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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第四章 悪役令嬢は目を付けられたくない
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でこぼこ

 ホールでは生徒達がたくさん踊っている。しかしながら、ざっと見回しても私とディーンの様な身長差コンビは居ない・・・。


 (1曲踊ったら、とっとと退散しよう・・・)


 新しい曲が流れ始めた。ディーンは私の歩幅に合わせる様にきっちりとリードしてくれているけど、やりにくいだろうなぁ・・・。


 「すみません、私の身長が低いせいでディーン様は踊りにくいですよね?」


 「別に、問題ないよ。・・・ステップが上手いね」


 「本当ですか!?良かったです!一カ月前から兄に付き合って貰って、沢山練習したんです」


 ホッとしながらそう言うと、ディーンはくすりと笑った。


 (うっ!)


 この距離で、しかも見上げる恰好でイケメンに上から微笑まれる・・・。これは中々の攻撃力だった。


 (ま、まぶし・・・!油断してた・・・)


 ステップを踏み間違えそうになるのを慌てて立て直す。


 (あ、あんまり顔見ないようにしようっと・・・あっ、でもダンスの時にそれも変かな?)


 クルクルとターンしながら私はぐるぐる考えていた。


 (黙っているのも気まずいな・・・なんか良い話題ないかな?)


 そう言えば、と私は一つ思い出した事があった。


 「あの、ディーン様?」


 「ん?」


 「クリフ様は大丈夫なのでしょうか?先ほどディーン様が何処かへ連れて行かれましたが・・・」


 「ああ、そうだね。・・・クリフが心配?」


 「はい。多分ですが『お金目的で私と友人になった』なんて言われたので、腹が立ったのでしょう。いつもと様子が違いましたもの」


 「うん・・・でも彼は自分が悪く言われた事で、怒ったのではないと思うよ」


 「え?そうなのですか?」


 (じゃ、なんであんなに怒ってたんだ?)


 「ああ・・・。でも、きっと大丈夫だよ。さっき頭を冷やしてくると言って、中庭の方へ出て行ったから。そろそろ落ち着いてる頃だと思う」


 「そうですか。良かったです」


 少しホッとした。


 私達はまたクルリとターンする。


 こんな背の低い私と踊ってたら、猫背になってしまわないだろうか?そんな事を考えていたら曲が終わった。


 (やっと終わったぁ)


 やれやれと言う気持ちで壁際に戻ろうとしたのだが、私の手を掴んだディーンが動かない。


 (ん?)


 「ディーン様?」


 「もう一曲踊ろう」


 「えっ?」


 直ぐに次の曲が始まり、そのまま私をリードし始めた。


 (ちょ、ちょっと!)


 周りを見ると、曲が終わったらすかさずディーンを誘おうとしていた令嬢達が、私を睨みつけている。


 「あ、あの、ディーン様!?」


 「私達は婚約者同士だ。続けて踊っても、おかしくはないだろ?」


 (それは、そうかもしれないけどぉ・・・)


 仕方なく私はまたステップを踏み始める。だけど、どこからか聞こえてくる声が耳に入ってくるのだ。


 「あの方、ディーン様を離さないつもりよ」

 「なんだか随分、でこぼこなカップルですこと」

 「大人が子供にダンスを教えてるみたい」

 「エルドラさん達の話も、あながち嘘じゃ無いんじゃない?」


 (成程ねぇ・・・。文句を言いたいのは、エルドラ達だけじゃないってことか。ディーンの婚約者ってだけで、私は結構な反感をかってるわけだ)


 私は私の手を取るディーンを見上げた。さらっさらのシルバーブロンドに吸い込まれそうな濃い藍色の瞳。まるで絵画から抜け出てきたような、整った容姿だ。


 (そりゃ、こんだけスペック高い人だもんねぇ。その相手がこんなつるぺたのチビじゃ、当然釣り合わないって思うわな)


 ・・・なんだか自分で考えた事なのに、ちょっと傷ついた・・・。


 (でもさっ、こんな人に釣り合う人なんて、そうそう居ないと思うわけよ。そんなのリリーぐらいだって!)


 そもそもゲームの攻略者達なんて、ヒロインにこそふさわしいのだよ。だって、そう言う設定なんだもん。


 (そう言えばゲームの中で、ディーンとリリーが踊るイラストがあったっけなぁ)


 それはまさにこのダンスパーティでの場面。ディーンがアリアナを断罪した後に見られる、第一部の一番盛り上がるシーンだ。


 (ん?・・・て事はさ・・・うわぁ!これ生で見れたら、凄いんじゃない!?)


 想像するとぞくぞくしてきた。ゲームファンとしては見逃せないぞ!私は思わずディーンに尋ねた。


 「あの!ディーン様。先ほどリリーを見ましたよね!?」


 「え?ああ」


 「どう思いました?」


 ディーンが怪訝そうな顔をする。


 「どうって・・・」


 「綺麗だと思いませんでした!?」


 「え?・・・まぁ、思ったけど」


 「ですよね!?」


 私はここぞとばかりに提案してみる。


 「あの、この後で、リリーと踊りませんか?」


 「・・・どうして?」


 「どうしてって、お二人が踊ると凄く素敵じゃないですかぁ!」


 「・・・」


 「お似合いだと思うのです。きっと絵の様に素晴らしいと思いますわ」


 (いやいやイラストなんて超える美しさに違いない!)


 興奮で多分キラキラ(もしかしたらギラギラ)した目を向けていたであろう私に、ディーンは思いっきり眉根を寄せた。


 (んっ?)


 「ディーン様、どうしました?」


 「君って、たまに残酷な事言うよね」


 「え!?私、何か良くなかったですか?」


 そう聞いた私に、ディーンはダンス前の時と同じように「はぁ~」と深いため息をついた。


 「別に・・・分かっていた事だから良いけど・・・それにしたって・・・」


 と何かぶつぶつ呟いている。 


 (どうしたんだろ?ディーンって時々こんな風に溜息つくんだよね。何か心配事でもあるのかな・・・?)


 そう考えて突然ハッと思いついた。


 (も、もしかして、ディーンてば私の知らない所で、もうすでにリリーに振られちゃってたりするのだろうか?・・・リリー、他に好きな人が居るって言ってたしなぁ。もしそうだったら・・・やばっ!私、ディーンの傷口滅茶苦茶えぐちゃったんじゃない?)


 焦りながら私は、ディーンにどうフォローしたものかと必死で考えた。

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