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☆38☆
シアロン・レットルー事件がようやく落ち着いたと思ったら、
今度はセーラー服を着た三つ編みの女の子が教室に入って来た。
ちなみに、うちの高校の制服はブレザーだ。
それに、重要な件が一つある。
律華が驚いたように、
「何だお前は? どこの学校の生徒だ? それに、その包帯は何だ? ケガでもしてるのか?」
重要な件とは、つまり、この包帯の事で、要するに、水虎の腕を跳ね飛ばした張本人だ。
女の子が律華、いや、教室の生徒全員も含めて話しかける。
「何を言ってるんデスか? 岡月先生?
朧月夜サヤ(おぼろづきよ・さや)じゃないデスか。
ちょとした肌荒れを包帯で隠して、それで長期入院もした。
あと家が貧乏で、中学時代のセーラー服を特別に着ている、サヤちゃんですよ。
おかしいデスね。忘れたんデスか?」
サヤの瞳が包帯の奥で光る。
途端に、頭の奥、記憶の深い箇所がねじ曲げられる感覚に襲われる。
瞬時に絶対復元能力が働き、記憶の書き換えが修復される。が、律華や他の生徒たちは、
「そ、そうだったな。サヤ、おぼろづきよ、サヤだった、な。何で忘れてたんだ? あたしは?」
言いながら律華が首をひねる。
他の生徒も首をかしげていた。
が、俺はだまされない。
強力な集団催眠か何かを使っている。
烈火が、
「みんなどうしたのだ? こんな女、あたしは知らないのだ! すぐに叩き出すのだ!」
血気にはやる烈火を俺はなだめた。
「どうやらお前もサヤの催眠術にかかってないようだな。紅蓮剣の影響かな?」
烈火が焦ったように、
「とにかく、みんなおかしくなっているなら、あたしたちで何とかしないといけないのだ!」
サヤは適当な席に座り、俺と烈火のやり取りを面白がっているようだ。
俺は、
「まあ待てよ。サヤの服を見ろよ。ボロボロだろう。あちこち縫っているだろう。服を大事にする意外と、いい奴かもしれないぞ」
なにしろ、
身体から剣が出てくるんだ。
あちこち切れて、
あとで縫うのが大変だろう。
烈火がサヤを見て、
「確かに縫っているのだ。
そういえば、貧乏で特別に中学時代の制服を着ている、と言っていたのだ。
案外、苦労人かもしれないのだ。そう考えると、怪しげな術を使っていても、竜破の言う通り、いい奴かも知れないのだ」
俺は大きくうなずき、
「だろ。だから、実害がないなら放っておこうぜ」
烈火が納得顔でうなずき、席に戻った。




