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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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22章 異界の門への道標  07

 デントン伯爵領から、さらに南下すること一週間。


 もう1つの町を経由して、いよいよ俺たちはメカリナン国の王家直轄領へと足を踏み入れた。


 なお、その途中寄った町ではAランクモンスターの討伐依頼があり、丁度Aランクの冒険者がギルドにいなかったため俺たちがその依頼を受けたりもした。


 ドロツィッテとマリアネは冒険者ギルドで情報収集していたが、やはり地上でのモンスター討伐依頼はかなり増えているようだ。しかも王都や、さらに南にあるラーガンツ侯爵領の方からの依頼が多いとのことで、南方のモンスター出現数が増えているというのは確かであると感じられた。リューシャ王が俺たちに会いたがっている理由の一つに、このモンスター出現数増加があるのは間違いないだろう。


 なお、このメカリナン国の南は広大な森と山地が広がっていて、そこは人の手がほとんど入っていないらしい。帝都ではこの大陸の地図を見せてもらったが、メカリナン国より南の土地については海岸線の形はわかっているだけで、ただ『黒の森と白の山』という地名が載るのみだった。


 それはともかく、直轄領に入ると街道の道幅が徐々に広くなり、街道を行き交う人の数はさらに増えていった。馬車を牽く商人や旅人だけでなく、冒険者の姿も多く見受けられる。彼らの表情はその多くが明るく、以前図らずも迷い込んだときとはまさに雲泥の差がある。


 王都の城壁が見えてくるころには街道に人が増えてきたので、途中で精霊牽きの馬車をしまって徒歩に切り替えた。鉄の獣が牽く大型馬車の車列はあまりに悪目立ちし過ぎるのである。


 道行く人々は俺たちの姿に――主に女性陣の見目の良さに目を奪われていたようだ。下半身が蛇であるゲシューラの姿に目を見開いている者もいたが、なにしろ『ソールの導き』は装備や服装などからしても並の一団ではない。声を掛けてくる者どころか、無粋な目を向けてくる者もほとんどいなかった。


 近くに迫ってきた王都も、心なしか以前とは違って華やいでいるように見える。事実城門前には桁が2つほど違うくらいに人がいるのだが。


 なんとなく感慨深くなって俺がうなずいていると、隣を歩くフレイニルが不思議そうな顔をした。


「ソウシさま、なにか気になることがおありですか?」


「ああいや、前に来たときとは大違いだと思ったんだ。前は人が少なくて、食べ物も満足に食べていなかったようで皆暗い顔をしていたからな。この街道を歩いているだけでも別の国に来たような気がするくらいなんだ」


「それだけ新しい国王陛下が立派な方ということですね」


「そうだな。年齢で言うとフレイとラーニの間くらいの少年だったが、王として立派に務めているんだろうな。もちろん補佐をする人間に恵まれていることもあるだろうが」


 と言って思い出すのはもちろん切れ者のラーガンツ侯爵だ。彼女が後ろ盾になっているならば、年若いリューシャ王も安心できるだろう。


 さて、城門前にさしかかり、堀にかかった大きな跳ね橋に足を踏み入れようとすると、俺たちの存在に気付いたのか、衛兵たちに動きがあった。


 詰所から100人近い兵士が出てきて、左右に並び始めたのだ。


 周囲にいた旅人や商人たちは端の方を歩くよう誘導され、結果として俺たちは非常に目立つ形で城門に入ることになった。


「救国の大英雄、オクノ侯爵閣下のご来訪を歓迎いたします! 敬礼!」


 隊長格の兵士がそう叫ぶと、兵士たちが一糸乱れぬ動きで敬礼をする。


 その言葉で回りの人間も俺たちの正体に気付いたのか、慌てて端によって頭を下げたり、中には地面に両膝をついて拝み始める人間まで現れた。


「ひえ~、ソウシってこの国だと完全に英雄って扱いなんだ」


「ソウシさまは本当にこの国をお救いになったのですね」


「これは思った以上の歓迎ぶりですね。ソウシさんはメカリナンでの活動について、かなり控えめなお話をされていたのでしょう」


 ラーニとフレイニル、スフェーニアを始め、メンバーたちが感心したようにそんなことを言ってくる。


「いや、俺がメカリナンを出た時はここまでの扱いじゃなかった。目立ったのは確かだが、市民には顔は知られていないはずなんだ。そもそもすぐにこの国を出て行ったしな」


「逆にそのことによってソウシさんのイメージが大きくなってしまったのかもしれないね。人は自分が直接見ていないものにこそ、想像の翼を広げるものさ」


「なるほど……」


 ドロツィッテの言葉には一定の説得力があるような気がしたが、だからといって俺のいたたまれなさが解消するものではなかった。


 しかしメカリナンでは多少持ち上げられるだろうと覚悟はしていたが、俺の予想以上にリューシャ王たちが話を盛ってしまった可能性もあるではないだろうか。もっともあの時と違って、俺は王国、帝国ともに侯爵位にある人間だ。これくらいの扱いをされるのは仕方ないのかもしれない。


 衛兵たちに挨拶をしながら城門をくぐると、当然のように迎えの馬車が用意されていた。迎えに来ていたのはラーガンツ侯爵の腹心アースリン氏である。眼光の鋭い元冒険者の壮年男性だが、礼服を着て恭しく一礼する姿は別人のようであった。


「アースリン殿、お久しぶりですね」


「お久しぶりですオクノ侯爵閣下。まさかこのような形でお迎えすることになるとは……実は主人ともども予想はしておりました」


 互いに笑顔で握手をしつつ挨拶を交わすと、俺の中にようやくメカリナンに来たのだという実感が湧いてきた。やはり共に戦った仲というのは大切な絆であるらしい。


「では、こちらの馬車にお乗りください。王城まで案内をいたします。主人も、そして国王陛下も侯爵閣下にすぐにでも会いたいと申しております」


「お世話になります」


 俺たちは最上級のもてなしで、しかも通りの人々の祝福を受けながら、王城まで案内をされるのであった。

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