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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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6章 護衛依頼とアンデッド討伐  04

 アンデッドの城がある森、その近くの村まで討伐部隊は1日かけて行軍をした。


 村の周辺に陣を張って一泊し、翌朝に城に突入をすることになる。


 もちろん一泊するにあたって夜の警戒は最大限に行う。アンデッドと言えば基本的には夜の世界の住人である。自分達の拠点を攻撃しようとする軍勢を一晩放っておくというのも考えにくい。前に戦ったリッチは知性が感じられたのだ。


 俺たちは領軍の兵士が立ててくれたテントに入って寝ることになったが、どうも嫌な予感がしたので途中で起きてしまった。


 装備をもってテントを出る。陣のあちこちに魔道具の照明が立っていて周囲を光で照らしている。それなりに高価なもののはずだがさすがに領軍には配備されているようだ。


 陣の外縁に行くと領軍の兵が3人一組になって見張りをしていた。見回すと見張りのグループが他に2組見える。警戒はかなり厳重なようだ。


「どうしたあんた……冒険者か? 見張りは俺たちがやるから休んでてくんなよ」


 俺が近づくと、見張りの一人が声をかけてきた。


「ああすみません、ちょっと夜風にあたりたくてですね。それにちょっとやな予感がするもので」


「それは冒険者の勘って奴かい? あまり脅かさないでくれよ」


「すみません、心配性なものでして」


 とやりとりをしていると『気配感知』になにかが触れた。弱い反応だが、確かになにかが近づいてくる。小動物だろうか……いや、もしかしてこちらの『気配感知』を欺瞞(ぎまん)できるスキルを持ったモンスターの可能性もあるのか? だとしたら強敵の可能性もあるな。


「なにか近づいてきます。モンスターかもしれません、下がってください」


「ちょ、マジかい!? おい、下がれ!」


 俺が警告すると兵士たちは陣の方に下がった。モンスターだったらすぐに応援を呼んでもらわないとならないだろう。


 光が届かない平原の奥に向けてじっと目を凝らす。『視力』スキルのおかげでだいぶ視界はマシだが、『暗視』スキルなんていうものがあれば欲しいところだ。


 草むらがガサガサと音を立てる。いた、犬だ。


 野犬……いや、どうも様子がおかしい。毛皮がボロボロで一部腐っているような部分もある。なるほど犬のゾンビというわけか。


「モンスターです、応援を!」


「敵襲、敵襲っ!」


 俺の言葉に答えて兵士が叫ぶ。陣の方が一気に騒然となるのが分かった。


 とりあえず近くのゾンビ犬は俺を標的に定めたようだ。しかし『気配感知』によると後続がかなりいる。応援は必須だ。


 ゾンビ犬は次々と飛び掛かってくるが、俺のメイスの射程内に入った途端に爆散する。気配を消すスキルを持っているだけで強さは見た目相当らしい。


 肉片が散らばるとともに酷い臭いが広がる。ゾンビはフィールドで出会う敵としては最悪だな。


 数十匹はミンチに変えただろうか。少し離れたところにはすでにいくつかの冒険者パーティが駆けつけていて、同じくゾンビ犬を倒し始めている。


「ソウシさまっ」「ソウシっ、うわ臭っ!」


 どうやらウチの2人も来たようだ。だが2人とも少し離れたところで立ち止まってしまった。それはそうだろう、俺の周りには腐った肉片が大量に堆積(たいせき)しているのだ。俺自身もかなり腐肉を浴びてしまっている。


「そこで俺の討ち漏らしを倒してくれ。こっちには来ないでいい!」


 俺はそう言って、さらにゾンビ犬がやってくる方に歩を進めた。どうも奥に少し大きな反応があるようだ。それがボスなら確認した方がいいだろう。


 俺は飛びかかってくるゾンビ犬を片っ端から爆散させつつ、ジワジワとボスの気配に近づいていく。ボスはどうも動く気はないようだ。


「なんだあれは……?」


 ボスらしきものが視界に入ってきた。


 モンスターだと思っていたのだが、暗闇に浮かぶその姿は高さ2メートルくらいの石碑みたいな置物であった。


 よく見るとその石碑の周辺には黒い霧のようなものが漂っていて、その中からゾンビ犬が次々と現れているようだ。


 つまりあれはゾンビ犬発生装置ということなのだろう。なんて迷惑な装置だ。


 俺はその装置に向かって走って行きメイスでぶっ叩いた。石碑そのものは厚みがなく、簡単に根元が砕けて倒れた。周囲の黒い霧が薄まっていくので機能が停止したようだ。


 周囲を気配感知スキルで見回すと他にも数か所に設置されていることがわかる。俺は走り回ってそれらすべてを破壊した。これでゾンビ犬がこれ以上発生することはないだろう。


「なに……もうここまで冒険者が……?」


「これ以上は無理か……退くぞ」


 その時森に近い方で男のくぐもった声が聞こえた。声のした方に目を凝らしたがすでに誰もいない。『気配感知』には高速で離れていく反応が二つ。移動している先はアンデッドの城がある方向だ。間違いなく関係者だろう。


 そういえば「フォーチュナー」のリーダーのジールが、「アンデッドを召喚する者」がいるみたいなことを言っていたな。彼らがそうだとするなら、今回の「アンデッドの城」出現もそういった連中が関わっているということか。


 ともかくも総隊長のアナトリアに報告が必要だが……まずはこの汚れと臭いをなんとかしないとな。




 陣に戻るとすでに戦闘が終わっており、領軍の兵士がゾンビ犬の死骸から魔石を取り出したり、死体を一か所に集めて燃やしたりしていた。燃やすのは冒険者の魔導師がやっているようだ。


 見た目ゾンビみたいになっていた俺だが、総隊長の随行ということで、「フォーチュナー」の女魔導師(レイラという名の美人だった。ちなみに彼らは4人パーティである)が直々に水魔法の高圧洗浄できれいにしてくれた。


 その後フレイニルが『浄化』をかけてくれると、戦いの前よりきれいになった気がするほどである。


「うん、臭いも全然しないし大丈夫よ。フレイニルの魔法はすごいわね」


 俺に鼻を近づけてスンスンしていたラーニが太鼓判を押してくれたので、俺はレイラ嬢とフレイニルに礼を言ってアナトリアのところに報告に向かった。


「ソウシ殿か。貴殿が召喚石を破壊してくれたそうだな。よくやってくれた。報告を聞こう」


 俺が本部テントに顔を出すと、アナトリアはそう言って椅子をすすめてくれた。


 俺はゾンビ犬の出現から『召喚石』破壊までの流れを話した後、最後に聞こえてきた声と、その主と思われる存在の話をした。


「……ふむ、その言葉からすると召喚石を設置したのはその者たちということになりそうだな。二人いて、両方ともに城の方へ向かったのだな?」


「私が感知できる範囲は、ですが」


「重要なのはその者たちが『退いた』という事実だ。モンスターでない者がこの件に関わっているとなると、色々と考えなければならないことが出てくるのでな」


 モンスターは退かないというのは常識だ。まああの会話自体モンスターがするものではなかったが。


 アナトリアは目を細めなにかを考えているような素振りをみせたが、すぐに元に戻って俺に目を向けた。


「まあよい、そこは今考えることではない。報告感謝する。今回の貴殿の働きについては報酬に反映させよう。明日は予定通り討伐任務を行うので、朝までは休んでいてほしい」


「分かりました。失礼いたします」


 本部テントを辞して自分達のテントに戻る。寝ているように言ったのですでにフレイニルとラーニは寝息をたてている。


 嫌な予感は消えたので朝までは寝られそうだ。俺はテントの端に横になると目を閉じた。

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