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☆はじめに☆
偉大なる探偵作家、
サー・アーサー・コナン・ドイル氏、
モーリス・ルブラン氏、
モンキー・パンチ氏に、
→ごめんなさい。
第一話
~竜破は燃えているか~
☆1☆
「いや、なんていうか、みんなに会うのもスゴい久し振りだから、まるで、初対面みたいな気がするな」
俺、
有世竜破は、
虹祭学園、
一年B組のクラスメイトと、脳内データを照らし合わせながら、記憶に間違いがないか確認する。
「なにしろ、去年、新宿駅に飛び込んで、自殺しようとした奴を、このクラスで一番正義感の強い、
鬼頭烈火が食い止めようと、力ずくでホームに戻したまでは良かったけど、勢い余って階段の下までブン投げて、たまたま階段を上がってきた俺とぶつかって、二人して階段を転げ落ちて、自殺しようとした男は軽傷で、俺は頭を強打して意識不明の重体になったわけだ。まあ、一ヵ月もしたら意識が戻ったけどな」
烈火が、
「すまんっ! あの時は、とっさに身体が動いてしまったのだ! 人助けという、重大な正義を貫くために、つい前後の見境いなくブン投げてしまったのだ! 本当にすまん! 竜破! この通りなのだ! 誠心誠意、謝るのだ! 許して欲しいのだ!」
机にひたいをこすりつけて、平身低頭、平謝りを続ける烈火に俺は、
「いや、もう大丈夫だよ。そんなに気にしなくてもいいよ」
烈火が顔を上げるとニッコリ笑い、
「ならもう気にしないのだ!」
「切り替えハヤっ!」
現金な奴だと思いながら烈火を見る。
いかにも正義感の強そうな太い眉。
悪を見逃さない鋭い瞳。
意志の強そうな引き締まった唇。
燃え上がる炎を思わせる赤い髪。
その髪をボニーテールに結っている。
星図光太が、
「だけどさあ、何で今さらそんなに詳しく話すのかな? 妙に説明臭いセリフで、竜破が事件に巻き込まれた事は、みんな知ってるじゃん」
光太は俺の親友、というか、アニメ、ゲーム、映画のオタク仲間だ。いや、だった。と言うべきか。
今は俺の脳内データに残っている記憶の欠片でしかない。
諸星巡が、
「なんていうのかしら、記憶を整理していると思うのよね。以前とは何だか様子が違うみたいだし。そうじゃないかしら?」
長い黒髪の美少女だ。
いつも一人でタロット占いをしている。と、俺の脳内データにある。
「巡の言う通り、かなり頭が混乱しているからな。つい、必要以上に説明口調になるんだよ。話しながら頭の中を整理しているんだな」
光太が、
「へえ~。そうなんだ」
俺はしたり顔で、
「そうなんだよ。まあ、これからも色々と面倒かける事になると思うけど、病み上がりって事で許してくれ。俺から話す事はこんなとこだな」
俺の言葉を引き継ぎ、担任の女教師、
岡月律華が、
「んじゃ、そういう事で朝礼終わり。竜破、お前は昼休みに、ちょっと職員室まで来い」
「え? 何でですか?」
「確認したい事が二、三あるんだよ。いいから黙って職員室まで来いよ」
俺の反論を封じるように、律華が足早に教室を出て行った。