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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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21章 アルマンド公爵領  18

 その後領軍の将軍とも顔合わせをし、情報交換や作戦の確認をした。


 将軍は当然ながら元冒険者で、すでに悪魔との交戦経験も複数回あるとのことであった。


 城壁に拠って防衛戦に徹するとのことなので特に問題はなさそうだったが、俺たちが悪魔の大群の中央を突っ切ることで悪魔が散らばってしまう可能性も話はしておいた。もちろん大群に突っ込むという話をしたら非常に驚かれてしまい、共に出撃するという話もされたが、それは丁重に断った。


 なお鉱山の状況次第では、領軍をそちらに派遣してもらう必要も生じるだろう。それについては『ソールの導き』が所有している『通話の魔道具』を使い、ドロツィッテ経由で連絡をするという形にした。


 1時間ほどで一通りの準備を終えた後、ドロツィッテを除いた『ソールの導き』10人は東の城門から領都を出た。


 すでに城壁付近は臨戦態勢にあり、鉱山まで続く街道に人の姿は一切ない。こちらの方角は農地が少ないということで農村も二つのみ、しかも悪魔の進行ルート上からは外れているようだ。もちろん村人は急ぎ避難をさせているとのことであった。


 城門前で『アイテムボックス』から馬車を出し、シズナが召喚した『精霊』にハーネスを取り付ける。


 他の馬車も終わったようなので出発の声をかけようとした時、フレイニルが街道の先をじっと見ていることに気づいた。


「悪魔の気配を感じるのか?」


「はいソウシさま。それだけではなく、その先にはもっと大きな、不浄の気配も感じます」


「不浄というとアンデッドか? それとも『冥府の燭台』の連中か?」


「恐らく『冥府の燭台』だと思います。サラーサに近い闇の濃さを持っているようです」


「となるとイスナーニかワーヒドゥか。鉱山には資金の多くが流れていたようだったし、宰相を操っていたサラーサは鉱山関係まで担当していたらしいからな。『冥府の燭台』の幹部がいるのはほぼ間違いないだろう」


「彼の者たちは到底許せるものではありません。ソウシさま、絶対に倒しましょう」


「ああ、そうだな」


 フレイニルがここまで強く言うようになったかと頼もしく感じる反面、それだけ『冥府の燭台』という存在がロクでもないものだと再確認する。


 馬車の準備も終わり、俺たちは分乗して一路鉱山へと出発した。


 鉱山までの街道は、鉱山と領都をつなぐという性質上かなり整備されていた。


 馬車も速度が出せるため、悪魔の大群はすぐに見えてきそうである。


 すでに遠くなった城壁の方をと見ると、城壁の上には多数の兵がおり、大型弩弓や投石機などの準備も行われている。


 小休止を挟みながら東に進むこと一時間半ほど、ついに前方に奇怪な姿をしたモンスターの集団が目に飛び込んできた。距離は1キロルほど先だろうか。


 もっとも目立つのは、帝国の闘技場で戦ったことのある超巨大ツチノコ型悪魔だ。高さ10メートルある灰色の巨大な顔に、太く短いツチノコに似た身体がついている。しかも身体の部分には、無数の小さな人間の顔が鱗のように並んでいる。首の周囲から生えた10本の腕が地面をかきむしりながら前に這いずる姿は、遠くから見てもまさに悪夢としか言いようがない。


 その周囲を囲むように歩いているのは、これも帝国で戦ったケンタウロス型悪魔だ。巨大な人の体を胴体として、その首に当たる部分からさらにもう一つの上半身が生えているという、あまりにも人間を冒涜したような姿をしている。


 それより巨大な大型のクモ型悪魔の姿も見える。こちらも巨大な人の身体を胴体にして、8本の腕が足代わりに左右に突き出ているという意味不明の形状をしている。頭部は3つの人面で、ここからでは確認できないが、彫像のような無表情を保っているはずだ。


 それ以外は小型の虫型が多い。六本足に頭が1つか2つ、小型と言ってもその胴体は軽自動車くらいはある。

 

 基本的にすべて魔法を口から吐いてくるタイプだが、ツチノコ型は体当たりもしてくるはずで、ケンタウロス型も格闘戦を仕掛けてくる。もちろんどれも巨体であることに違いはなく、それだけで脅威であるのは間違いない。


 俺たちは馬車から降りると、各自武器を用意して準備運動を始めた。『ソールの導き』は俺の考えでウォーミングアップもしっかり行うことにしている。


 俺がストレッチをしていると、ラーニが『紫狼』を片手にやってきた。


「ねえソウシ、作戦とかあるの?」


「いや、そんなものはないな。ただ俺たちの目的は鉱山への道を急ぐことであって悪魔の殲滅(せんめつ)じゃない。邪魔なものだけ倒してこの大群を突破するということを考えてくれ」


「あ~、そうか、目的は鉱山だもんね。まあ手あたり次第やっちゃいながら先に進めばいいよね」


「そうなるな。俺が先頭を突っ切るから適当にやってくれ。ただフレイニルやスフェーニア、ゲシューラ、シズナの後衛組の守りも考えよう」


「そうだね。でもそれはシズナの『精霊』がいれば大丈夫な気もするけど」


「うむ。『精霊』は6体呼べるゆえ、守りは任せてもらって大丈夫じゃ」


 シズナが『精霊』の鉄人形6体とともに歩いてくる。


 鉄人形はもちろん人型だが、これは防御重視のスタイルとなるようだ。身長はすでに3メートルを超え、近くで見るとほとんど巨人である。各種防御スキルによって盾役として有能であるが、小型の悪魔ならその拳の一撃で吹き飛ばせるだろう。これだけで恐るべき戦力である。


 俺は皆の前で再度同じ指示をして、『万物を(なら)すもの』と『不動不倒の城壁』を取り出した。鎧の『神嶺(しんれい)(いただき)』はすでに装着済みだが、人前でなくて良かったと少し思う自分がいる。


 全身オリハルコンの俺を見て、『運命を告げるもの』を携えたマリシエールがにっこりと笑った。


「ソウシ様のそのお姿を見ると、どんな相手でも負ける気がいたしませんわ」


「見た目が派手なのは趣味じゃないんだが、そういう効果が期待できるなら悪くはないか。マリシエールの期待通りに戦うとしよう」


「ソウシ様の全力を是非お見せください」


 実際『黄昏の眷族』戦での『黄昏の猟犬』相手には全力でメイスを振るってはいたが、今はそれよりさらに力が上がっているだろう。俺としても楽しみではある。


 見ると悪魔の大群は足音が間近に聞こえるところまで近づいていた。後数分で互いの魔法の射程に入りそうだ。


「よし、では行くぞ。もう一度言うが、目的はあくまでもあの大群の後ろに出ることだ。深追いだけはしないように」


「はいソウシさま。どこまでもついて参ります」


「オーケー。とにかく斬りまくるからね!」


「私も魔法を最大で使えるのが楽しみです」


「後衛の守りは任せるのじゃ」


「それがしのすべての力を尽くし申そう」


「あ~楽しみだねえ!」


 どうやら『ソールの導き』はいつもの通りのようだ。マリアネとゲシューラは寡黙なのが普通なのでこちらも問題ない。


 俺はうなずいてみせてから、悪魔の大群の方向へを身体を向けた。


 彼我の距離はすでに300メートルを切っている。ざっと見ただけでも500匹はいるだろうか。ツチノコ型が1体、ケンタウロス型が5体、大型クモ型が15体くらいか。数だけなら『黄昏の眷族』の軍よりは少ないが、一体一体が大きいのでその迫力はなかなかのものだ。

 

 しかも奥にも群れは続いているようで、下手をすると都市を一つ落とすだけにとどまらず、複数の都市を蹂躙できるほどの集団であることがわかる。もしこれほどの数を『冥府の燭台』が自由に召喚できるのであれば恐ろしい話だが、恐らくはそうではないだろう。サラーサの最後の言葉から考えれば、これはサラーサという幹部の命と引き換えの召喚であるはずだ。


 俺が前に進んでいくと、フレイニルら後衛組がその後ろに付く。前衛組はその左右を護るように並ぶ。


 距離がさらに縮まると、最前列の悪魔が一斉に口を開いた。魔法を放つ予備動作である。


 俺はいつもの通り、『不動不倒の城壁』を構え、『誘引』と『吸引』スキルを最大で発動する。


 直後に百を優に超える炎や氷や岩の槍が、轟音のような風切り音とともに飛来してくる。


 しかしそれらはすべて『不動不倒の城壁』に吸い込まれるように軌道を変え、オリハルコンの盾の表面で砕けて散っていく。本来なら城壁を大きく穿つほどのその衝撃も、もはや俺の左腕をわずかに振動させることすらない。


 魔法を連射をすべて受け止めつつ、俺は一歩一歩前に進んでいく。


 その時悪魔たちが、逡巡したように動きを一瞬だけ止めたのを、俺は確かに感じ取った。

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― 新着の感想 ―
城壁を穿つ攻撃も左手を振らすことすらできないって、盾役としてはかなりの強者感ですね。 強くなりましたね。。
そりゃ流石に悪魔でも引きますよねこんな事されたら。
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