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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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8章 エルフの里へ  07

 里長の奥方に案内された宿は、清潔感があって宿泊費の方はそこまでではない(というか少し口利きしてもらったようだ)という、Dランクパーティにはありがたい宿であった。


 ただ問題は部屋が4人部屋しか空いていなかったということで、少女2人には一週間我慢を強いる形になった。といっても、


「ソウシさまと同じ部屋なのは安心します。いつもこの方が私はいいです」


「テントじゃ雑魚寝なんだし別に気にしないけど?」


 ということなので俺が気を使えば大丈夫だろう。いやフレイニルの方はちょっと問題発言気味だが……。


「それで明日から早速ダンジョン行く? トレーニングもしなきゃだよね」


 ラーニがベッドの上で着替えを広げながら言う。


「そうだな、一週間は間違いなく滞在することになるからいつものルーチンは再開しよう。ただ朝の内に一度ギルドには顔を出して奴隷狩りの件は処理しないとな。それとフレイ、この里の周辺でなにか妙な気配を感じたりはしないか?」


「えっ? いえ、特には感じませんが……。何か気になることがあるのですか?」


「思い過ごしならいいんだが、峠でゾンビ犬が出たのが気になってな。どこかでまたアンデッドがまとめて湧いているんじゃないかと思ったんだ。腐敗した死体が疫病の原因になることもあるからな」


「なるほど疫病の原因までお考えになっているのですね。分かりました、注意しておきます」


「それってもしかしてこの間ソウシが壊した『召喚石』があるかもってこと?」


「可能性としてな。もしそうならさらに面倒なことになりそうだが……」


 大討伐任務の時に見た『召喚石』は、間違いなく『何者か』が設置していたようだった。もしこの里の近くにも『召喚石』があるなら、あの時の『何者か』が暗躍している可能性まで出てくるだろう。


「アンデッド相手ならフレイもいるしいいんだけど、ゾンビだけはちょっとね。ニオイで鼻が曲がりそうになるし」


 と言ってベッドに倒れ込むラーニ。鼻の利く彼女には確かにキツい相手だろう。嗅覚スキルが高まっているだけに他人事でもないのだが。


 とりあえず予定を決めつつ宿の食堂で食事を取った。エルフの里の料理は山菜が多く自分の口には合ったが、ラーニは肉が少ないと不満を漏らしていた。


 部屋に戻り寝る準備を始めた時、不意に扉がノックされた。


 入ってきたのはまさかのスフェーニア嬢だ。ホーフェナ女史とともに里長の家に泊まると聞いていたのだが。


「お疲れ様です、どうしました? こんな遅くに」


「ソウシさんたちが四人部屋にお泊りということなので、ご一緒できないかと思って参りました」


「え……?」


「あっ、スフェーニアさんもここに泊まるんだ。そのベッドが空いてるから大丈夫だよっ。フレイもいいよね?」


「はい、エルフ族のこととかも色々聞きたいですし」


「ありがとうございます。ではお邪魔いたします」


 俺が呆気(あっけ)に取られている間に、スフェーニア嬢は空いているベッド周りに自分の荷物を置いて築城完了してしまった。


 ラーニがそれを見てニコニコしているのは、またスフェーニア嬢スカウトモードに入ったからだろう。


「それでスフェーニアさん、疫病の方はどんな感じなの? 対応できそう?」


「そうですね。すでに隔離所には100人近い患者がいるようでした。特に重症な者にはホーフェナが薬を処方していましたので最悪の事態は避けられそうです」


「それならよかったね。間に合わなかったら最悪だったし」


「今回のことに関してはソウシさんたちのパーティがいなかったらと思うと少しゾッとします。奴隷狩りの件も、ホーフェナを運んでくれた件も、そしてラビットの角の件も……どれか一つでも欠けていたら犠牲者が出ていたでしょう」


 スフェーニア嬢がそう言って俺の顔を見る。言われてみれば確かに薄氷を踏むような話ではあったのかもしれないな。そのあたり俺の『悪運』スキルがガッチリ関わってる気がするが。


「それは運がよかったと言うしかありませんね。我々としてもスフェーニアさんのように優れた冒険者と知り合えたことは幸運なことでしたし」


「優れたなど……ソウシさんたちのパーティに比べれば大したことはありません。賊のまいた薬への対応も見事でしたし、そのあとのお力もすばらしく、やはり一人では限界があると痛感しました」


「それは私も同じですよ。ずっとソロでやっていましたが、2人と組んでからできることの範囲がぐっと広がりましたからね」


 などと言っていると、どうも自然と俺がスカウトしてる感じになってしまう。ちらと見るとラーニはニヤニヤしてるし、フレイニルは……なんかそわそわしてるな。


「それでスフェーニアさんがここに来たってことは、かなり前向きに考えてくれてるってことでいいの?」


 遠慮の二文字がないラーニが切り込んでいくとスフェーニア嬢は微かに笑った、気がする。


「そういうことになります」


「やった。よかったねソウシ」


「あ、ああ、そうだな。もし入っていただけるなら歓迎しますが、もう少し慎重にお考えになってもいいと思います。ホーフェナさんの役目が終わるまではこちらにいますので」


「わかりました。ソウシさんはとても控え目で不思議な方ですね。今まで私に声をかけてくる方たちはかなり強引で困ってしまうくらいでした」


「あはは、スフェーニアさんなら誰でもパーティに入れたいって思うんじゃない? 特に男はね。ね、ソウシもそう思うでしょ?」


 ラーニの言うことは分かるんだが、俺としては答えに困る。フレイニルもなんかじっと俺のことを見てるし。


「……理解できなくはない……かな。いずれにしても私は強引にはお誘いしませんので」


「はい、もう少し考えさせていただきます」


 ということでなんとか乗り切ったが、パーティメンバーを一人増やすかどうかでこんなに緊張するのもおかしな話だな。

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― 新着の感想 ―
ハーレムパーティーでも全然不快に思わない主人公の良さが良い味出てますね
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