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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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24章 異界回廊 03

 祝宴の翌日は、予定通りにBランクダンジョンへと向かった。


 俺がダンジョンでヘアケア製品が出るかも……という失言をしたのがきっかけだが、今後『異界の門』を開くにも高ランクの魔石が必要になるので、ダンジョンに行くこと自体は必要なことである。


 行くメンバーだが、俺と『疫病神』スキル持ちのラーニと、『相乗』スキル持ちのカルマ、それから大量の魔石回収に『精霊』が必要なのでシズナ、ダンジョンに影響を与える中継役のライラノーラは必ず行くことになる。


 フレイニルはなにも言わずについてくるが、スフェーニアとサクラヒメ、マリシエールはそれぞれエルフの里と帝国に連絡をするとのことで王城に残った。マリアネとドロツィッテは冒険者ギルドへ向かい、ゲシューラは『異界の門』発生装置の研究をするとのことでこちらも王城に居残りである。


 ダンジョン自体は特に変わったこともなかった。


 フルメンバーでない分は俺が働けばいいだけなのので、ザコモンスターの殲滅スピードが落ちることもない。むしろ普段抑えめのラーニとカルマが嬉々として剣を振るいまくっていたので、結局俺の出番も増えることはほとんどなかった。


 一気に20階まで下りてみたが、得られた宝は『霜降り肉』計100キロと『醤油』『ソース』がそれぞれ10ビンずつ、それと最下層で手に入れた乳液のようなものが入ったビンである。蓋をあけて匂いを嗅ぐと、非常に嗅ぎなれた匂いがした。


 ラーニが鼻をヒクヒクさせながら俺の手元を覗き込んでくる。


「なんかそれいいニオイだね。石鹸のニオイに似てるかも」


「ああ、これは多分シャンプーだな。どうやら皆の思いが通じたようだ」


「シャンプー?」


「髪を洗うための薬剤だ。この感じだとリンスまで入っているタイプかもしれない。戻ったら風呂で試してみよう」


「なんだ、酒じゃないのかい」


 と残念そうな顔をするのはカルマだが、「カルマのその髪がもっと綺麗になるぞ」と言ったらまんざらでもなさそうに照れた顔をした。ウチのメンバーは美しい髪の持ち主だらけだが、カルマの金髪もその例に漏れない。


 なおBランクの魔石も3000個くらいは手に入ったので、現状これで『異界の門』はギリギリ2回開けるようになった。


 地上に転移するともう夕方だった。


 王城に入り、飯の前に風呂に入る。もちろんスフェーニアたちも呼んで、新たに手に入れた『シャンプー』を試してもらった。俺も使ってみたが、洗った後に髪が滑らかになっていたので、やはりトリートメント成分が入っているもののようだ。


 しかし久しぶりに使ってみると、前世の製品はやはり優れているのだと実感する。俺とライラノーラの合わせ技で地球の製品がこの世界に登場するのは、いったいどれほどの影響を与えるのだろうかと、少しだけ空恐ろしくなったりもする。


 なおリューシャ女王とミュエラにも渡したが、夕食の時に、


「ソウシさん、これも貴族の女性の間で奪い合いになりますよ。すばらしいものをもたらしてくださってありがとうございます」


 とリューシャ女王に礼を言われてしまった。


「それは私がなにかしたわけでもありませんから。礼ならライラノーラにしてやってください」


「あら、わたくしもソウシ様がいらっしゃらなかったらこうしてこの場にもおりませんから。すべてソウシ様の功績だと思いますわ」


「だそうですよ?」


「それでもそのシャンプーを作ったのも私ではありませんから……。私の国の優れた人たちのお陰ですよ」


 さすがにこの件で俺に礼を言われるのは他人のふんどしどころの話ではない。


 その後必死に説得をして、リューシャ女王には納得をしてもらった。


 なお、食卓に並ぶメンバーだが、心なしか全員髪の美しさが増しているようで、そのせいか皆どこか嬉しそうであった。


「やはりこうして見ると、確かに皆髪が一段と綺麗になったように見えるな。香りもいいと思うが、皆はどうだ?」


 前世の職場で言ったらセクハラ確定の発言だが、皆はこちらを見てニコニコとしだした。普段無表情なマリアネまで微笑んでいるので、どの世界でも髪は女性の命ということなのだろう。


「髪に櫛がとても入りやすくなりました。ソウシさまのお陰です」


 隣に座るフレイニルが、屈託のない笑みを向けてくる。彼女の髪はメンバーの中でも長い方に入るので、髪の手入れが楽になるのは大きいだろう。実は見ていて毎朝大変そうなのだ。


「アタシの髪なんて櫛を弾くくらいだったんだけどねえ。あんな薬ちょっとでこんなに変わるもんかってちょっと驚きさね」


 と感心そうに言うのはカルマである。彼女はフレイニルと同じくらい毛髪の量が多く、しかもかなりの癖毛である。しかし今はその髪もどことなくしんなりとしているように見える。


「リューシャ女王のおっしゃるように、これは間違いなく女性必携の品になりますわ。取れる量によっては、ギルドの買取り値は天井知らずになる可能性までありますわね」


 とはマリシエールだが、彼女の銀髪も輝かんばかりに美しくなっている。それを見て思ったが、ダンジョン産のシャンプーは前世のものより高性能なのかもしれない。さすがに『神』謹製ということだろうか。


 まあともかく、俺がライラノーラとダンジョンに入るだけで、この世界に少なくない変化が訪れそうな気配がある。以前も考えたことだが、俺の持っている知識も使いようによっては莫大な富を生み出す可能性がある。しかもその浅い知識を具現化できるゲシューラという人材まで手元にいるのである。


 俺は料理を食べながら、これから作ろうとしている『異界ショートカット』――『異界回廊』とでも呼ぶべきか――と合わせ、どれだけこの世界に変化を与えてよいものかなどと、ふと僭越せんえつな考えまでも頭に思い浮かべていた。


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