がかかりそうなので、俺は化学実験室に行く。
室内に入るや、とある化学薬品をちょっと借り受ける。
それが済んでから音楽室に戻ると、シアロンがまだピアノを弾いていた。
なんとなく物悲しい曲だ。
俺は扉をノックし、
「お姫さま」
と呼び掛けるも、ピアノに夢中になっていて気づかない。
もう一度、同じように呼びかけて、ようやく、
「何だ、まだいたのか。せっかく興が乗ってきたというのに、空気の読めない奴め」
シアロンが不機嫌に言う。
俺は、
「続けても構わないぜ。参考までに、なんていう曲なのか、聞きたいところだね」
怒るか拒否するかと思ったが、
シアロンがピアノに目を落とし、
「シアロ王国のレクイエムだ」
俺は、
「そうか。それで何か、悲しげなメロディーだったんだな。しかし、鎮魂歌って、まるで、誰かが死んだみたいじゃないか」
シアロンが一瞬、俺をにらみつけ、再びピアノに目を落とす。
「愚民どもに貴族の苦しみは分からん」
と言いながら、レクイエムの最後のフレーズを奏でた。




