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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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23章 異界と冥府の迷い姫 04

『悪魔生成装置』を調べ終わった俺たちは、入ってきた通路を戻り外へ出た。


 広がるのは、相も変わらず紫の光に照らされた荒野である。


「さてと、まずはどこへ向かうかだが、ライラノーラ、さっきの『根源』がどちらから流れてきたのかはわかるか?」


「たぶんあちらの方からだったと思いますが、もう一度流れてこなければ正確にはわかりませんわ」


 ライラノーラが指さす方には地平線が続いているだけだった。周囲を見回すと遠くに岩山がいくつか見えるが、特に目立った形状のものはない。あれらの中に『悪魔生成装置』のあったとしても、そこを調査する必要はもうないだろう。


 ライラノーラの指した方角を見ていたスフェーニアが、目を細めながら隣に歩いてきた。


「ソウシさん、あちらのほうに塔のようなものが見えます。もしかしたらそれが探している施設かもしれません」


「塔……?」


 スフェーニアが指す方をじっと見るが、なにも見えない。


 そういえば帝都で買った魔道具の中に望遠鏡があったことを思い出し、それを取り出して覗いてみる。すると確かに、遥か彼方に塔のようなものが地平線から突き出しているのが見えた。


「かなり遠いが、確かに塔みたいなものがあるな。よし、あそこに向かってみよう。距離があるから馬車を使うか」


 俺は「貸して!」とせがむラーニに望遠鏡を渡し、『アイテムボックス』から大型の馬車を4台取り出した。


 シズナの『精霊』に牽かせるものだが、この『異界』の荒野はもとの世界より平坦で、細かな凹凸も少ない地面なので、石畳の街道より走りやすそうだ。


 俺たちは馬車に乗り込み、所々で道標となる杭を地面に打ち付けながら、塔らしき建造物がある方に向かった。


 馬車での移動でも、来たルートを辿れるように杭を打ち込んでおくのは忘れない。4本目の杭を馬車を下りて打ち込んでいると、ライラノーラが馬車から降りてきた。

 

「ソウシ様、今多くの『根源』がまとまって近くを通り過ぎるのを感じましたわ。やはりあの塔がある方向から流れてきているようです」


「ありがとう。ならひたすら進むだけだな。問題は『悪魔』が出てくることだけか」


 周囲を見回すと、1キロほど先に一つ、3キロほど先にもう一つ岩山が見える。


 俺たちが調べた岩山はもうはるか遠くである。更に周囲を見渡すと、肉眼で確認できるだけで岩山は6つある。もしそれらすべてに『悪魔生成装置』が備わっているのなら、『神』はいったいどういうつもりでこれほど多くの施設を作り出したのだろうか。


 さらに馬車に乗って進むこと30分、同乗していたフレイニルが急に周囲を見回し始め、馬車の正面から見て右方向を指さした。


「ソウシさま、よこしまな気配が多数、あちらの方に集まっているのを感じます。『悪魔』のようですが、それ以外の……あの『冥府の燭台』と同じ気配もあるようです」


「こっちに向かっているわけではないんだな?」


「はい、その場にとどまっているように感じます」


「ということは、俺たちを出迎えに来たわけではなさそうだな。もしかしたら『異界の門』から外に出ようとしているのか?」


「だとしたら止めないと危険ですね」


 俺は御者席で『精霊』を操っているシズナに、フレイニルが指し示した方向に向かうよう頼んだ。


 馬車の窓から顔を出して前方も見ていると、遠くに数百、いや千を超えるほどのうごめく影が見えてくる。


 間違いなく『悪魔』の群れであり、タンクローリーのような巨大暴走悪魔やケンタウロス型の大型悪魔なども多数いるようだ。しかもその『悪魔』たちの群れの隙間から、小さな黒い穴が開いているのが見えた。どうやらその穴を広げて外に出ようとしているらしい。


「まずいな。あれだけの大型悪魔が一斉に外へ出たら大変なことになる」


「ここですべて討伐してしまいましょう、ソウシさま」


 俺はやる気を見せるフレイニルにうなずいて、後ろの馬車の様子をうかがった。ラーニやドロツィッテが窓から顔を出して『悪魔』の群れの姿を確認していたので、全員これからなにをするかはわかっているだろう。


「ソウシ殿、『悪魔』どもがこちらに気付いたようじゃ!」


 御者席からシズナが叫んだ。


 馬車を停めると、全員がすぐに馬車から降りてきて戦う準備を始めた。この辺りはもう阿吽あうんの呼吸である。


 俺も『万物を均すもの』『不動不倒の城壁』を出し、『悪魔』たちの方へ目を向けた。


 確かに一部の悪魔がこちらへ猛然と接近中だった。小型のものが100匹ほど、大型の8本足が5匹。そしてそれに先行するように、巨大暴走悪魔5匹が、胴体の下に並んだ足で地面を蹴って、土煙を派手に上げながら突っ込んでくる。


「あの程度の数で足りると思ってるのがムカつくわね」


「まったくねえ。あの程度じゃ肩慣らしにもならないよ」


 ラーニが長剣『紫狼』に付与魔法をかけながら文句を言い、カルマも大剣『獣王の大牙』を軽く振りまわした。


「あの暴走悪魔は俺がやる。魔法もある程度引き付けるが、注意はしておいてくれ」


「了解じゃ。あやつらの魔法程度ではわらわの『精霊』の鎧は貫けぬゆえ、マリシエール達はこちらのことは気にせず暴れるとよいぞ」


「そうさせていただきますわね」


 シズナとマリシエールが話をしている内に、地面に振動を感じるくらいの距離にまで巨大暴走悪魔が迫っていた。


 俺はいつもの通り一人前に出て『誘引』を発動する。


 巨大暴走悪魔が一斉にこちらに顔を向ける。灰色の無表情な顔が俺を轢き殺そうと迫ってくる。


「盾で受けてばかりじゃ芸がないからな」


 俺はそんな言葉を口にしつつ、『万物を均すもの』を振り上げて構えた。


 正面から叩き潰すのは初めて試すが、今の俺ならできるだろう。


 先頭の暴走巨大悪魔との距離は100メートルを切っている。大型のタンクローリーのような巨体があと数秒で俺に到達する。


 3、2、1、俺はタイミングを測り『万物を均すもの』を振り下ろした。


「おおッ!」


 気合と共に、暴走悪魔のデカい顔に金色の多角形をした槌頭を叩き込む。鉄より硬い『悪魔』の顔だが、その瞬間液体になったかのように表面が波打って、直後に粉々になって弾けとんだ。


 それで収まらない破壊のエネルギーは悪魔の胴体を前から後ろへ駆け抜けて、そのすべてを粉砕した。外から見ると『悪魔』の身体が一瞬で爆散したように見えたことだろう。


「ああッ!」


 3匹目を吹き飛ばしたところで、残りの2匹は急減速を始めた。やはり恐怖を感じるようだ。ライラノーラの話では『悪魔』は人間を作ろうとして失敗したものだという話だったが、それがモンスターと違う行動を生んでいるのかもしれない。


 だが俺は躊躇なく減速しきれなかった4匹目も叩き潰した。


 減速が間に合った5匹目を追おうとしたところで、後ろのカルマから声がかかった。


「その一匹は任せなっ!」


 方向転換を始めた大型悪魔に 『疾駆』スキルで一気に接近すると、カルマは大上段に構えた『獣王の大河』を振り下ろした。


 その一撃で大型悪魔の首は胴体と泣き別れになり、黒い霧となって消えていった。


「なんだい、こっちは奥の手も使ってないのに手応えがないねえ」


 ニッと笑いながら振り返るカルマ。その攻撃力はすでに冒険者内の頂点の一角になっているだろう。


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