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   ☆3☆


「という事で、頭の傷は大丈夫か? とか、記憶に障害は残っていないか? とか、病状を聞かれたあと、たまたま律華先生の趣味の話になって、

 トレーディング・カード・ゲームの、

 ジャドーバーサスで盛り上がってな。俺も影響を受けて、始める事にしたんだ。それで、新規入会特典の、

 萌え萌えルナちゃんカードを律華先生と交換する事になった」

 教室に戻った俺は弁当箱を開けて、デザートの熟し過ぎた、黒ずんだバナナを見つめながら、職員室での律華とのやり取りを大幅に脚色して光太に聞かせた。

 バナナに緑色の走査線が走る。が、光太はそれに気づかず、瞳を輝かせながら、

「ジャドーバーサスなら僕も知ってるよ! 賞金一億円のゲームで、僕も前からやろうと思ってたんだよね。竜破がやるなら、僕もやろうかな?」

 俺は光太を押し止め、

「やるのはいいが、深みにハマって課金地獄におちいっても知らんぞ」

 光太がしたり顔で、

「もちろん無課金でやるに決まってるじゃん。基本無料でしょ?」

 俺はうなづき、

「らしいな。俺も初めてだから、よく知らんけど」

 光太が、

「賞金一億円ゲットして億り人になるぞ~っ!」

 烈火が俺と光太の間に割り込み、

「何の話なのだ? まさか、復帰早々、アニメやゲームの話で盛り上がっているのか?」

 俺が、

「いや、そのまさかだ」

 烈火が、

「不健康なのだ! あたしがもっとタメになる話を聞かせてやるのだ! お前たちも知っての通り、ちまたで話題の怪盗ゲロデムという、宝石ばかりを狙う盗っ人が、新宿かいわいを跳梁跋扈している昨今。ついに、その魔の手が新宿大美術館の、

 炎のルビーに及んだのだ。

 宝石としての価値は数十億円。

 美術品としての価値は値がつけられないほどの、鳴り物入りの物凄いルビーなのだ。

 幸い、今回あたしの親父殿が警護にあたる事になったのだ。そこで、あたしも警護の応援に入る事になったのだ。もちろん、親父殿から特別の許可をもらっているのだ。それはともかく、ふざけた事にゲロデムはアルセーヌ・ルパン気取りで炎のルビーを盗むと、予告状まで出しきたのだ。まったく、許せない悪党なのだ!

 その予告によると、今夜盗みに入ると書いてあるのだ。だけど、絶対に炎のルビーを守って、ゲロデムの奴をとっ捕まえてやるのだ!」

 俺の脳内データによると、烈火の父は警部で、鬼の鬼頭と呼ばれている恐ろしい鬼警部だ。

 俺が、

「そうか。ガンバレよ烈火。俺には関係ない話だから、何も出来ないけど、お前の成功を心から祈ってるからな」

 烈火が、

「うむ! ガンバルのだ!」

 星図が、

「でも、烈火だけで大丈夫かな。僕らもついて行こうか?」

 僕ら?

 烈火が、

「星図が来ても足手まといになるだけなのだ! 余計な事はしなくていいのだ!」

 星図がショゲる。

 俺は、

「何でゲロデムって呼ばれてるんだ?」

 素朴な疑問を口にする。

 星図が、

「目撃者の証言によると、ゲロゲロ~として、デロデロ~とした、スライムみたいな奴だから、ゲロデムって名前になったらしいよ。スライムのチート能力を手に入れた異世界転生者みたいだって(笑)。ラノベじゃあるまいし」

 俺は、

「異世界!? それに転生者だって!?」

 つい声を荒らげる。

 沸騰しそうな怒りを抑えつつ、烈火を振り返り、

「烈火、やっぱり、お前だけじゃ心配だな。俺もついて行きたいんだが、いいかな?」

 俺の剣幕に驚きながら烈火が、

「ど、どうしたのだ? 竜破? さっきは、全く興味がなさそうだったのに?」

 俺は、

「変な能力を使う、おかしな奴なんだろ? 味方は多いほうがいいじゃないか?」

 烈火が、

「それは、そうなのだが」

 俺は強引に、

「それじゃ決まりだな。親父さんに俺の事も話しといてくれ」

 星図が、

「なら僕も」

 烈火が即座に、

「却下なのだ!」

 間髪入れず烈火が拒否る。

 星図が反発するのを見ながら、俺はデザートの青々としたバナナをパクつく。

 すると烈火が目敏く、

「むむっ? そのバナナ。さっき見た時は熟して黒かった気がするのだが?」

 俺が、

「気のせいじゃないか?」

 星図が、

「気のせいだよ! それより、僕も仲間に加えてよ!」

「ダメなものはダメなのだ!」

 再び烈火と星図の言い争いが始まった。

 どうやらバナナの件は有耶無耶になったようだ。


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