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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第五章 悪役令嬢は絡まれたくない
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疑惑

 ノエルとも合流してから私達は、急いで図書館に移動した。なぜなら補習で残されたというグローシアとノエルに、大量の宿題を出されていたからだ。


 「初日から補習って、あるのですか!?」


 「そうだよね!?無い筈だよね!?」


 とノエルが涙目で答えた。


 「それに僕とグローシア嬢だけなんだよ。おかしくない!?」


 「えっと、何があったのか詳しく教えて頂けますか?」


 話を聞くと今日の授業が終わった時、担任がもう一人の若い女性の先生と共にやってきたそうだ。そしていきなり二人に、残って補習を受ける様に言ったらしい。


 「ちょ、ちょっと待ってください。そのもう一人の先生って誰なのですか?」


 「名前は聞かなかったけど、黒髪の美人の先生だったよ。とてもスタイルの良い方でさ・・・」


 ノエルが思い出す様に頬を染めてそう言うと、グローシアが軽蔑したような目線を彼に送った。でも私は彼らのそんな様子を、気にかけてなんかいられなかった。


 (モーガン先生だ・・・)


 何故・・・?どうしてモーガン先生が二人に絡んでくるの?


 「それで、そのもう一人の先生が補習を見てくれたのですか?」


 「いえ、その先生はすぐに帰りました。わたくしは、担任の先生に初日から補習などおかしいと抗議したのですが・・・」


 「担任の先生は絶対やらなきゃいけないって言って、1時間みっちりだよ!おまけにこの宿題の量見てよ。来週までにやれって言うんだ!」


 無理だよ~っと叫びながら、ノエルがカバンから出したプリントは、とても1週間で出来る量では無かった。グローシアは涙ぐんでいるノエルを横目でチラッと見ると、


 「・・・宿題を貰う時、少し様子が変でした」


 そう言って首を傾げた。


 「担任の先生ですが、少し目の焦点が合って無かったような気がしました」


 「えっ?」


 「わたくしは、家にいた頃から騎士のたしなみとして、怪しい者の気配を探る訓練を受けています。担任はいつもと違う様子に見受けられました。なんだか・・・上手く言えませんが、操り人形を見ている様な気がしたのです」


 どうしてグローシアがそんな訓練を受けていたかという事は、とりあえず置いといて・・・


 (それって、もろに精神魔術の影響なんじゃ・・・)


 いやいや先走っちゃいかんと思いつつも、モーガン先生に対する疑いの気持ちが増していく。


 「明日からもずっと補習を受けるように言われました。そんなの絶対に受け入れられません!だって放課後にアリアナ様とお会いできなくなるでは無いですか。だから、わたくしは途中で逃げてきたのです!」


 グローシアは片手を握りながら胸を張った。


 「はい?」


 (逃げて来たって?)


 「本当は補習は2時間だったんだよ~。でも1時間経って担任がトイレに行った時に、グローシアが荷物まとめて教室を飛び出したから、僕も追いかけて来たんだ」


 (・・・それは大丈夫なのか?)


 「え~っと、ちょっと整理させて下さいね。ノエル様とグローシアは、いきなり理不尽な補習と宿題を課せられたと。その時もう一人女性の先生がいた。そして担任の先生は様子がおかしかったと?」


 「はい、担任は頭が狂ったのだと思います。狂った者の言う事など、聞く必要は無いと思います」


 グローシアは、キリっとした風情で言い切った。


 (担任・・・可哀そうに)


 でも確かに担任の先生が二人に対してやってることは、少し異常だ。


 でも仮に先生が精神魔術で操られたとして、こんな事をする目的が分からない。二人を拘束して、何のメリットがある?。


 (かといって、放っておけないしなぁ・・・)


 「二人とも申し訳ないのですが、お願いがあるのです。」


 「何だい?」


 「アリアナ様の願いでしたら、なんなりと!」


 「あ、ありがとう・・・。その補習なのですが、明日からしばらく、ちゃんと受けてみてくれませんか?」


 「ええ~!?」


 ノエルが悲鳴をあげて顔を引きつらせた。


 「どうせ明日からは、逃げる隙も与えてくれないと思いますよ。その時に女性の先生・・・多分モーガン先生だと思うのですが・・・その先生がいつも来るのか確認して欲しいのです。それと担任の先生の様子も観察して欲しいのです」


 私がそう言うと、グローシアの凛々しい顔がさらに引き締まった。


 「アリアナ様には何かお考えがあるのですね。承知いたしました。このグローシア、命に代えてもアリアナ様のご命令を遂行いたします!」


 「い、命は代えなくていいから、お願いね。それで次の日曜日の朝、二人とも私の寮に集まって貰えるかしら?みんなにも来て貰って相談しましょう」


 「アリアナ嬢の部屋ならいつでも行くよ!お茶は美味しいしお菓子はいっぱいだし。わぁ、楽しみだなぁ!」


 とノエルは急に元気になった。


 「では宿題のプリントをさっさと片付けちゃいましょう!私が全部解いていくので、二人はどんどん写してください」


 「よ、よろしいのですか!?」


 「アリアナ嬢!ありがとう!!」


 二人の顔がパーッと輝く。


 いやいや本当なら、宿題を写させるなんて良くない事なんだけどさ。


 (非常事態ということで・・・。だってこの二人じゃ、今週中になんて絶対に終わらないよ)


 日曜日なら忙しい皆も予定が空いているだろう。クリフと話した事も含めて、話し合ってみよう。

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