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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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9章 再会と悪魔の足音  05

 翌朝起きると、セーフティゾーンには他に2組のテントが立っていた。


 彼らが動き出す前に準備をととのえ、俺たちは6階へ下りた。


 6階の通路は広く天井も高い。現れたのは『エレメンタルゴースト』。バスケットボール大の光の玉が炎のような光をまとった姿の、実体のない魔法使い系のモンスターだ。


 炎の色で属性が分かるらしいが、今目の前に7体いるのはすべてが黄色、『地属性』だ。


 基本的に物理攻撃が効かないそうなので攻撃は3人に任せ、俺は飛んでくる石礫いしつぶてを防ぐことに徹する。盾と『衝撃波』を併用すればこちらに魔法が届くことはない。


 フレイニルの『二重聖光』とスフェーニアの風魔法『エアカッター』、そしてラーニの風属性魔法剣によって7体の『エレメンタルゴースト』はすぐに全滅した。


 しかしパーティを組んでなければ俺はここで詰んでたはずだ。出会いのありがたさに感謝しかない。


 ちなみに素材は属性に応じた水晶だ。大量に回収しつつ一気に8階まで進む。


 8階から出現するのは『エレメンタルビースト』。属性の炎をまとった大型犬のようなモンスターで、物理攻撃が効きにくいのに向こうは接近戦をしてくるというとんでもないモンスターだ。


 8体来たときはどうなるかと思ったが、『衝撃波』で追い払えるのでその隙に魔法で潰してもらって事なきを得た。ラーニが魔法剣で討ち漏らしを迎撃できるのも大きかった。


 素材は水晶……と思ったら属性に応じたカラフルな毛皮だった。防具になるほか普通に服にもなるらしい。


最下層の10階で出てきたのは『エレメンタルジャイアント』。オーラをまとった巨人だ。巨人と言っても身長は3メートルほどだが、最大5体出てくるので威圧感はかなりのものである。


 とはいえ幸い物理攻撃が多少は効く相手だったので、もともとオーバーキルな俺のメイスの敵ではなかった。今まで出番がなかったので後衛組の守りをラーニに任せてうっぷん晴らしをさせてもらう。


 素材は大きめの水晶、いい値がつくらしい。


 巨人と正面からの殴り合いをしながら進んでいくと、程なくしてボス部屋前にたどり着いた。


「ボスは『エレメンタルガーディアン』だったな。いつもの通り二体出る可能性、それとレアボスになる可能性も忘れないようにしよう」


「それが同時に起こる可能性もね」


 ラーニの相づちにフレイニルは頷き、スフェーニアは目を丸くした。


「昨日もボスが二体でましたが、そんなに頻繁に起こるのですか? しかもレアボスまで……?」


「そうだよ。むしろ普通の方が少ないくらいかも」


 とラーニが答えるが実際は半々くらいだろう。それでも異常すぎるのだが。


「よし、じゃあ行こうか。フレイニルは『後光』を『充填』で。スフェーニアは……」


「『エレメンタルガーディアン』はどの属性のものが出るのか分からないので見極めてから反属性の魔法を用意します」


「それで頼む」


 石の扉を開けてボス部屋に入る。(もや)の量は通常通り、現れたのは青色のオーラをまとった巨人だ。身長は4メートルくらいか。パッと見て情報通りの見た目なので通常ボスだろう。


「通常ボスか~。なんだつまんない」


 と言いつつラーニが剣に炎属性を付与する。


「『後光』行きます」


 フレイニルの魔法で弱体化をした後は、いつも通り俺が前に出る。


 盾を構えながらじりじりと近づくと、『エレメンタルガーディアン』は両腕を突きだす動作をした。その腕から水流が吹き出し、一直線に伸びてくる。『ウォータースピア』という水属性魔法の強力版だ。


 俺はそれを正面から盾で受け止める。『安定』『不動』『鋼幹』スキルと圧倒的な筋力が、高威力の水の槍を受けてもなお前進することを可能にする。


 構わず進んでくる俺を見てか、『ガーディアン』は水流を止め、拳法家のように構えを取った。


「魔法いきます。『フレイムボルト』」


 炎の槍が俺の頭上を追い越して『ガーディアン』に突き刺さる。水蒸気のようなものが発生し、『ガーディアン』が大きく体勢を崩す。


「先行くねっ!」


 瞬間ラーニが横を通り過ぎ、『ガーディアン』の膝あたりを斬りつけた。丸太のような足を一撃で切断し、反撃を警戒して素早く下がる。


 片足を失った『ガーディアン』はそのまま横倒しになったが、上半身を起こして、片腕を延ばし、先ほどの『ウォータースピア』を撃ってくる。ラーニを狙ったようだが俺が前に出て受け止める。


「動きを止めます」


 スフェーニアの声が響き、光の尾を引いた矢が『ガーディアン』の額に突き刺さった。


 その瞬間『ガーディアン』の動きがビクッと止まる。水流も中断されたようだ。


「ナイススフェーニア!」


 ラーニが再度『疾駆』ですれ違いざまに腕を切断する。


 片腕片足を失ってもがく『ガーディアン』。俺はその隙に一気に接近して、『ガーディアン』の頭めがけて破壊の権化(メイス)を振り下ろした。




 俺が得たのは『金剛力』というスキルだった。『剛力』の上位スキルで、『剛力』のレベル上昇が止まった気がしていたことと合わせて考えると、『剛力』のレベルが上限に達したから得たのかもしれない。どちらにしろ物理一直線は変わらずである。


 フレイニルは『遠隔』で、特定の魔法を遠距離で発動させることができるスキルのようだ。例えば『命属性』の回復魔法を遠くの前衛に使う、ということが可能になるらしい。


 ラーニは俺の持っている『安定』を得たようだ。これでさらに重い剣を扱えると本人は満足そうだ。


 肝心のスフェーニアだが……


「これは……『貫通』ですね。ずっと得られなくて諦めかけていたのですが……」


 聞けばレア度が低いわりに弓使いには必須とも言えるスキルで、非常に欲しいと思っていたスキルらしい。矢の貫通力を上げるスキルと聞けば、確かにあるとないとでは雲泥の差がありそうだ。


「もしかしてこれがラーニの言っていたパーティの力なんでしょうか? いきなり欲しいスキルが手に入るなんて、偶然とは思えないのですが……」


「うふふっ、スゴイでしょ。私もソウシたちと一緒になってからいいスキルが連続で身についたんだよね。スフェーニアも同じで良かった」


「やはりそうなのですね。もしかしてフレイも?」


「私もそうですね。魔法の力を高めるスキルが多く身につきました。はじめはアーシュラム神のお導きだと思っていたのですが、今ならソウシさまのお力だったと分かります」


 フレイニルがうっとりした感じで言うと、ラーニとスフェーニアがこちらに目を向けた。


「いや、俺のスキルにそこまでの力はないと思うんだが……。俺としては、どのスキルを得るのかは本人の資質と努力によると考えてる。ただまあレアボスに遭いやすいから、レアスキルが多めに取得できるのは確かだな」


「ふぅん。でも私もスフェーニアもソウシと一緒になったとたんに欲しいスキルが手に入ったし、影響はあると思うな」


「今の話ですと、もしかしてレアボスやボス二体に遭いやすいというのもソウシさんのスキルによるものだということですか?」


 そういえばスフェーニアには俺の『悪運』についてはまだきちんと言ってなかったな。体感してからの方が信じられるだろうからそれはそれで良かったのかもしれない。


「今のところはまだ推測だけどな。これから一緒にやっていけば色々見えてくると思う」


「そんなことが……。私はソウシさんたちに知り合えて本当に運がよかったのですね」


 スフェーニアが目を細めてにっこりと笑う。どうも少し涙ぐんでいるようにも見えるが、やはり必要なスキルが得られるかどうかは重要なんだろうな。彼女は身分的にも上を目指さないといけないというプレッシャーがあるようだし、もし俺のスキルでそれが解決できたというなら、確かに幸運と言っていいのかもしれないな。




 その後ボス部屋の奥の扉に入るとそこは小さな円形の部屋になっていた。中央に水晶球が先端についた石のポールが立っている。それに触れると一瞬でダンジョンの入り口まで戻れるらしい。このあたりもなんとなくゲーム的である。


 ラーニが触りたいと言うのでやらせると視界が一瞬で変化し、俺たちは確かにダンジョンの入り口に戻っていた。


「不思議ですねソウシさま」


「ああ、驚いたな」


 目を丸くするフレイニルに答える。ラーニも尻尾を振って「面白い!」と叫んでいる。完全にお上りさん状態だ。入り口付近に他のパーティがいなくてよかったかもしれない。


「ふふっ、私も最初はそういう反応をしました。ダンジョンは本当に不思議な存在です」


 スフェーニアの言葉に、俺は少しだけダンジョンというものがどのような意味があって存在するのか……などということを考えてしまった。恐らくこの世界にとっては『自然』の一部なのだろうし、考えても答えは出ないだろうが。


 まだ昼前なので一度トルソンの町に戻った。


 素材を買取に出そうとギルドへ行くと、カウンターの向こうからキサラが慌てたように俺を呼び止めた。


「ソウシさん、その、お願いがあるんです」


「どうしました?」


「実は討伐依頼に行っているカイムさんたちが予定最終日の昨日に戻らなくて、捜索をして欲しいんです」


 俺は自分の心拍数が一瞬だけ跳ね上がるのを自覚する。さすがに知り合いが安否不明となれば心が揺れるのは仕方ない。


 俺はフレイニルたちの方を振り返る。ダンジョンから戻ったばかりではあるのだが……


「知り合いなんでしょ? すぐ見つけにいかなきゃ」


「ソウシさまの大切な方ならすぐに行くべきだと思います」


「冒険者は助け合いも大切だと思います」


 リーダーの心を(おもんぱか)ってくれるいい娘たちで助かった。いや、それともブラックに慣れてきてるだけか?


 俺はキサラに向き直った。


「分かりました、お受けします。詳細を」


「ありがとうございます」


 キサラによると、カイムたち『銀輪』は、トルソンから東に行ったところにある岩場に『ロックワーム』の討伐に行ったとのことだった。ロックワームとはそのまま岩を食う巨大ミミズのことで、基本岩場からは出てこないのだが、ゴブリン同様繁殖すると厄介なEランクのモンスターらしい。


「『銀輪』なら苦戦するようなモンスターではないはずなので、もしかしたら何かトラブルが発生したのかもしれません」


 とのことだったが、どちらにしろ行かなければ何も分からないので、俺たちは依頼を受けすぐに岩場に向けて出発した。


 小一時間ほど走っていくと地面が草原から赤茶けた土に変わり、さらにだんだんと赤い岩が露出してくる岩場に変わる。不思議な地形だがこの世界では普通なのだろう。前方にはいくつもの岩が突き出た不思議な景色に変わる。小さい突起は家ぐらいだが、大きいものは5階建てのビルくらいあり、それが無数に地面から突き出ている。日本ではお目にかかったことのない不思議な景色だ。

 

 俺たちはその岩石地帯の手前で一度立ち止まった。


「モンスターに警戒しながら探索をしよう。ラーニは特に人間のニオイを探ってくれ。スフェーニア、こういう時になにか気を付けておくことはあるか?」


「先行したパーティがいるのなら、かならず進んだルートに印をつけているはずです。それを辿(たど)るのがいいと思います」


「ありがとう、確かにその通りだな。モンスターに警戒しつつその印を探そう。岩に傷をつけるとか多分そんな印のはずだ」


 小休止の後装備の確認をして、俺たちは岩石地帯に進入した。

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