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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第五章 悪役令嬢は絡まれたくない
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モーガン先生の意図

 クリフはまだ土下座しているノエルを抱える様に、無理やり引き起こすと、ソファに投げる様に座らせた。


 「少し頭を冷やせ。いつまでもそうやってたら、返ってアリアナ嬢を困らせるだろ」


 ノエルはしゅんとして俯いたまま、大人しくソファに座った。


 その間に私達は、笑顔のまま青筋を立てているクラークに、今までの経緯をかいつまんで説明した。


 「という訳で、お兄様が入って来た時、ちょうどノエル様の精神魔術が解けた時だったのです!」


 「ふうん成程・・・だけど、どうしてディーンがアリアナに詰め寄っていたんだい?」


 兄はディーンに笑みを向けながらも、ピリッとした空気をまとわせていた。


 「・・・すみません」


 ディーンは恥ずかしそうに顔を赤くして頭を下げた。


 先程のディーンの行動の意味は分からなかったけど、彼が凄く落ち込んでいる様に見えたので、私は慌てて話を変えた。


 「そんな事よりも、お兄様。禁忌とされている精神魔術が学園内で横行してるんですよ。何とかしないといけないでしょう?」


 「あ、ああ、そうだな・・・しかし、まさか精神魔術の話が、ここでも出るとは思わなかったよ・・・」


 「・・・どういう事ですか?」


 「詳しい事は言えないが、最近王宮内で、精神魔術を使用したと思われる犯罪が発覚したそうだ」


 「えっ!」


 「今朝はその話で、トラヴィス殿下に呼ばれていたんだよ」


 クラークの言葉に私達は顔を見合わせた。


 「魔術をかけた犯人は分かっていない・・・が、君達の話を聞く限り、モーガン先生の事は調べてみた方が良さそうだな」


 クラークは重々しくそう言った。


 「王宮で精神魔術をかけられた者は二名。今は王宮内の牢で拘束されている。トラヴィス殿下はリリー嬢とマーリン嬢に、精神魔術の解術の依頼をするつもりなんだ。今この国で光の魔力を持つのは、二人とエメライン王女だけだからね。だけど、君達が言う様にマーリン嬢も精神魔術をかけられているとなると・・・」


 「マーリン嬢は光の魔力を持ちますが、魔力量はあまり強くないようです。どちらにせよ、解術には向かないでしょう」


 ディーンがそう言った。


 「ふ~ん、さすがマーリン嬢と友達だったから詳しいね」


 揶揄する様に言ったパーシヴァルを、ディーンがジロリと睨む。なんだか空気が怪しくなったので、私は慌てて皆に問いかけた。 


 「マ、マーリンさんは一体どこで、精神魔術にかけられたのでしょうか?」


 すると、おずおずとリリーが手を上げた。


 「あの・・・私、それについて心当たりが有ります」


 「え?そうなんですか?」 


 「はい。実は、マーリンさんに補講の時に誘われたのですが、彼女はモーガン先生の淑女クラブに入っているのです」


 「淑女クラブ!?」


 私達は思わず、聞き返してしまった。


 (なんじゃ、そのネーミング!?。微妙にいかがわしく聞こえるのは、私だけ?)


 どっかのキャバクラの名前みたい。


 「貴族の女性のたしなみとして、お茶会を通じて礼儀作法や、会話の仕方などを教えて下さるそうです。学年関係なく、数名の女生徒が参加しているそうです」


 クリフが合点がいったように、「成程それだな」と言った。


 「恐らくエルドラ嬢を含め、ダンスパーティでアリアナ嬢に絡んできた女生徒達は、そのクラブに所属しているんじゃないか?」


 クリフの言う通りだと私も思った。


 (と言う事は、そのクラブに入ってる人は、全員なんらかの精神魔術をかけられてると思った方がいいよな・・・これは、思ってたより規模が大きいかも・・・)


 だけど一体、モーガン先生は何を企んでるのだろう?


 クラークは頷きながら、


「即刻トラヴィス殿下や先生方とも相談して、モーガン先生の調査をするように言いうよ。これ以上被害が広がらない様にしないとな・・・。既に術下にある者に対しては、大変だろうけどリリー嬢に、一人ずつ解術して貰うしか無さそうだ」


 そう言って、申し訳なさそうな顔をリリーに向けた。


 「私は大丈夫です。私の魔力が皆様のお役に立てるのなら、こんなに嬉しい事は無いです」


 笑顔でそう言い切ったリリーに、私の胸は震えた。


 (さ、さすがヒロイン!なんて尊い~!)


 私は彼女の神々しさに打たれ、無意識に拝むように手を合わせた。リリーの美しい横顔を見ながら、うっとりと余韻に浸っていると、


 「ただ、私は良いのですが、トラヴィス殿下は、どうしてエメライン王女に解術を頼まないのでしょう?」


 リリーが不思議そうに尋ねた。


 エメラインはトラヴィスの婚約者。本当なら、わざわざリリーやマーリンに依頼などしなくても、エメラインに頼めば良い。


 だけどリリーの問いに、兄は気まずそうに顔をしかめ、ミリアとジョー、そしてレティもげんなりした表情で顔を見合わせていた。


 「エメライン王女にお願いするのは、無理でしょうね」


 ミリアが片手を振りながらそう言った。


 「気楽に頼み事を出来る様な方ではありませんもの。気位が高すぎて、王族や皇族以外は虫けらの様に思ってらっしゃる方ですから」


 (おお・・・!それは完全にゲームの設定と同じだ!)


 ゲーム中のエメラインはヒロイン虐めに、気持ちの良いほどの悪役を演じてくれる。トラヴィスルートでは嫉妬に狂って、それ以外のルートでは聖女の位を争って、それはそれは見事に暗躍してくれるのだが・・・。


 (平民出のヒロインの事なんて、人とも思って無いっていうか・・・。自分の取り巻きの事も、便利な道具としか思ってなさそうだったよなぁ。でもってアリアナと違って、頭が良くて魔力も強いから、かなり手ごわいんだよね・・・)


 そう考えて、私は一つ疑問に思っていた事を思い出した。


 「でもエメライン王女も、一緒に聖女の修行をされているんですよね?補講ではどういう様子なのですか?」


 そう聞くとリリーは困ったように眉を寄せて、首を傾げた。


 「エメライン様は、補講にはいらっしゃっていないのです・・・」


 「ええっ?だって、補講は聖女になる為には必須なんですよね?」


 「エメライン様は4年生ですから、今までにも勉強なさってるそうで・・・だから、補講は必要無いと聞きましたけど・・・」


 「違うわよ」


 リリーの言葉に対し、ミリアが口を挟んだ。


 「身分の低いものと、一緒に補講を受けたく無いって言ってたわ。それに修行なんてしなくても、自分が聖女に選ばれるって思ってるみたいだから、きっと今までも何もしてないわよ」


 (そっか・・・だから昼休みも、優雅にお茶会していられるわけだ)


 「聖女の選定は、魔力の強さや家柄で決まるものでは無い。人間性や教養なども重要な基準となる。エメライン王女はいずれ後悔する事となるだろうよ」


 クラークは確信を込めてそう言った。


 「では、やはりリリーが適任ですね。ノエル様の解術も成功しましたし、魔力の強さも文句なしですもの」


 私の言葉にクラークは力強く頷いた。そして怪訝そうな表情で、


 「しかし、どうしてマーリン嬢やノエル。それに・・・エルドラ嬢だったか?・・・に精神魔術をかけてまで、アリアナを苦しめようとするのだろう?目的は何なんだ」


 「そうですよねぇ。王宮の事件に比べたら、すごく些細な事ですし・・・。第一に当人の私が全くダメージを受けてませんもの。意図が分かりません」


 ハッキリそう言った私に、皆が目を丸くした。


 (ん?何か変な事を言ったかな?)

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