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15章 邂逅  02

 翌日の昼、馬車はオーズの首都ガルオーズに到着した。


 まずは以前泊まっていた高級宿へと直行する。大巫女様の計らいでオーズにいる間はそちらの宿をずっと使えるらしい。


 その日の午後は宿で身体を休めることにした。抱きついて離れないフレイニルの相手をしてやりながらボーっとしていると、オーズの行政府である『精霊大社』に行っていたシズナが戻って来た。


「大巫女様が褒賞の儀を5日後に行いたいとのことじゃ。問題はないかえ?」


「俺は問題ないが、大巫女様の方こそ大丈夫なのか? 街の復興もまだ進んでないだろう?」


「それが意外とそうでもないのじゃ。ソウシ殿が瓦礫の大半を運んでしまったからのう。破壊された街の整備は順調に進んでおる」


「ああなるほど、確かに瓦礫がなくなったのは大きいか。エルフの奥里にも早く向かいたいところだし、早いのは助かるな。ああでもその前にここのCクラスも潜っておかないといけないんだな」


 俺の言葉に横になっていたラーニが尻尾を立てて反応した。


「あ~早くみんなでダンジョン行きたい。Cクラスって20階だっけ? 2日で行けないかな?」


「かなりの強行軍だが不可能ではないんじゃないか? ラーガンツ侯爵の領都のCクラスは15階だったが1日で踏破できたしな」


「それってソウシ一人の方が早いってこと?」


「俺一人だとザコも少ないからな。相性のいいモンスターしかいなかったのもある」


「そうか、私がいないとそうなるのか~」


「正直ラーニがいないと物足りないんだよ。あの数に慣れてしまったから」


「それって相当麻痺しているよねっ」


 と言いつつ嬉しそうに笑うラーニ。真面目な話、彼女の『疫病神』スキルは『ソールの導き』には不可欠である。強くなるにも金を稼ぐにも非常に有用なのだ。


「ああそうだ、侯爵領のダンジョンといえばフレイが使うのに丁度いい杖が宝箱から出たんだ」


 俺はBクラスダンジョンで手に入れた『聖女の祈り』を『アイテムボックス』から出してフレイニルに渡した。


 さすがにフレイニルも俺の腕を放し、銀の輝きを放つ杖を両手で持って眺めはじめる。


「ありがとうございますソウシさま。この杖は……すばらしい力を感じます。見た目もとても美しいですし……」


「えっ、すごいキレイな杖! しかもその先についてるのは天使? いかにもフレイにぴったりって感じね」


 ラーニも飛び起きて杖を見始めると、スフェーニアとマリアネ、そしてシズナも近づいてきた。

 

 マリアネが目を凝らしているのは『鑑定』をしているのだろう。


「『聖女の祈り』……名前付きの武器です。しかも『聖属性魔法+2』『命属性魔法+2』『聖気+2』『命気+2』の複数魔法効果を持っています。国宝級の逸品ですね」


「それはまた大したものじゃな。ソウシ殿にかかるとこのようなものも簡単に手に入るというのは、面白くも恐ろしい話じゃのう」


 シズナが感心したように言うと、フレイニルが俺の方を不安そうに見てきた。


「ソウシさま、とても嬉しいのですが、これほどのものを私がいただいてよろしいのでしょうか?」


「もちろんだ。手に入れた瞬間フレイ用だと思ったくらいだからな。フレイがもらってくれないと困る」


「ソウシさま……はい、嬉しいです。大切に使いますね」


 頬を赤らめて杖を大事そうに抱きしめるフレイニル。どうやら思った通り気に入ってくれたようだ。


「まあ私はミスリルソードがあるからいいけど、でもなにか新しいアクセサリーとかは欲しいかな~」


「私は弓も短杖も物足りなくなってきたので、そろそろ強力なものに替えたいですね」


「そういえば私のショートソードもそろそろ替え時かもしれません」


「わらわはこの間『剛力の杖』をもらったしのう。ランクが上がってからのお楽しみに取っておくのじゃ」


 他の4人の言いたいことは分かるのだが、こればかりは完全に運だからな。


 とはいえ不公平感については気をつけたいところであるし、今後は『強奪』もフル活用して積極的にアイテム獲得をしないといけないだろう。




 翌日、俺たちはまず冒険者ギルドへと向かった。


 まずは『異界』についてと、メカリナンであったことを詳細にギルドに報告しなければならないからだ。


 とはいえマリアネとオーズ支部のギルドマスター相手に一通りの情報を伝えれば俺はお役御免である。マリアネはギルドに残ってグランドマスターへ報告、俺たちはそのまま街へと繰り出し食材を買い込んだ。


 食料はもちろん明日Cクラスダンジョンに行くためである。1泊の強行軍の予定だが、一応3泊分の食料は買い込んでおく。


 宿に戻る道すがら、前を歩くラーニがふと思い出したように俺の方を振り向いた。


「あ、そうそう。カルマが世話になったねって言ってたよ。ソウシみたいに強い男は見たことないって」


 カルマはBランクパーティ『酔虎』のリーダーで、虎獣人の金髪美女である。


「そういえばギルドにはいなかったな。カルマたちはオーズを出たのか?」


「うん、一昨日かな、ソウシから戻るって連絡があったあとすぐにヴァーミリアン国の方に戻っていったわ」


「そうか。彼女らも強いパーティだったな。またどこかで会えるといいな」


「それがね、なんかカルマ以外の3人はそろそろ自分達の故郷に戻りたいって言ってるんだって。この間『悪魔』と戦って皆心配になったみたい」


「ああ……確かにあんなのが現れるなんて話になったら心配にもなるな。獣人族の里は大丈夫なのか?」


「いざとなったら全員で逃げだすから大丈夫かな。冒険者もいなくはないしね」


「そうか」


 そんな話をしつつその翌日。


 俺たちはフルメンバーでCクラスダンジョンへと向かった。


 俺としては10日以上間をあけてのパーティ行動となるが、皆と歩いているだけで自分のいるべきところに戻ってきたという感がある。


 それを考えると、昨日聞いたカルマのパーティ解散は辛いものがあるだろうと思われた。


 首都ガルオーズのCクラスダンジョン入り口は、草原のただ中にポツンと開いた地下への穴であった。坂道を下っていくと土壁の迷宮が俺たちを迎えてくれる。


「ソウシさまがいらっしゃるとすごく安心します。この杖もいただきましたし、今まで以上にお役に立てるよう頑張りますね」


 夜はまだ俺にしがみついて寝ているフレイニルだが、ダンジョンでは頼もしい。


「やっぱりソウシがいると力がみなぎる感じがする」


「身体も軽くなるような気がします。集中力が高まるのも分かりますし、やはりソウシさんの力はすごいですね」


 嬉しそうなラーニとスフェーニアの言葉にシズナとマリアネも同調する。


「わらわも強くなったと思っていたのじゃが、ソウシ殿の力によるところが大きかったようじゃ。そのあたりは常に気にしておかないといかんかも知れんのう」


「そうですね。それに心なしか『将の器』の効果が強まっているような気がします。もしやスキルレベルが上がったのでは?」


「どうだろうか。俺としては実感がないが、補正効果が強まっているならレベルが上がった可能性はありそうだな。メカリナンでは多数のパーティを率いることもあったし、それで上がったのかもしれない」


 俺がそう答えると、ラーニが思いついたように言った。


「それならまた新しく仲間を増やしてみればいいんじゃない? 『将の器』ってレベルが上がると仲間が増やせるようになるんでしょ?」


「パーティに入ってくれる人間がいればな。ただ誰でもいいというわけでもないからな……」


 新規メンバーを入れるにしても、まずは『ソールの導き』の「強くなるために労力を惜しまない」というブラックさについてこられることが最低条件となるだろう。


 その上見目麗しい女性が多いパーティでトラブルを起こさない人間であることも重要になる。そう考えると新たな仲間が簡単には見つかるとも思えない。


「そのあたりはソウシ殿ならばたやすく見つける気もするがのう。ともあれ今日はダンジョンに集中するほうがよいと思うぞえ」


 シズナの言うことも前半はともかく後半はその通りである。まずはこのCクラスダンジョンでパーティ戦の勘を取り戻さなくてはな。

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