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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第四章 悪役令嬢は目を付けられたくない
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成長

 終業式が終わると後ろから駆け寄ってくる足音が聞こえた。


 「アリアナ様。最優秀成績者おめでとうございます!」


 目を輝かせたリリーが私の手を握った。


 (あ~可愛い~!)


 こんな特典があるなら、いくらでも勉強を頑張れるよと思い目を細めていると、


 「素晴らしかったですわ。アリアナ様と友人でいられるなんて誇らしいですわ」


 ミリアももう片方の手を握ってまるで自分の事の様に喜んでくれる。


 (両手に花~)


 にやつく頬を押さえている私の目の前に、ピシッと姿勢を伸ばしたグローシアの姿が現れた。


 「壇上で賞状を受け取るアリアナ様のご雄姿、目に焼き付いておりますっ!感無量でっす!」


 そう言って騎士の礼をした後、滂沱の涙を流す。


 「あ、ありがとう、グローシア・・・」


 そしてさすがに「当然じゃ!」とは言えないので「皆と一緒に勉強したおかげです」と優等生らしくそう言っておいた。



 終業式は午前中で終わりだ。


 「ねぇ、お昼はカフェテリアに行かない?今日のランチは特別メニューだそうよ」


 食いしん坊のジョージアの提案で、私達はウキウキ気分で学園のカフェテリアに向かう。だけど同じ考えの人達が大勢いたようで、終業式終わりの生徒達でテーブルはごった返していた。


 しかも私達はディーンやクリフ達の男子組とも途中で合流していたので、大人数だ。


 「困りましたわ。これじゃ離れて座らないと無理ですわね」


 「僕に任せてよ」


 眉を下げるミリアに、パーシヴァルは胸を張ってウィンクした。


 そして私達は第二皇子のご威光で、広めの個室を使わせて貰える事になったのだ。


 「ラッキー!パーシヴァル様って便利ねぇ、助かるわぁ」


 なかなか失礼な言い草だが、ジョージアに悪気は無い。彼女は早速メニューを広げてアレでもないコレでも無いとブツブツ言ってる。


 ミリアはそんなジョージアの肩をペシッと叩くと、


 「パーシヴァル様のおかげでゆっくりと食事ができますわ」


 と如才なく微笑んだ。


 「こういう特権は使わないとね」


 パーシヴァルは飄々とした態度で、ディーンにメニューを渡したり、水を回したりと何かと世話をやいている。


 (う~む、甲斐甲斐しくお世話してるなぁ・・・そう思うのは間違いか、いや・・・)


 第二皇子パーシヴァルの想い人はディーンである。


 この半年間、そういう目でパーシヴァルを観察すると、とにかく彼はディーンに優しかった。しかもさりげないので周りに気付かれにくいし、ディーンにも負担を感じさせない。だけどよ~く見てると、パーシヴァルの行動は全てディーンの為になるように、きっちり方向性が定まっていた。


 (もしパーシヴァルが女性に生まれてたら、身分的にも性格的にもディーンとぴったりだったかもなぁ・・・世の中上手く行かないもんだ)


 私は水を飲みながら、コップ越しに皆をじっくりと眺めた。


 (リリーは相変わらず可愛い。いや可愛い上に美しい。いや美しい以上に神々しい!)


 しかも最近背が伸びで大人っぽさが増した。2年生になるといよいよ聖女候補として、他の二人の候補者と競う事になる。もちろん私は全力で応援するつもりだ。


 (ミリアも少し背が伸びたよね?)


 彼女はしっかりして成績もずっと優秀。小柄でふんわりとした優しそうな外見だが、頭の回転が速くて辛辣なところがギャップで面白い。

 先生方からの信頼も厚くて、情報通。2年生になったら生徒会からのスカウトがあるのでは?と噂されている。


 (ジョーは相変わらずだなぁ)


 明るくて、よく食べ元気いっぱいだ。

 

 でも、そういう彼女が意外と洞察力が鋭い事を私は知っている。もともと背が高かったけどさらに伸びたかな?


 (グローシアもだけどさ、二人ともスラリとして、その辺の男子よりもかっこいいんだよね。レティシアの描いた男装の絵も、凄く売れたって聞いたし)


 レティシアと言えば、最近は何処にいる時でもスケッチブックを持ち歩いている。そして隙あらば、ハンターの様な目で絵を描き始めるのだ。


 どうやら例の『裏の肖像画』の売り上げランキングで、レティシアは学園で2番の人気を誇っているとか。

 「1番人気の方には、全く敵わないのです」と悔しそうにしていたが、描き手は何人もいるそうなので充分凄い。


 (絵の単価はそれ程高くないし、レティシアの絵はかなり書きこまれているから量産出来ないんだよね)


 だけどそこそこのお小遣い稼ぎにはなったようで、ミリアは「そんな事やってるから、勉強がおろそかになるのよ!」と叱りつつ、レティシアの宿題や課題を手伝ってあげていたようだ。


 (でも1番人気の描き手って、いったい誰?それに肖像画の売買って誰がどうやって仕切ってんの?)


 この大きな学園には、色んな謎があるのだ。


 私は次にクリフの方に目を移した。相変わらず見目麗しいが、前よりも少し体つきが男らしくなった気がする。そして前以上にもっとモテる様になったようだ。


 以前の彼は少し退廃的な雰囲気だった(そこが魅力だと言う者もいたが)。だけど今は年相応の男の子の様に、色んな事に興味を持って挑戦しているようだ。そう言う姿は周りから見ても魅力的に映るのだろう。


 (ちょっと天然なんだよねぇ。そこもギャップで女子にはたまらんのだろうな。それにあの美貌ときたら・・・。たまに私でも悩殺されそうになるもんな)


 気を付けなくてはいけない。


 それにクリフと二人で話してたりしたら、周りからの視線が痛い時が多々ある。


 (ちょっと話をしただけで、凄いジットリした目で見られるんだよね)


 的外れのやっかみは困る。クリフは私にとっては大事な友人なんだ。なのに妙な噂は流されるし、たまったもんじゃない。


 (まぁ噂になっても、前みたいに慌てる必要は無くなったけどさ)


 今、私とディーンとの関係は、とっても良好なのである。


 ディーンは相変わらず真面目でお固い性格だが、前よりもずっと話しやすくなった。それに前よりも笑う様になったのだ。


 (よく考えたら、それはお互い様かな?)


 私は一人苦笑する。

 

 (でもさ、こんな風に親しくなってみると、婚約者ってのが結構恥ずかしいんだよなぁ。そんなんじゃ無いのにさ)


 私とディーンはあくまで友人。周りからの婚約者扱いが妙にこそばゆい気持ちになってしまうのだ。


 そんな事を考えながら、私はランチの魚料理を口に放り込んだ。


 うん、美味い!


 「今日のダンスパーティは夕方の6時からでしたよね?」


 「20分前に、寮の門で待ち合わせしましょうよ」


 きゃっきゃと女子達は今夜のダンスパーティの話でもちきりだ。


 会場は中庭に隣接しているから、寮からも遠くない。10分前に行っても充分間に合う。それに別に途中から参加しても良いのだけど・・・


 (待ちきれないんだねぇ、可愛いな)


 気分は娘を見る親の様である。


 しかし、私はそんな悠長な事を考えてはいられなかった。面倒臭いことに婚約者がいる者は、最初のダンスは二人で踊らなくてはいけないという暗黙のルールがあるらしいのだ。


 ここで一つのミッションが生まれる。


 私は誰かとダンスを踊りたい訳じゃないから別に良いのだ。しかしディーンと踊りたがってる女性徒は、雨後の竹の子状態でうじゃうじゃしているだろう。


 (ふむ。パーティが始まったらさくっとディーンと踊って、さっさと離れるぜ!)


 後は美味しい料理でも堪能しよう。


 (そう言えば、夢の中のアリアナも、ダンスホールでディーンを待っていたなぁ。ディーンと早く踊りたいって待ち焦がれてたっけ)


 そういう部分は普通に可愛らしい女の子なのだ。


 (でもリリーのドレスを汚したりするのはサイテーだからね!)


 私は心の中のアリアナにダメ出しした。何だか彼女がシュンとなってる気がして、笑いたくなる。


 「では皆様、後ほどパーティーで!」


 食事を終えて私達はそれぞれ笑顔で寮に戻った。



 ちなみにノエルはこの半年で全く変わっていない。身長も全く伸びてないそうだ。そしてそれは私も同じなのだ・・・あ~あ。

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