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12章 王都にて  13

 クラスレスダンジョンというのは、情報が足りないため冒険者ギルドがクラス認定できないダンジョンを指す。


 ハーシヴィル青年によると地下5階まではAクラス下位相当ということで、5階にいるボスもAランク下位の『ケルベロス』らしい。


 『王家の礎』は、大理石に似た石で通路が形作られていて、ハイクラスな雰囲気のあるダンジョンであった。とはいえ通路を歩いていくと普通のダンジョンのように分岐が現れる。言われた通りハーシヴィル青年に順路を聞いてさらに進むと『気配感知』に反応。


 相手は3体、『オーガアデプト』という大剣を携えた上半身裸の大鬼である。剣技に優れ、並のAランク冒険者だと1対1ではキツいモンスターらしい。


「フフ……最初だから一匹減らしておくわね」


 そう言うとメルドーザ女史が火属性魔法『フレイムボルト』を放つ。当然のように『先制』スキル持ちな上に、飛んで行く炎の矢も20本くらいある。


 まだ遠くで様子を見ていた『オーガアデプト』一体が火だるまになって倒れた。それを合図に2体が唸りをあげて突っ込んでくる。途中で加速したのは『疾駆』スキルか。


 前衛の俺はメイスを横に()いだ。もちろん『衝撃波』付きだ。2体の『オーガアデプト』はカウンター気味に衝撃波の壁に打たれ、全身をひしゃげさせて吹き飛んだ。残念ながら即死だろう。


「いやいや、今のは『衝撃波』ですか。そのメイスを振るだけでも恐ろしいですが、Aランクモンスターを一撃で2体とは……早速いいものを見せてもらいました」


「これじゃワタシの援護は必要ないかしらね、フフ……」 


 さすが元Aランク冒険者にして王国親衛騎士第3位と第4位、この程度では驚かないようだ。


 その後も『オーガアデプト』が次々と出てくるが、同時出現数は3~4体が相場のようだった。いつも当たり前のように15体以上を相手にしているのでちょっと物足りない気がしてしまう。


 『疾駆』の他に斬撃を飛ばすスキルも使ってくるのだが、基本『衝撃波』で片がつく。一度切り結んでみたが、『達人(アデプト)』という名のわりに剣の軌道が丸わかりで相手にならなかった。やはりザイカル戦で体感時間を伸ばすスキルが身についている気がする。


 30分ほどで地下2階への階段にたどり着く。なんとなく進んできてしまったが、Aクラスダンジョンでもそこまで難度が高いとは思えない。これはやはり俺が異常なんだろうなと思いつつそのまま2階へ下りる。


 地下2階は『オーガアデプト』の出現数が5~6体に増えた。


 といっても特に問題はない。『誘引』スキルでこちらに引き寄せた後、『翻身(ほんしん)』を活用した連続『衝撃波』で終わりである。というかこの組み合わせは相当にズルい気がする。


「なるほど、『誘引』を使って引き付けての一網打尽。戦法としては一般的ですが、それをAランクモンスター相手に行うというのはすさまじいですね」


「あの膂力(りょりょく)で高レベルの『翻身』持ちはAランクでもほとんどいないんじゃないかしら。さすが『トワイライトスレイヤー』ね」


 と、後をついてくる二人もそこは気にしているようだ。


 魔石と素材の大剣を『アイテムボックス』に放り込みながら30分ほどで地下3階への階段までたどりつく。


「このまま進みたいと思いますがお二人は特に問題ありませんか?」


「ええ、特になにもしていませんし……。ソウシ殿こそ大丈夫なのですか?」


 ハーシヴィル青年が少し呆れ顔で言う。さすがにAクラスダンジョンを簡単に進みすぎている感は俺にもなくはない。まあ近接物理属性のモンスターと相性がよすぎるというのもあるのだが。


「体力には自信がありますので。では進みましょう」


 地下3階からは出てくるのは小型のゾウほどの大きさのイノシシ型モンスター『ティタノボア』だ。全身が金属の剛毛に覆われていて物理耐性も魔法耐性も高く、しかも得意技の『疾駆』スキル付き突進が下手な小細工を許さない難敵らしい。


 ただまあ俺にとっては最高に相性がいいタイプなので……、


「フフフッ……『ティタノボア』が一撃で粉々って、ワタシ夢でも見ているのかしらね」


「いえ、私も見てるから現実ですよ。陛下や宰相閣下には申し訳ないけど、これは報告してもあまり意味がないかもしれないね」


 という感じになってしまう。


 なお素材は高級豚肉で上級貴族しか食べられない逸品だそうだ。ラーニにはいい土産になるだろう。


 地下4階も『ティタノボア』の出現数が増えるだけなので、『アイテムボックス』の高級豚肉が量を増すだけである。


 俺が10キロくらいの肉の塊をぽいぽいと『アイテムボックス』に放り込んでいると、ハーシヴィル青年が眉を寄せながら近づいて来る。


「ソウシ殿、『アイテムボックス』に相当な量の素材を入れていると思うのですが大丈夫なのですか?」


「ええこれくらいは。体力には自信がありますので」


 と言ったが、実はAランクダンジョンということでいつも入れている荷物を出してきていたりする。そういえば身体が軽いのはそのせいか。本来の力を忘れてしまうな。


 さて地下5階である。


 ここからはDクラスダンジョンでボスであった『スモールドラゴン』が出現する。もちろんそのため通路は縦横に30メートルほどあり、一直線にボス部屋まで続いている。


 少し歩くと黒い靄が集まってきて、全長15メートルほどのドラゴンが姿を現した。以前戦った『ダークフレアドラゴン』ほどの威容はないが、それでもドラゴンだと主張するに足る威圧感は備えている。しかも単体ではなく2匹同時に出現したので広い通路が一気に狭くなる。


「メルドーザ卿、すみませんが飛んでしまったら羽を攻撃して落としてもらえますか」


「承知しましたわ。久しぶりに出番があるのかしら」


「ソウシ殿、私も飛行したドラゴンを落とせますよ」


 ハーシヴィル青年もそう言って槍を持ち上げた。遠距離攻撃用のスキルを持っているということだろう。


「ではハーシヴィル卿もお願いします」


「承りました」


 俺が前に出ると、一匹は空を飛び、一匹は首を後ろに反らしてブレスの体勢を取った。


 空を飛んだ『スモールドラゴン』には瞬時に火の矢が刺さり、さらにミスリルの槍が首元を貫いた。槍はそのままUターンしてハーシヴィル青年の方に戻っていったのだが、すごいスキルもあったものだ。


 もう一体がブレスを吐く。炎のブレスだったが『ダークフレアドラゴン』のそれとは比べるべくもない。数発の『衝撃波』で相殺し、俺はそのまま突進して足を一撃、崩れ落ちてきた頭をメイスで爆散させた。


 落ちた一体はすでに虫の息だった。やはり頭にメイスを振り下ろし楽にしてやる。


 素材は龍の鱗で、残念ながらこれも『ダークフレアドラゴン』のものと比べると数等見劣りする。それでもいい値はつくらしいが。


「『衝撃波』でブレスを防ぎきるのは初めて見ました。大抵は途中で息切れするものですが」


「普通はどうやって対処するものなんでしょう」


「メルドーザなら魔法で相殺できますね。それができなければ移動して避けるのが基本です」


 俺の質問が変だったからか、苦笑いをしながらハーシヴィル青年が答えてくれた。


 俺は最初に相殺するのを覚えてしまったが、確かに普通は避けるところから始めるはずだ。


 まあともかく『スモールドラゴン』を10匹ほど倒しながら進んでいくと、大きな扉の前に到着した。さて、下位とはいえいよいよAランクのボスである。しかも今回はフレイニルの『後光』の援護がない。多少不安もあるが、供をしてくれている二人の反応からするといけるはずだ。


「ボス部屋に入りたいと思いますが、お二人とも問題ありませんか?」


「私は行けます」


「ワタシも大丈夫よ」


「では参りましょう」


 2人に頷いて、俺はボス部屋の扉を開いた。

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