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   ☆23☆


 俺は幸いにもモリスンの大邸宅に寝泊まりする事になった。

 スコーピオンは俺を見かける度に嫌そうな顔をしていたが、俺自身はラクリスと一緒に暮らせて最高にハッピーだった。

 今日は食料とモリスンの薬の買い出しだ。

 薬だけではなく、食事にも細心の注意を払う事にした。

 日が経つにつれ、モリスンの具合は目を見張るように良くなった。

 科学的な治療に加え、昔ながらの僧侶による、法術の施療も加えた結果だ。

 ラクリスが、

「アールさんのおかげで何もかもが上手く行って怖いくらいです'」

 俺は目を細め、

「なあに、これからもっともっと良くなりますよ。俺が保証します。それで、今日はこれからどうしますか? 買い出しも終わりましたし」

 ラクリスが、

「そうですね。この間、借りた本を読み終わったので、図書館に返却に行こうかと思います」

 俺は、

「それじゃ、俺もつきあうよ」

 アヴァロン帝国図書館は最近リニューアルして、赤レンガとガラス張りの中庭が見渡せる、オシャレで広大、蔵書もアヴァロン最大の三千万冊という、超快適な巨大図書館へと変貌を遂げていた。

 いつも通りにラクリスは入り口で本を返却すると、次に読む本を探しに館内を物色し始めた。

 俺も図書館内をブラブラと歩きまわる。すると、ちょっと前まで、まばらに居たはずの利用者が、いつの間にか過疎ってる事にきづく。

 ていうか、ガランとして誰もいない。

 受付を探すが職員すら見当たらない。

「ほお、図書館のシャッターが閉まりはじめたぜ」

 今から慌てて図書館から出ようとしても間に合うはずもない。

 とりあえず、敵の出方を待ち構えた。

 図書館の照明が落ち、あたりが薄暗くなる中、黒ずくめの女が近づいて来る。

 目元はマスクで隠している。

「こないだの男たちのお仲間さんかい?」

 俺の問い掛けを無視して、女が魔法のようにナイフを取り出すと、

 一閃、

 普通の人間なら頸動脈を切り裂かれて人間ボンプと化し、大量の血液を放出しているところだ。

 二閃、三閃、

 俺はワルサーP38、軍用拳銃を取り出し、女に狙いをつける。

「悪いが、君と遊んでるヒマはないんでね」

 ズドン!

 麻酔弾を放つ。

 女が倒れて昏睡状態に陥る。

「しかし、何でナイフなのかね? 効率悪すぎじゃね」

 が、その答えはすぐに分かった。

 俺を囲むように、図書館いっぱいに、同じような女が現れたからだ。

「同士討ちを避けるためってわけだ。なるほど納得」

 その後の肉弾戦は苛烈を極めた。

 数えるのもウンザリするほどの敵をバリツとワルサーを駆使して倒しまくった。

 相手も俺がここまでの使い手とは思わなかったのか、倒した数が半数を越えた所で撤退した。

 壁に一本、ナイフが刺さっている。俺はそれをつかみ取ると、上着の内側にしまった。

「ちょっとした戦利品だな」 

 そこでハッと気がつく、

「そうだ、ラクリス。ラクリスはどこだ?」

 広い図書館をしばらく歩くとラクリスを見つけた。

 窓際に突っ立って、ジーっと本を読んでいる。

 物凄い集中力だ。

 俺が近づいても、またったく気づく様子がない。

 まあ、何にしろ、ラクリスが無事で良かった。

 奴らの狙いはあくまでラクリスではなく、彼女のペンダントらしい。

「ラクリス、ラクリス」

 声を掛けてもまたったく反応がない、よっぽど本が好きなのか?

 俺はラクリスの肩を軽く叩く。

 するとラクリスが驚いたように、俺を見て、

「ア、アールさん! 突然、何でしょうか?」

 俺は、

「いや、何と言うか、凄い集中力だね」

 ラクリスが、

「ああ、その事ですか、あたし、本を読み出すと、他の事が一切目に入らなくなるんです」

 俺は、

「なるほど、それで無くなったってわけだ」

 ラクリスがキョトンとし、

「え? 何がですか?」

 俺は、

「ペンダントだよ」

「えっ!」

 ラクリスが自分の胸元を見て、ペンダントが無くなっている事にようやく気づく。

 ラクリスが青くなり、

「どうしましょう! ペンダントをなくしてしまいました!」

 俺は鷹揚に、

「こんな事もあるんじゃないかと思って、あらかじめ偽物とすり変えておいたよ」

 俺は本物のペンダントを取り出し、ラクリスの首にかけてやる。

「こちらが本物なのですか? すると偽物はどうなったのでしょうか?」

 俺は窓の外を眺める。

 図書館は高台に建っていて、街が一望出来る。

「あれは五分おきに電波でリセットしなければならない仕組みでしてね。その電波の出所は僕の懐中時計なんです。図書館の中なら充分、電波が届きますが、ああ、そろそろ時間です。

 スリー、

 トゥー、

 ワン」

 街から鈍い爆発音と振動が伝わり、黒煙が舞い上がる。

「死にはしませんよ。火薬の量は絶妙に調整してありますから」

 俺は大笑いした。 





 

 







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