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おっさん異世界で最強になる ~物理特化の覚醒者~  作者: 次佐 駆人


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19章 『黄昏の眷族』を統べる者  14

 翌朝冒険者ギルド前に集まった『ソールの導き』11人は、そのまま領都の外へ出ると西へ向かった。


 歩いて1時間ほど、目的地である『彷徨する迷宮』は、恐らく古墳跡であろう小さな山の横に、洞窟のようなかたちで開いていた。


「この感じ……以前入った『彷徨する迷宮』と同じだと思います」


 というフレイニルの言葉によって、初挑戦組のドロツィッテ女史、マリシエール殿下の顔が引きしまる。ゲシューラはこういうときは無表情だ。


「よし、まずはマリシエール殿下とグランドマスターとの連携も確かめながら進んでいこうか」


「ソウシさん、私のことはドロツィッテと呼び捨てにしてくれないか」


「わたくしもマリシエールと呼んでください。長ければマリーでもいいですわ」


「わかったマリシエール、ドロツィッテ、これでいいな」


「嬉しいですわ」


「いいね、ぐっとくるよ」


 マリシエールはともかくドロツィッテもなし崩し的にパーティメンバー化しそうな雰囲気だ。マリアネを見ると諦め顔をしているのでどうやらもう手遅れなのかもしれない。


 俺はそんなことを考える余裕があることに少しだけ安堵しつつ、ダンジョンへと入っていった。




 3度目の『彷徨する迷宮』だが、石組みの通路で、ところどころ墓標のようなものがあるところは今までと共通だった。


 1階がDランクということは、ザコモンスターの強さはエルフの里で入った『彷徨する迷宮』と同じである。


 新メンバーとの連携を確かめながらの探索だが、マリシエールは現役Aランク、ドロツィッテももとAランクなので、地下3階まではまったく危なげない。


 といっても例えば今いる3階では、Bランクアンデッドの首無し鎧剣士『ヘッドレスソーディアー』が10体前後出現する。この数にはさすがのマリシエールとドロツィッテも驚いたようで、


「こんな戦いをずっと続けてきたとすれば、『ソールの導き』の皆さんの強さも理解できますわ」


「『天運』に『疫病神』に『相乗』か。そういったスキルを持つ冒険者が巡り合ったというのも大きな運命のような気がするね」


 と感心しながら戦っていた。


「う~ん、でも前は5体くらいじゃなかった? こんなには出てこなかったよね」


 地下4階への階段前で12体の『ヘッドレスソーディアー』を倒し終わり、魔石を拾いながらラーニがそんなことを言った。


「たしかに前は5体くらいだったな。パーティメンバーが増えたからか、それともラーニの『疫病神』やカルマの『相乗』がレベルアップしたか……」


「このダンジョンが前より高いクラスになっている可能性もありますね」


 そうスフェーニアが付け足すと、少しだけメンバーの間に緊張が走る。


「その可能性は高いかもな。どちらにしろボスのライラノーラは間違いなく強くなっているだろうし、気を付けていこう」


 階段の前で大休止を取って、地下4階へと下りていく。


 4階の通路は幅が20メートルくらいあった。出現するモンスターは、もはや戦い慣れてしまった首無し剣の達人『ヘッドレスアデプト』、そして貴族風幽霊の『バロンファントム』だ。


 前衛後衛にわかれての登場で、その数は計20体。


『ソールの導き』としては驚くほどでもない数だが、やはりマリシエールとドロツィッテにはまだ刺激が強かったようだ。


「Aランクダンジョンでは集団戦もありましたが、Aランクの『ヘッドレスアデプト』がこの数は驚くばかりですわ。しかも魔導師系モンスターが後衛にいるなんて、悪辣(あくらつ)な組み合わせですわね」


「本当だね。まあこちらも魔導師は多いから問題はなさそう……かな?」


 とドロツィッテ女史が俺の方を見てくる。


「いえ、もっと適任がいます。フレイ、『昇天』を頼む」


「はいソウシさま」


 フレイニルが杖『聖女の祈り』を掲げ、『真聖魔法』の『昇天』を発動する。『先制』『範囲拡大』『充填』『聖気』といったスキルの複合によって、辺り一帯が聖なる光のヴェールに包まれる。


 王都では数百体のアンデッドを消滅させた魔法だ。10体の『バロンファントム』は悲鳴を上げる間もなく一瞬にして消滅し、『ヘッドレスアデプト』もすべてがガクリと膝をつく。


「攻撃っ!」


 俺が叫ぶまでもなく、ラーニやカルマ、マリアネ、サクラヒメが前に出て、『ヘッドレスアデプト』に止めをさしていく。一瞬呆けた顔になっていたマリシエールも、すぐに立て直してそれに続いた。


「話には聞いていたけれど、聖女フレイニルの対アンデッド戦は初めて見せてもらったかな。しかし何度も言うけど、『ソールの導き』は凄まじいね。こんなパーティは神話にも出てこないんじゃないかな」


 ドロツィッテは肩をすくめつつ、いかにも楽しそうに笑った。


「後は最奥部にいるライラノーラか。今から会うのが楽しみだ」


「彼女はドロツィッテとは話が合う気かもしれないな。ただ『最古の摂理』についての話を聞くはずだったんだが、今回はちょっとタイミングが悪かった」


「それも気になるところだね。私もとても興味があるから、できれば少しだけでも話を聞きたいんだけど、さすがに戦の前ではね」


 さすがに好奇心の塊のようなドロツィッテもそのあたりは気にするようだ。


 ともあれ4階も問題なく進み、地下5階への階段の前で休憩をとる。


 そしていよいよ地下5階に下りると、そこにはライラノーラの待つ部屋に続く、重厚な石の扉があった。


「皆用意はいいか?」


 確認すると10人全員が力強くうなずいた。こんな時だが、『ソールの導き』は見目麗しい女性が揃っていることを再確認してしまう。


「どうしたのソウシ、ちょっと苦笑いして」


「ああいや、俺も意外と余裕があるなと思ってな。さて、じゃあ行こうか」


 ラーニに答えて、石の扉を押し開ける。


 そこは過去2回と同じく、真紅の絨毯(じゅうたん)が玉座まで敷かれた、城の謁見の間のような空間だった。


 奥の玉座には、白銀のロングヘアと真紅のドレスを身にまとわせた、透き通るほど白い肌の美女が座っている。血のように赤い唇には微かに笑みが浮かび、同じく血のように赤い瞳がこちらに向けられている。


 俺たちが近づいていくと、『彷徨の迷宮』の主ライラノーラは優雅な動きで足を組みなおした。


「お久しぶりですわねソウシ様。この地に強い力が集まりつつあるのでこの迷宮を発現させたのですが、真っ先にいらっしゃるのが貴方というのがとても面白いですわ」


「お久しぶりですライラノーラさん、再び会えてうれしく思います」


「今日はお仲間がさらに増えていらっしゃるのですわね。しかも皆さん、以前よりもさらに力をつけていらっしゃるよう。非常に頼もしいですわ」


 と社交辞令を交わしていると、もう我慢しきれなくなったのか、ドロツィッテが前に出てきた。


「初めましてライラノーラさん。私はドロツィッテ・オサロー。冒険者ギルドのグランドマスターを務めている者です。この度は伝説の存在にお会いできて大変光栄に思います」


「これはご丁寧に。冒険者ギルドのマスターということは、ソウシ様が所属している組織の長ということですわね」


「ええ、そうなります。そして単刀直入に伺いたいのですが、貴女はいったいどのような存在なのでしょうか?」


 前に乗り出そうとする勢いで質問するドロツィッテを見て、ライラノーラは目を細めて微笑んだ。


「そうですわね。ソウシ様とも『最古の摂理』についてお話をすると約束をしましたので、併せてお話しましょう。ただ貴方がたにはあまり時間がないようですので、本当に手短に」


 そこで少し間をおいてから、ライラノーラは再び口を開いた。

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