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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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22章 異界の門への道標  12

 4度目の『彷徨する迷宮』は、入り口付近こそ土の洞窟であったが、すぐに大理石で作られた、荘厳な雰囲気の通路へと変化した。幅7、8メートル、高さは3メートルくらいだろうか。


 そこを歩く俺たちは全員がフル装備であり、特に俺はメイス『万物を均すもの』と盾『不動不倒の城壁』、そして鎧『神嶺の頂』を身につけたオリハルコン一色の金ピカ姿である。


 俺の斜め後ろを歩いていたラーニが耳を動かしながら横に並んできた。


「なんか豪華な感じのダンジョンね。これで最後って感じがすごくする」


「そうだな。ライラノーラもそう言っていたし、これで最後なのは間違いないだろう」


「ライラノーラ自体もすごく強くなってるんだろうね。楽しみ」


「ただスキルは貰えないみたいなことを言っていたな」


「代わりになにか願いをかなえてくれるんでしょ?」


「その権利は話をしてもらうことで使ってしまうかもしれないけどな」


「え~。全員分聞いてくれないのかな」


「それは無理じゃないか」


 と能天気な会話をしたが、ライラノーラには『冥府の迷い姫』関連の話も聞かねばならない。その話の行方によってはどんな展開になるのか予想もつかない。


 そもそもそれ以前に、過去最高にパワーアップしているはずの彼女を倒さねばならないのだ。ダンジョンとして最も気を引き締めて挑まねばならないものである。


 そんなことを考えいてると、ようやくモンスターが近づいてきた。


 現れたのはローブをまとい、禍々しい杖を携えた、宙に浮く骸骨『リッチ』と、青白い肌の筋肉質な食人鬼『グール』である。


 ラーニの『疫病神』スキルとカルマの『相乗』スキルによってリッチ、グール合わせて50匹近い数で押し寄せてくるが、俺が『圧潰波』を使うまでもなくメンバーが全滅させてしまう。


「これでは肩慣らしにもなりませんね」


 というスフェーニアのため息交じりの言葉に、サクラヒメが、


「慢心は禁物とは心得ているが、さすがに力の差が大きすぎていかんともしがたいでござるな」


 と答える状態だ。


 その後もまさに草でも刈るような、戦いとも言えない戦いを繰り返しつつ、1時間ほどで地下二階への階段へとたどり着いた。


 一息入れつつ階段を下りる。


 ダンジョンの様子は地下一階と変わらない。


 通路の広さが5割増しになっているのが雑魚モンスターの数が増える予兆か。


 しばらく歩いていると、果たして首無しの鎧剣士『ヘッドレスソーディアー』の軍団が、50匹を余裕で超える数で隊列を組んで歩いてくる。今さらながらダンジョンでの戦いでないと、口元に苦笑が浮かんでしまう。


「ソウシがやるとどうせ一撃だから任せてね!」


 というラーニの言葉によって、俺は後衛陣の守りにつく。


 といってもシズナの『精霊』の鉄人形――というよりもはや鉄巨人――7体が守っているので、俺が必要かどうかも怪しいが。


 後衛陣の魔法攻撃の後に前衛陣が切り込んでいくと、それでヘッドレスソーディアー50匹はあっという間に全滅する。


 そんなあまりに酷い戦いを繰り返しながら、やはり一時間ほどで地下3階への階段前に到着する。


 小休止の後地下3階へ。


 雰囲気は1、2階と同じである。


 出現するのはヘッドレスソーディアーの上位となる『ヘッドレスアデプト』と、貴族の姿をした幽霊『バロンファントム』だ。両方Bランクのモンスターだが、合わせて30匹近い数で出現するので実際のランクとしてはすでにAを大きく超えている。


 もっともこちらも『精霊』を入れると20人近い。しかもフレイニルの真聖魔法『昇天』の一撃ですべてのバロンファントムが消滅してしまうので、地下2階より楽なくらいであった。


 とはいえ最後は大休止を取り、地下4階へ。


 ここからは『彷徨する迷宮』でも初めての難易度になる。


 ダンジョンの様子も今までとは微妙に異なり、大理石様の床や壁がうっすら赤みを帯びた色となり、通路の幅もさらに広がって三車線道路くらいありそうだ。もはやダンジョンと呼んでいいのか悩むくらいであるが、過去にAランクダンジョンで見たことのある風景でもある。


 俺は気持ちを入れ直し、慎重に歩を進めていった。


「前方にモンスターが多数います。『デュラハン』のようですが、何体か特別な個体がいるようです」


 地下4階を歩き始めて10分ほど、隣に来たスフェーニアがそう伝えてくる。俺の目にはまだ見えないが、視力に優れた彼女が言うなら間違いない。


「デュラハンか。この通路で一斉に突撃されたらさすがに厄介だな」


「そうですね。それでもソウシさんなら一撃でしょうが、最初から頼るのはよろしくありません」


「賛成だ。少し工夫して戦ってみるか。フレイ、前方に『絶界魔法』で壁を作ってくれ。シズナも『精霊』を前に並べてくれ。マリシエール、ラーニ、カルマ、サクラヒメも前へ。スフェーニアとシズナ、ドロツィッテ、ゲシューラはいつもの通り魔法で先制だが、範囲魔法で向こうの突進速度を落とす狙いで頼む。マリアネは遊撃で、バックアップを頼む。前衛は向こうの速度が落ちたところで突っ込むぞ」


 と指示を下すと、まずはフレイニルの『絶界魔法』によって前方に半透明な壁が三枚横に並んだ。


 その後ろに『精霊』の鉄巨人が横に7体並ぶと、それだけで並のモンスターでは突破するのが不可能な壁になる。


『精霊』の後ろに俺を含めた前衛陣が並び、後方で後衛陣が精神集中を始めるタイミングで、ダンジョンの奥から、馬に乗った首無し騎士たちの姿が浮かび上がってきた。


 横一列に並ぶ姿は完全にアンデッドの騎馬隊である。横に10列、縦はすべて見通せないが少なくとも5列はあるようだ。こんなものが一斉に突撃してきたら、並のAランク冒険者パーティが複数揃っていても大きな被害を被るだろう。


 しかも奥の方に3匹、一際大きなデュラハンの姿が見える。どうやら上位種のようだが、双頭の馬にまたがる大柄な首無しの鎧騎士は迫力が桁違いだ。デュラハンは単体でAランクのモンスターだが、その上位種となるとどの程度の力を持っているのか、少し楽しみに感じるのは我ながら麻痺している。


「あれは『デュラハンロイヤルガード』ですね。過去にAクラスダンジョンで出現した記録があったと思います」


 マリアネが後ろから補足してくれる。


「『ロイヤルガード』ということはガードされる対象もいるのか?」


「どうでしょうか。そちらは確認されておりませんが、ライラノーラがそうなのではありませんか」


「ああ、その可能性もあるか」


 緊張感のない会話をしていると、デュラハンの騎馬隊が一斉に蹄を鳴らした。


 距離としてはまだ50メートルほどあるが、『疾駆』スキルの効果もあって、最前列の10匹が一瞬でトップスピードに乗って突進してくる。


「『ラーヴァサイクロン』!」


「『フレイムサイクロン』じゃ!」


 スフェーニア、シズナが同時に魔法を放つ。


 溶岩と炎の竜巻が、突撃してきたデュラハンの前に吹き上がる。


 デュラハンたちはその中にもろに突っ込む形となり、大ダメージを受けた上に勢いを殺された状態で『絶界魔法』と鉄巨人の壁へと突っ込むことになる。


 フレイニルの『絶界魔法』による壁は非常に堅固で、Aランクとはいえ勢いを失ったデュラハンの突撃では破れない。防御姿勢を取っている鉄巨人も盾役として十分すぎるほどで、デュラハンの槍の一撃程度ではビクともしない。


 鉄巨人の足元から、前衛陣が突っ込んでいく。


「足を止めた騎馬なんざただの的だねぇ!」


 カルマの大剣『獣王の大牙』が、一匹のデュラハンを馬ごと真っ向唐竹(からたけ)割りにする。


 続いてラーニ、サクラヒメ、マリシエール、そして俺が出て行くと、10匹のデュラハンはなすすべなく全滅した。


「次が来ます!」


 マリアネの注意によって前衛陣は再度壁の後ろに退く。


 先ほどと同じく10匹のデュラハンが突撃してくるが、次はドロツィッテとゲシューラの魔法によって同じようにダメージを与えられ、前衛陣によって刈り取られる。


 さすがにそこで向こうも学んだのか、後続の30匹ほどは様子を伺うようにゆっくりとこちらへ進んでくるようになった。これが人間であれば打つ手なしとして下がるところだが、生憎(あいにく)モンスターにそのような選択肢はない。


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