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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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24章 異界回廊 09

 オーズ国での褒賞の儀の後、俺は大巫女ミオナ様と執務室で1対1で話をしていた。


 今回開いた『異界の門』にかかる費用の話などが一段落したところで、ミオナ様は席を立って執務机の方へと歩いていった。机の引き出しから細長い包みを取り出し、それをもって俺の前に座り直す。


 テーブルの上に置かれた細長い包みに見覚えがある。前回オーズ国に来た時に、俺たちは偶然のなりゆきで、その細長い包みを賊から取り戻すことになったのだ。もちろんそれは俺の『天運』スキルの采配であったのだろうが、それがここで出てくるのもまた『天運』によるものか。


「ミオナ様、もしやこれは『招精の笛』ではございませんか?」


「その通りでございます。実はここへ来ていただいたのは、こちらをソウシ殿にお渡しするためなのです」


「しかしこれは国の宝であるとお聞きしておりますが」


「その通りにございます。ですが事が終わるまで、こちらをソウシ殿に預けよとの『精霊女王』様の仰せなのです。」


 先ほどまでと違い、一転して真剣な表情になるミオナ様。


「こちらは『精霊獣』さまを呼び寄せることができる笛。これからのソウシ殿たちの道行に必要なものでありましょう」


「それは……もしや『精霊獣』さまに遠方まで運んでいただけるということでしょうか」


「ええ、そのようにございます。ソウシ殿たちは『大いなる災い』という、多くの民に対する災いを防ぐために行動をしておられる義の人。『精霊獣』さまも手伝いたいということのようですの」


 確かに『大いなる災い』を前にした今、俺たちが空を飛んで移動できるというのは重要なことかもしれない。王都や帝都までの移動が速くなるだけでなく、実際に『大いなる災い』が出現した時も、色々と対応で先手を打てるようになるだろう。


 もっとも『精霊獣』とう存在は、そこまで気軽に頼みごとをしていい相手なのかという懸念はあるのだが……。


 ともかく、畏れ多くはあるが断るような話でもない。


「かしこまりました。そのようなお話であれば喜んでお借りいたします」


「おお、よろしくお願いいたしますぞ。使い方はシズナが知っておりますゆえ、シズナに使わせてくだされ」


 俺はミオナ様から渡された包みを、そのまま丁重に『アイテムボックス』へと入れた。


 しかしこれでアーシュラム教会とオーズ国と、両方から非常に貴重な宝を預かる身となってしまった。しかしどちらも道具として極めて有用なものである。少なくとも『大いなる災い』について一段落するまでは使わせてもらおう。


 俺が『アイテムボックス』の穴を消すと、ミオナ様は表情を緩め、口元にわずかに笑みを浮かべた。


「これで心置きなくソウシ殿たちを送ることができまする。困難の数々をソウシ殿たちにお任せすることをお許しくだされ」


「任せるなど、そのようなことはありません。シズナ様も『ソールの導き』の1人でありますし、ミオナ様はミオナ様としてのお立場で出来得る限りのことをなされていると思います。私たちは多少目立つことをやってはおりますが、それらすべてはミオナ様始め様々な方の助力があってこそです」


「ソウシ殿のそのお心には、まっこと感じ入るばかりでございまする」


 そう言って扇子で口元を押さえるミオナ様。


 その目が、わずかばかり潤んだように見えたのは気のせいではなさそうだった。


 俺は自分が格好をつけすぎたらしいと気付いて、慌てて頭を下げた。


「ああ、ええと、では、私はこれにて……」


「お引止めをして申し訳ありませんでしたのう」


 ミオナ様が立ち上がったので、俺も腰を上げてそして扉の方へ向かおうとした。


 その時、ミオナ様がスッと身体を寄せてきて、そして俺の胸に手をひたと当ててきた。


 その意外な行動に、俺は一瞬なにが起きたのかわからなかった。


「……まっこと、シズナが羨ましいですのう」


「ミオナ様、なにを……?」


「わらわももう少し若ければ、大巫女の地位をなげうってでも付いていくのですが」


 そう口にして上目遣いをしてくるミオナ様の様子は、普段とは違って恐ろしいほどの色香を漂わせていた。


 ちなみに、大巫女というのは跡継ぎを産むことはするのだが、夫を持つということはないのだそうだ。それどころか、子をなした時の相手が誰なのかは秘匿されることになっているらしい。ゆえにシズナも妹のセイナも父親が誰なのかを知らないそうなのだが、今問題なのは、ミオナ様は俗世で言う独り身だということである。


 ゆえに、今の言葉がどのような意味であるか、さすがの俺も理解をしないわけにはいかなかった。


 しかし、こんな時にどのような言葉を返せばいいのかなど知りようもない。いや、相手が普通の女性であったなら対応のしようはある。だが相手は、国のトップにある女性なのだ。


 俺が身体を硬直させていると、ミオナ様は扇子で口を押さえ、近づいてきた時と同じようにスッと身体を離した。


「……ほほ、申し訳ありませぬ。今のは年甲斐のない女の戯言とお聞き捨てくだされ」


「……いえ、その、私が言うのもはばかられますが、ミオナ様はお若く、非常に魅力的でいらっしゃいます。年甲斐もなくなどということは決してございません」


 なぜ俺がそんな気の残りそうなことを答えてしまったのかというと、その時のミオナ様の様子がかなり気落ちしていたように見えたからだ。どうも俺は、女性にそういう態度を取られると弱いらしい。


 ミュエラの時も同じだったな……という思考は失礼だと思ったのでさすがにすぐに封をした。


「ソウシ殿は嬉しいことを言ってくださいますのう」


 と、ミオナ様が色香を再びまとい始めたのを見て、俺は自分の迂闊さに気付いたが、これは後の祭りである。


 ともかくそれ以上はマズいのですぐに部屋を出たのだが、残念ながらラーニには気付かれてしまうかもしれない。


 これはちょっと困ったことになりそうだ。

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