表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

421/428

23章 異界と冥府の迷い姫 18

『冥府の燭台』の幹部、イスナーニ、ワーヒドゥ、サラーサが融合した巨大な『悪魔アンデッド』。


 その猛攻にさらされた俺たちだが、俺の『興奮』スキルが発動すると、その形勢はこちらに傾いた。


 だが甲羅の三分の一ほどを砕かれ崩れたにもかかわらず、『悪魔アンデッド』は再び動き出そうとしていた。その身体は目で見てわかる速度で再生されていく。


「まったく厄介な連中だな」


 甲羅に向かって『圧潰波』を放つと、再生している部分が吹き飛んで巨体が大きく後ろに下がったものの、甲羅そのものには思ったよりもダメージが通らない。スキルに対する耐性があるらしい。


『クヒャヒャッ、なんとも恐ろしい男よの、オクノ侯爵は』


『これは良くない兆候ですね。「影獄」!』


 サラーサが再度黒い炎をバラまいてくる。俺はすべて『吸引』の引き付けて、そのまま『不動不倒の城壁』で受け止めた。一瞬だけ動きを阻害される感触があるが、メイスを一振りすればそれで拘束は解ける。


「これが真の人間の力とは笑わせるな」


『「影獄」がまったく効かないとは……っ!』


『クヒョヒョ、偽の生命に与えられた「スキル」にこれほどの力があるとは驚くばかりだな』


『イスナーニよ、そんな悠長なことを言っている状況かのぅ~?』


 そんな言葉を聞きながら、俺は逃げようとする動きを見せた『悪魔アンデッド』の足へと『圧潰波』を放った。吹き飛ばすまでには至らなかったが、2本の足をすくう形になり、『悪魔アンデッド』が再び巨体を傾げさせて甲羅を地面に着けた。


『これはマズいのぉ……!』


 ワーヒドゥの声には、わずかに感情がこもっていた。


 俺は『圧潰波』で腕を払いのけると、メイスと盾を『アイテムボックス』にしまい、甲羅の端に手をかけた。そのまま一気に甲羅の上まで、ロッククライミングの要領で上っていく。


「逃がすと思うなよ」


 デカい甲羅の上を上っていくと、灰色の人面が並んでいる中央部にたどり着く。


 その人の身体ほどもある顔を殴り砕きつつ、俺はイスナーニたちの顔がつながる、太い首の付け根まで上り切った。


『クヒョッ! まさか首根っこをつかまれるとは。しかしそこからどうするつもりだ』


「こうするんだ」


 俺は左手で太い首にある突起を掴みながら、右手で『万物を均すもの』を取り出した。


 そして身体を反らし、限界まで大きく振り上げると、イスナーニらの首の根本に渾身の力で振り下ろした。


「おおッ!!」


 その瞬間、俺の身体は『安定』『不動』『不撓』の身体固定スキルによってその場に固定される。


『翻身』スキルによって一瞬で最高速度に達した黄金の槌頭は、『剛力』『金剛力』『神剛力』、そして『重爆』『超爆』スキルによって恐ろしいまでのエネルギーを付与され、甲羅の中央部に叩きつけられた。


 槌頭がめり込んだ甲羅の中央部。そこから同心円状に広がる衝撃によって、まずはイスナーニたちの首が千切れて飛んだ。


 さらに周囲に並ぶ人面どもが、中央部に近いものから次々と爆ぜて粉々になっていく。


 甲羅は内側からめくれ上がるようにして剥がれていき、その下の本体部分の肉片が、蒸気化した体液と共に盛大に周囲に噴出した。


 次いで甲羅の縁に並んでいた腕が千切れて周囲に吹き飛んで、数本残っていた足も根元から外れて地面に倒れていく。


 まるで『悪魔アンデッド』本体内部で爆弾が数十発爆発したような、そんな破壊のプロセス。これが冒険者の一撃で生じたものだとは、まったく『神』が与えたスキルの力は凄まじい。


『悪魔アンデッド』の巨大な甲羅は、上面が完全に破壊された状態で地面に崩れ落ち、地響きとともにいくつもの部分に割れていった。


 問題はイスナーニたち3つの頭部である。


 首が千切れて頭だけが周囲に飛んで行ったはずだ。周囲を見回すと、果たして甲羅の残骸のさらに外側に、巨大な灰色の頭部が転がっていた。


『クヒョ……ッ、なぜ真の「人間」たる我々がここまで追い詰められるのか』


『オクノ侯爵の力……、まさに「神」に匹敵する力です。なぜ「神」は、偽りの人間にスキルを与えたのでしょうか』


『そんなことを詮索している暇はないようじゃのぅ~。オクノ侯爵がこちらに向かってきているでのぅ~』


 俺が近づいていっても、3つの頭はしゃべるだけで動きを見せなかった。


 フレイニルやラーニ達の様子を確認すると、すでに『悪魔スケルトン』はすべて倒してしまっており、こちらに集まろうと動き出したところである。


 近くで見ると、イスナーニたちの頭部は、それだけで高さ5メートルはあろうかという巨大なものだった。灰色の能面の口にはもはや笑いはなく、ただ無表情にそれぞれ転がったままの方向を見ているだけである。


「どうした、もう悪あがきはしないのか?」


『クヒ……ッ。オクノ侯爵よ、お前は自分がなにをしているのかわかっているのか? 人間が真の姿を取り戻す機会を永遠に失うつもりか?』


「それが悪あがきのつもりなら、もう相手をする理由はない。終わりにさせてもらうぞ」


『我らの話を聞くつもりは一切ないということかのぅ』


「悪いが俺たちはお前たちの考えが誤りであることを知っている。そこに議論の余地はない」


『それならば、もう話すことはありません。しかし「冥府の迷い姫」様がいらっしゃる限り、我々はいずれ復活します。それは覚えておくといいでしょう』


「残念ながらお前たちの思った通りにはならないだろう。ただそうだな、最後にお前たちがなぜ『冥府の迷い姫』の存在を知ったのか、それだけは聞いておきたい。話す気はあるか?」


『クヒョヒョ……。我らには聞こえたのよ、「冥府の迷い姫」様のお声がな。この世界は誤っている。誤りを正すには、人間が真なる姿を取り戻す必要がある、とな』


「神のお告げみたいなものか。それを信じてお前たちは人間が争うように仕向け、大勢の魂をこの世界に送り込んだということだな」


『人が怒り、恐れ、恨み、憎み、絶望した時に、人の魂はこの地に至る強い力を得る。我らはその手助けをしたに過ぎぬ。我らは多くの人間に、真の姿を得る功徳を積んできたのだ』


「そうか……」


 俺は溜息をついて、すでに俺の周りに集まってきた皆の方を振り向いた。


「こいつらになにか聞きたいことはあるか?」


 俺の問いにほとんどのメンバーは首を横に振ったが、ドロツィッテだけは手を上げてきた。


「私は彼らの持つ特殊な力、例えばあの強力なアンデッドを使役する力について知りたい。どうやって身につけたかなど話す気はあるかな」


「どうだ、話す気はあるか?」


 俺が聞き直すと、意外にもイスナーニは素直に答えた。


『クヒョッ、それはお前たち冒険者と同じよ。我らももとは『覚醒者』なのだ。偽の人間が「覚醒者」など、おこがましいにも程があるがな』


「スキルだということか」


「なるほど、それが一番納得できる答えかもしれない。やはり我々が知り得ないスキルがまだまだあるということだね」


 ドロツィッテはそれで満足したのか、何度かうなずきながら「もういいよソウシさん」と口にした。


「ではこれでお別れだイスナーニ、ワーヒドゥ、サラーサ。最後に言い残すことはあるか」


『いずれ復活することがわかっているのだ。そのようなものはない』


『そうじゃのう。まあ強いて言えば、また会おう、ということになるかのぅ~』


『次はまた違った姿になりますよ。ふふふ』


 どうやら本気で復活できると信じているらしいことに、俺は脱力感に近いものを感じた。


 度し難い……とも思うが、結局それが彼らの行動の核にある『冥府の迷い姫』という幻想への信頼の表れなのだろう。


 もしかしたらそんな幻想を抱きながら死んでいけるのがもっとも幸せなのかもしれないな、と思いつつ、彼らに蹂躙された人々のことを思うとそれを許してはいけない気もする。だがここで俺が『神』について話をしてもこいつらは最後まで信じないだろう。なら俺にできることは一つだけだ。


「では終わりだ」


 そう宣言して、俺は『万物を均すもの』を振り上げて、まずはイスナーニの顔面に叩きつけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ