表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/88

37


   ☆37☆


 律華が教室に連れてきたのは、

 銀髪に深緑色の澄んだ瞳を持つ美少女だった。

 星図が、

「転校生のシアロン・レットルーちゃんだよ。

 シアロ国の貴族の娘さんで、

 シアロ語でデレる可能性がとっても高いって噂の美少女だよ」

 シアロ国はロシアに隣接する小国だ。

 俺は、

「噂の信憑性はともかく、ロシアン・ルーレットのアナグラムみたいな名前だな。宝石にも詳しいとか?」

 星図が目を見開き、

「その通りだよ! 何で知ってるの?」

 俺は片目を細め、

「いや、当てずっぽうだ。しいて言えば、知ってる女にちょっと似ているかな」

 ゲロデムこと地獄の少女道化師に雰囲気が似ている。

 奴なら宝石に詳しそうだ。

 転校生との繋がりは知らんけど。

 律華がキッとこちらをにらみ、

「そこ! 静かに! これから転校生の自己紹介タイムだ! 全員、謹聴しろ!」

 謹聴だけに、

 緊張するな。

 シアロンが、

「ワタクシ様にとっては、地の果てに生息する黄色い猿ども! 

 しかも、愚民どもと対等に口をきくなど、屈辱以外の何ものでもない! 

 が、ゆえあって、未開の地に居を構えた以上、口をきかぬわけにもゆくまい。

 だからといって、気安く話しかけるでないぞ! 

 聴け! 

 愚民ども! 

 ワタクシ様の名は、

 シアロン・レットルー。

 本来なら貴様ら愚民どもでは、目にする事すら叶わぬ高貴な存在だ! 

 あの事件さえなければ、没落した貧乏貴族とはいえ、このような屈辱的な生活は送らぬものを。

 しかし、こればかりは致し方ない。

 すべては、炎のル・・・のため。 

 昨夜見た、ワタクシ様の偽物の仲間の女は、この高校の制服を着ておったからな。

 それはともかく、貴様ら愚民どもも昨夜、炎のルビーが地獄の少女道化師によって盗まれたというニュースはすでに知っていような」

 星図が、

「怪盗ゲロデムのこと?」

 間髪入れずにシアロンが、

「地獄の少女道化師だ!」

 星図をにらみつつ、シアロンが続ける。

「とにかく、もしも、炎のルビーを見つけたら、すみやかにワタクシ様に報告せよ! 

 ワタクシ様は宝石を鑑定する素晴らしい目を持っている! 

 ワタクシ様が正しく鑑定して警察へ引き渡してやるから、必ずワタクシ様に報告するように! 

 よいな愚民ども! 話は以上だ!」

 教室は憤懣やるかたない、といった一触即発の空気だったが、

 パチパチ、

 俺が拍手をして、

「お貴族様が実に分かりやすい自己紹介をしてくれたんだ。

 みんな歓迎の拍手で迎えてあげないで、どうすんだ? 

 日本の事をよく分からない外国人には、優しく日本を紹介してやらないとな」

 星図が気を取り直し、

「そ、そうだね、竜破の言うとおりだよ、みんな拍手拍手!」

 烈火が仏頂面で、

「あたしには悪意しか感じられなかったのだ」

 と、文句を言いながらも一応拍手する。

 他の生徒もパラパラと控えめな拍手をした。

 律華が、

「よし竜破。ちょうどいい、お前がシアロンに校内をあとで案内してやれ」

 俺はシアロンを見据え、

「シアロンがそれでいいなら」

 シアロンが値踏みするように俺を見つめ、

「イエローモンキーは誰でも一緒だ。ワタクシ様には違いは分からない。案内など誰でもよいぞ」

 俺は辟易としながら、

「なら昼休みに案内しよう」

 俺の言葉を無視してシアロンは適当に席についた。



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ