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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第三章 悪役令嬢は関わりたくない
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計画

 「アリアナ様、明日は街にお買物に行くのですよね?」


 リリーが隣のベッドから私に尋ねた。


 「え、ええ。私は・・・リ、リガーレ公爵と両親を見送ってから行きますので、みんなで先に行ってて下さい。昼食を予約したレストランで待ち合わせしましょう」


 なんとグスタフは今日この別荘に宿泊している。同じ場所で寝泊まりしていると思うと再び鳥肌が全身に広がった。


 (良かった・・・皆と一緒に寝る事にして・・・)


 一人だと眠れなかったかもしれない。


 「お見送りが終わるまで、わたくしも一緒に残ります!」


 「アリアナ様が一緒で無いと寂しいですわ」


 グローシアとミリアが気遣うように言ってくれて、皆も頷いていたが、


 「いえいえ!直ぐに参りますから、先に行って楽しんでいてください。御者に案内を頼んでますから」


 その方が私には都合が良い・・・と言うか、じゃないと困る!


 グスタフと両親は、明日の昼前に領都へと発つ予定である。


 (よし、気は進まないけど、その時に計画実行よ!)


 気持ちを引き締めていると、周りはすっかり恋バナの続きに花を咲かせていた。


 「ねぇ、結局リリーって誰が好きなの?」


 「わ、私は好きな人など、いませんから・・・」


 「もう、リリーったら、口が堅いわねぇ」


 ミリアは肩をすくめた。


 (うわぁ・・・ディーンだったらマジでゴメン!)


 ゲームとは違って私達はすっかり友達だ。私とディーンが婚約関係にある限り、リリーは遠慮しちゃって言えないだろうなぁ。それを思うと心が痛む。 

 

 レティシアがスケッチブックを畳んでベッドにうつ伏せになり、話しに加わった。


 「ねぇ、ミリアだって皇太子殿下が好きな人って言うのは無理があるわよ?だって殿下にはエメライン様と言う婚約者がいらっしゃるんだもの」


 「良いのよ、単なる憧れなんだから。だってあんなに完璧な方、他にはいらっしゃらないんだもの」


 私はふと不思議に思う事があった。


 「ねぇ、みんな、クリフ様は?クリフ様も凄くハイスペックだと思うのですが、クリフ様を好きな方はいないのですか?」


 「ああ、クリフ様はねぇ・・・」


 リリーと私以外の皆が顔を見合わせている。


 ミリアが首を振りながら言った。


 「クリフ様は、ちょっと美貌が過ぎると言うか・・・」


 レティシアも頷いた。


 「昔からの幼馴染なので言い難いのですが・・・あまり横に立ちたくないのですわ」


 「彼の近くにいると、女としての自信を失うのよねぇ・・・」


 ジョージアはあぐらをかいて腕を組みながら顔をしかめた。


 「クラーク様に近づいて欲しくないです!」


 グローシアまでそんな事を言う。


 (ははーん、なるほどなぁ・・・)


 あまりにも美し過ぎると却って敬遠されるのか。しかも内面には目が行かなくなるという・・・。


 (気の毒に・・・中身は結構男らしいのになぁ)


 「でも、見ている分には目の保養ですわ。肖像画の太客もいますし・・・」


 「クリフ様と並んで見劣りしないのって、学園ではアリアナ様とリリー、エメライン様ぐらいですよ」


 あとは誰か居たかしら?と、ミリアが首をかしげる。私はそれを聞いてちょっと慌てた。


 「リリーは分かるけど、私ではダメでしょ!?」


 「そんな事!」


 皆がそう声を上げたが・・・、


 「だって、私じゃまず背が釣り合わないです!」


 アリアナはとにかくチビなのだ・・・。


 (神セブンは全員、長身だからなぁ。誰が来ても釣り合わないよなぁ・・・あ!)


 「ノエル様となら身長が合うかも・・・?」


 「駄目です!ノエルとなんて、絶対ダメ!」


 何故かミリアが必死で止めた。


 「あんなのアリアナ様に相応しくないです!」


 (ミリア・・・もっとノエルに優しくても・・・)


 ノエルが不憫になってくる。


 「そろそろ、寝ましょうよ。昨日も遅かったし街であくびをしたくないわ」


 ジョーが大あくびしながらベッドに寝っ転がった。


 「そうね。もう寝ましょう。おやすみなさい、みんな」


 私は枕元にある紐を引っ張って明かりを消した。



 次の日、兄のクラークはグスタフと両親に見送れない事を詫びつつ、男子達と一緒に朝から高原の方へ遠乗りに行った。


 女子チームは私を残して街へと馬車に乗って行った。グローシアはぎりぎりまで私と一緒に残るとごねていたが、無理やり馬車に押し込んだ。待ち合わせのレストランは、最近若者の間で評判の店だ。


 アリアナの両親達は出立の準備をしている。グスタフはもう準備を終えたのか、馬車の横できょろきょろとしていた。恐らく私を探しているのだろう。私は恐怖と緊張で身震いをした。


 (さぁ、ここからよ!)


 私は気合を入れ直した。


 「では、お手数ですがよろしくお願いします」


 私は隣にいる彼に小声で言った。


 「ああ」


 そう答えると彼は私に手を差し出し、私はその上に自分の手を重ねる。


 私達二人は見送りの為に玄関の外へと出た。


 「リガーレ公爵、お父様、お母様。道中のご無事をお祈りいたしますわ」


 「ありがとう、アリアナ・・・ん?」


 アリアナの父と母はこちらを向いて少し驚いた顔をし、そして彼に声をかけた。


 「ディーン!君はクラーク達と遠乗りには行かなかったのかい?」


 私はディーンに右手を預けてエスコートをして貰っていた。ディーンは父に礼をしつつ、


 「今朝、少し頭痛がしましたから休む事にしました。それにアリアナを一人にはしたくなかったので・・・」


 そう言って私に顔を向けて甘く微笑んだ。

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