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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第三章 悪役令嬢は関わりたくない
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そっちなのかよー!

 私には一つ手札があった。多分、私以外には誰も気づかなかった事。


 (さ~て、対決しますか!)


 馬の上でまっすぐ前を向いたまま、私は彼に話しかけた。


 「わたくしの事をお嫌いなのは分かりました。では、なぜ馬に一緒に乗る事にしたのです?」


 「何?」


 「くじに細工をしていましたよね?わたくしが嫌いでしたら、他の方と乗れば良かったのでは?」


 私はパーシヴァルがわざとこの組み合わせになるように、くじを操っていた事に気付いていた。


 (簡単な仕掛けだ。なぜそんな事するのかは分からなかったけどさ)


 彼はワザと私に最後にくじを引かせた。パーシヴァルは私の前だ。彼はくじを引くふりをして箱に手を入れた時、同じ番号の紙を箱の中に入れたのだ。


 「わざわざ嫌みを言う為にこんな事をしたのですか?」


 私の言葉を聞いて後ろにいるパーシヴァルの雰囲気が少し変わった。


 「・・・化けたと言うか、ほんとに変わったんだな・・・。昔のアリアナ嬢ならそんなに頭は回らなかったよね?事故で頭でも打ってマシになったのか?」


 (口悪いな、こいつ!)


 失礼な言い方だ!だけどまぁ・・・その通りではある。


 (それにしてもさ、外面マックスの八方美人皇子が、私には随分な言い方するじゃない!?ゲームの中じゃあ女と見れば声かけまくって、リリーにも呆れられてたくせに!)


 なんだかイライラしてきた。だって私は、この遠乗りピクニックを楽しみにしていたのだ。グスタフも居なくなって、折角夏休みを楽しめると思ったのに!


 腹の探り合いも面倒くさくなって単刀直入に聞いた。


 「で、目的は何なのです?」


 「何だって・・・?」


 「耳ついてます?目的は何かと聞いてるんですよ。嫌いな私とわざわざ同じ馬に乗った理由を聞かせて頂けますか?」


 パーシヴァルは驚いたようで、しばらく黙っていたがフッと笑って前方を指さした。


 「は?何ですか?」


 「見えるだろ?ディーンとリリーだ」


 「馬に乗ってますね」


 「ああ、・・・お似合いだと思わないか?」


 「思いますけど?」


 即答した私にパーシヴァルは「えっ」と言う声を漏らした。


 「そりゃ思いますよ。まるで物語の主人公達の様です。美男美女で言う事無しです」


 私の言葉にパーシヴァルは呆気に取られたようだった。


 (ふん、アリアナを怒らせようと思ったのか知らないけど、そんな事じゃ私はビクともしないよ)


 だってディーンとリリーの組み合わせに、さっきはよだれ垂らさんばかりにウットリしていたのだ。


 (ふふん!クラーク×リリーを考えてはいるけど、リリーがディーンを好きなら応援だってしちゃうんだよ、私は)


 自慢げに胸を張った私の後ろから、かすかにパーシヴァルの動揺が伝わってきた。


 「・・・だったらっ!」


 (え?)


 いつもへらへらしているパーシヴァルには珍しい、感情が乱れた声を聞いて私は思わず振り向いた。


 パーシヴァルは横を向いて振り向いた私の顔も見ずに眉を寄せていた。


 「だったら、もういい加減、開放してあげてよ・・・」


 「え?」


 「婚約だよ!君が無理やりディーンにさせた」


 「あ・・・」


 奇しくも昨日、もやもやと考えていた内容と同じ事を言われて私は狼狽えた。

慌てて前へと姿勢を戻す。


 (そ、そりゃ・・・私だって解放してあげたいよ・・・)


 昨日と同じもやもやが、心の中に広がっていく。


 「ディーンは君と婚約してからずっと辛そうだった。なのにコールリッジの権力の前に文句をいう事も出来ない」


 (う・・・)


 「学園に入ってから、明らかにディーンはリリーに惹かれていたんだ・・・。なのに、君がいるから・・・」


 (ううっ・・・。)


 私はパーシヴァルの言葉にぐっと胸が苦しくなった。良い訳は出来ない・・・言い訳はできなけど、


 (こっちだって事情があるんじゃい!だいたい、リリーには他に好きな人がいるんだってーの)


 「こ・・・こう言っては何ですが、パーシヴァル様には関係の無い事では・・・?」


 「関係あるよ。僕の親友の事だからね」


 その言い方に少しムッとした。


 (親友、親友って、ちょっと踏み込み過ぎじゃないの?リリーの気持ちだって考えなさいよ!)


 そりゃ、リリーもディーンが好きだって言うのなら、その方が良いに決まってるけどさ・・・。


 「君、邪魔なんだって分かってる?」


 (は?分かってるわい!)


 「昨日、夜にディーンを呼び出してたよね?」


 「えっ?」


 (気づかれてたのか・・・)


 「戻ってきた時、ディーンは難しい顔してた。家の権力振りかざして、またディーンに無理難題でも押し付けたの?」


 「け、権力なんて・・・!」


 (振りかざして無いよね?お願いって言ったし・・・。あれ?でも振りかざした事になるのか・・・?)


 私の後ろにコールリッジ家を感じていたから、ディーンは私の頼みを断れなかったのだろうか?だから嫌々、仲睦まじい婚約者を演じてくれたの?

 そう考えた私は言葉が続かなくなった。


 「僕はさほど力も持っていないただの第二皇子だ。けれどディーンの為なら君と刺し違えても良いと思っている」


 この言葉を聞いて私は何故か違和感を感じた。


 (この人、さっきからディーンの事ばっかり言ってる・・・)


 ゲームのパーシヴァルは、確かにディーンとは友達だけど、リリーを巡るライバルでもあった筈だ。最後にリリーがどちらと結ばれても、お互い祝福する程、仲の良い親友同士ではあったけど・・・。


 (この人は初めからディーンの恋を応援して・・・しかもディーンの為に私と刺し違えても良いって思ってて・・・とにかくディーンの為にって、ディーンの事しか考えて無い・・・)


 そこで、はたっとある考えが浮かんだ。


 (ま、まさかね・・・え?・・・でも)


 あまりに突飛な考えだった。だから私は深く考える事も無く、半分冗談のつもりで振り向いて彼に尋ねてしまったのだ。


 「あなた、もしかしてディーン様の事が好きなのですか?」


 ダイレクトにそう言った私にパーシヴァルは一瞬、虚を突かれたようにぽかんとした。けれど、その顔は見る見る赤く染まり、「あ・・・、う・・・」と何も言えないまま俯いてしまった。


 「え?え?え?」


 (マジで・・・?)


 パーシヴァルは彼のキャラには似つかわしくない程、焦っている。そして私はそれ以上に焦っていた。


 (そっちなのかよぉー!!)


 茹でだこの様に赤くなり、黙って片手で顔を隠している第二皇子に、なんだか居たたまれなくなって急いで再び前を向いた。


 (ど、どういう展開・・・)


 このゲームにBL要素は無かったはずでしょ!?と、私はどう対処して良いか分からずパニック状態だった。

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