28
☆28☆
「ぐぅぬぬぬっ!」
一瞬、齒を食いしばり、怒髪天を突く、といった感じのスコーピオンだったが、素早くモリスンの心臓に刺さったナイフを引き抜くと、それをラクリスの首すじに当て、
「アール子爵、なかなかの名推理だったよ。それで、ワシはどうなるのかね?」
俺は落ち着き払って、
「陪審員、全員一致で絞首刑でしょうな」
スコーピオンが、
「そいつは困る、実に困るんだよ、アール子爵」
ラクリスが勇敢にも、
「やめて下さい、叔父様。アール子爵の言った事は、何かの間違いです。叔父様がそんな事をするはずが」
ラクリスの言葉をさえぎるようにスコーピオンが、
「すべてはお前が悪いのだラクリス! お前と、兄貴のモリスンが!」
スコーピオンが狂ったように、
「最初から全てをワシに譲っていれば、兄貴を殺す必要はなかった。
お前もペンダントを素直に手放せば、無駄な事をする必要は無かった」
スコーピオンがホルスターからワルサーP38軍用拳銃を取り出す。
「アール子爵。君の部屋にあった銃を少々、拝借させてもらったよ。無論、弾丸はゴム弾ではなく実弾に変えてある」
俺はいたって冷静に、
「そんな豆鉄砲で何をする気ですか? スコーピオン伯爵」
スコーピオンが不気味な笑みを浮かべ、
「アール子爵、君の推理を、いや、シナリオを少々、書き変えようじゃないか」
ラクリスを人質に取られているので仕方なく、
俺は、
「どう変えると言うのです」




