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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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22章 異界の門への道標  11

 夜の祝賀会についてだが、叙爵の宴はすでに3回目ということもあり、俺もさすがに慣れてそれなりに貴族らしく振舞えたのでないかと思う。


 そもそも異なる3国で爵位をもらうこと自体この大陸では稀なことらしいので、それに慣れるというのも思えばおかしな話だが。 


 ミュエラの配慮で『ソールの導き』のメンバーが事前に紹介されたのだが、そのおかげか俺に親類の女性を紹介してくる貴族がいなかったのは俺としてもありがたかった。


 代わりにマリシエールやドロツィッテ、シズナなどがかなり話しかけられていたが、この手の場では仕方のないことだろう。帝国の帝妹や冒険者ギルドのグランドマスター、隣国の姫に相当する人間など、メカリナン国の貴族にとっては絶対にコネを作っておきたい相手である。


 もっともそれに関しては俺も同じである。ミュエラが抑えてくれても結局50人以上の有力貴族と挨拶を交わしただろうか。幸い冒険者として高レベルになったお陰か若返ったお陰か記憶力が多少上がっていて、意外と覚えていられるのが助かった。


 なおこの世界にはまだ名刺の文化はないのだが、トランプ作成と同じ手法で作れるかもしれないと挨拶をしながら気付いた。王都のトロント氏に頼んで作ってもらうのも面白そうだ。


 ともあれ、挨拶してくる貴族の中に、特に気になる態度を取ってくる者がいなかったのは俺の胃にありがたかった。


 そのことをミュエラに小声で伝えると、


「そのような者がいるはずもないだろう。ソウシ殿は自分がどう認識されているかの自覚が足りなすぎるのではないか?」


 と返されたが、その通りであるので苦笑いをするしかなかった。


 なおその場ではミュエラとの婚約は公式には発表されなかったが、これはリューシャ王によると、アルデバロン帝国、ヴァーミリアン王国に配慮したためだそうだ。なにしろ2国ともフレイニル、マリシエールという重要人物をパーティには入れているが、正式にはそれだけの関係であるからだ。


 もっともミュエラとは会場でかなり親密そうに振舞ったので、それと察した人間がほとんどであったことだろう。もともとメカリナンでは、俺は彼女に仕える形で功績を上げた人間という扱いであり、俺と彼女の仲を怪しむ向きもあったとのことなので自然と理解されるはずだ。


 ちなみに『ソールの導き』のメンバーはすでにミュエラについては納得――諦めかもしれないが――済みなので、問題になることはなかった。


 宴の後に、スフェーニアに、 


「ソウシさんに頑張っていただけばいいだけですから」


 と笑顔で言われたのだが、俺はどう返せばよかったのだろうか。


「善処する」と答えたのだが、直後に()()()()()スキルも存在するのだろうかと考えてしまったのは、さすがに自分としても情けないというか、不誠実だった気がする。




 明けて翌日。


 俺たち早速、王都の東に現れた『彷徨する迷宮』へと出発した。


 距離的には馬車で2日ということで、いつものとおり馬車をシズナの『精霊』に牽かせての移動となる。


 リューシャ王やミュエラに見送られての出発となったが、彼らが見えなくなったころに、同乗していたフレイニルが声をかけてきた。


「ソウシさま、ラーガンツ侯爵が一緒にいらっしゃるという話はなかったのでしょうか?」


「ん? いや、そんな話は出なかったな。彼女はメカリナン国の現役の宰相だから5日も城を空けるということもできないだろう」


「ではあの方はご一緒に旅をするということもないのですか?」


「ああ、もちろんそういう話になっている。俺が落ち着いてどこかに居を構える時に合流する形になると思う。彼女が自由に振舞えるようになるにはまだ時間がかかるだろうしな」


「そうですか。それは少しお可哀想な気もしますね。ソウシさまとの旅はとても楽しいですから」


 と、微笑むフレイニルの表情は、一瞬だけ大人びて見える。


 俺との関係を見据えてアルマンド公爵家との関係を修復してから、彼女は一段と成長をしたようだ。


「俺も皆との旅は楽しいし、できれば一生続けたいくらいだが、さすがにそういうわけにもいかなそうだ。『冥府の燭台』の件とモンスター異常発生の件が終わったら、皆と相談をして落ち着く場所を決めようと思ってる。フレイも考えておいてくれ」


「はい、わかりました。それはそれで楽しみですね。ソウシさまが治める土地はきっとすばらしい場所になると思います」


「そこは全然実感が湧かないんだけどな。正直帝都の家でずっと暮らしていってもいいんだが……」


 これは俺の本音ではあるが、しかしそれは許されないだろう。


 俺という存在は、皇帝陛下に限らず、その国の王の近くに置いておくにはあまりに劇物すぎるのだ。


 どこか僻地で領主でもやっているのが、恐らく多くの人間が安心できる在り方であるだろう。皇帝陛下と浴場で話をしたことだが、英雄などというものはえてして不幸な結末を迎えるものである。身の処し方を十分に考えなければ、平穏な生活は遠ざかるばかりである。


 そんな話をしながら馬車は細い街道を進んでいき、2日目の夕方に目的地である古墳跡に到着した。


 広大な草原の真ん中に、小さな山のような古墳が鎮座している。一見するとただ土が盛られているだけだが、つぶさに見ると周囲には焼き物のようなものが散乱していて、そこが何者かを祀った場所だとわかる。


 その古墳の横に、ぽっかりと黒い穴が開いていて、穴の周囲にはテントが張られ、兵士たち見張っている。ギルドからの情報もあり、国で誰も入れないように管理をしているらしい。


 Cランクの冒険者が調査のために1階部分だけ入って、Cランクのアンデッドモンスターが出現することを確認したらしい。ゆえに『彷徨する迷宮』であることは間違いないだろう。


 問題は1階でCランクモンスターが出現したことだ。


 階を下りるつれて出現モンスターのランクが上がる『彷徨する迷宮』では、最下層のランクはAランクを超えることになるだろう。


 到着時は夕暮れが迫っていたのでダンジョン入り口近くで野営をし、その翌日、俺たち『彷徨する迷宮』に足を踏み入れた。

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