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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第三章 悪役令嬢は関わりたくない
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無駄チート

 地獄の晩餐がやっと終わった後、父は私達をグスタフとの食後のお茶には誘わなかった。


 恐らく食事中の私を見て限界だと思ったのだ。


 (アリアナ父よ、ありがとう・・・)


 名残惜しそうに私を見るグスタフの視線を背中に感じながら、私は皆と2階への階段を登った。そして周りに気付かれない様に、後ろの方でそっとディーンの服を引っ張った。


 ディーンが驚いた顔を私に向けた。何故か彼の頬が少し赤くなっている。


 私は誰にも聞こえない様に小声で素早く言った。


 「すみません、折り入ってお話があるのです。後でお時間を頂けませんか?」


 私の只ならぬ様子を察してくれたのか、ディーンは黙って頷いた。


 「15分後に奥の白檀の部屋で・・・」


 そう告げてから彼を追い抜くと、私はそのまま階段を登った。


         ◇◇◇


 その一時間後、私は女子チームと他愛ないお喋りを楽しんでいた。


 実は女子みんなで寝れるように、使用人に頼んで広い寝室にベッドを6台入れて貰ったのだ。一人ずつ寝室はあったのけれど、こっちの方が絶対楽しい。


 (キャンプみたいだ)

 

 レティシアはベッドの上で会話を聞きながらも、スケッチブックに絵を描き続けている。


 「今日のピクニックは最高でした。神セブン4人のレアなショットが描けましたわ」


 早く仕上げてしまいたいと、興奮しながら鉛筆を動かしていた。


 「レティあなた、昨日は徹夜したんでしょ?今日は早く寝なさいよ」


 ミリアは寝る前に髪を三つ編みにして、今はグローシアの髪も三つ編みにしてあげている。


 (女の子らしいねぇ。癒されるわぁ)


 夏休みに友達とのお泊りなんて初めてだ。


 (前の世界じゃそんな余裕は無かったからなぁ・・・。良きかな、良きかな)


 ふわふわした気分でにやにやしていたら、


 「そう言えば、今日は驚きましたわ。あのグスタフ・リガーレ公爵がいらっしゃるなんて」


 (ふぐっ!)


 何気なく言ったミリアの言葉に、私は息が詰まりそうになった。


 「今をときめく方ですものね。社交界では引く手数多だそうよ!」


 レティシアも鉛筆の手を止めて、会話に加わった。


 (な、な?何なの?グスタフって有名人なの!?)


 どうやら彼はアンファエルン学園を首席で卒業したエリートで、現在魔法省の特級魔術師でもあるらしい。

 20歳そこそこでリガーレ公爵となったグスタフの領では、彼が起こした新しい産業が盛んで、他国との貿易も活発らしい。

 そして、なんと今ではその財力はコールリッジ家にも勝るとも劣らないとの事だった。


 私は心の底からげんなりした。


 (何なの・・・?その無駄なチートぶりは・・・)


 ゲームでは最後にちょろっと出るだけの、名前も無いロリコン親父なのに。


 (まさか私が知らないだけで、グスタフも隠し攻略対象だったりしないわよね!?)


 私はヒロインとグスタフが結ばれる想像をして、絶望感に襲われた。


 (いやだ・・・自分も嫌だけど、ヒロインがグスタフとなんて絶対に嫌だ・・・!)


 「今、お歳は34歳らしいですが、あの方ご結婚なさってないでしょう?沢山の申し込みがあるのに、全てお断りしているそうですよ」


 「誰か心に秘めた方でもいらっしゃるのかしら?例えば・・・もうご結婚してしまったご婦人とか?」


 ミリアがそう言うと、「きゃあ!」「ロマンスね・・・」「小説みたいだわ」と沸いていたが、私だけは引きつった顔で「・・はは」と乾いた笑いを出すしかなかった。


 だけど一つ謎は解けた。


 (なるほどね。アリアナがグスタフ家に嫁ぐことは、コールリッジ家にとっては滅茶苦茶メリットがあるんだ)


 アリアナの父であるコールリッジ公爵は、娘には甘くたいがいの言う事は聞いてくれる。しかしビジネスや、国の政策に対しては甘い人間ではない。

 大した産業も無く、鉱山資源も乏しいディーンのギャロウェイ家とでは、姻戚関係を結んでも特にメリットは無いと考えるのが普通だろう・・・。


 よくよく考えてみると、乙女ゲームの中でもアリアナの父は、ディーンがヒロインに心を寄せてい居る事を知っていた筈である。


 なのにゲーム内でのアリアナ父は、アリアナを溺愛してるにも関わらず、それを見て見ぬ振りした事になる。断罪されたアリアナは、悪役とは言え傷ついただろうに・・・。


 (う~ん、そんなにもアリアナをグスタフに嫁がせたかったのか。それとも、アリアナ父も彼女の我儘な性格をを正したいと思っていたとか・・・?)


 いや、違うな・・・。


 ディーンと無理やり結婚しても、アリアナが幸せになれない事が分かっていたからだ。


 アリアナがあのままの性格なら、ディーンは絶対アリアナを好きにはならない。

そんな二人が結婚してもお互い不幸なだけだ。


 (その点グスタフは、アリアナを愛している事だけは確かで・・・う、うわあっ!)


 全身に鳥肌が立ちました。

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