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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第三章 悪役令嬢は関わりたくない
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生理的に・・・

 アリアナの父はにこやかに笑いかけながら、話しを続ける。


 「グスタフ卿は少々年は離れているが、悪い男ではないよ。仕事は出来るし色んな面で能力も高い。アリアナは覚えてないだろうが、小さい頃から世話になってるんだよ。きっと君を大事にしてくれると思うのだが・・・」


 (すみません!お父様。良い悪いの問題では無いのです)


 「実は・・・随分前から打診はされてたんだよ?。君がディーン君と婚約する前からね」


 (いや、それいつの話よ!?ディーンと婚約したの8歳ぐらいでしょ!?それより前って幼児だよ?幼児に婚約申し込むってその時点でイカれてるでしょ!)


 年の差婚が珍しくない貴族だからなのか、アリアナの父は少しも疑問に思ってないようだ。確かに父と母は一回り年が離れているけど・・・。


 (いやいやその頃グスタフって既にアラサーでしょ!レベルが違うっての!)


 私は声には出せない叫びを心の中で喚き散らした。


 「もう一つ正直に言わせて貰うと、リガーレ家と姻戚関係になるのは我がコールリッジ家にとっても益があることなんだ。ディーン君のギャロウェイ家よりもね」


 (うっ・・・それは知ってる・・・)


 ゲームの設定でもそうだった。アリアナがどうしてもディーンが良いと言ったから、父も母も渋々ディーンのギャロウェイ家に婚約を打診したのだ。そしてコールリッジ家よりも立場の弱いギャロウェイ家からしたら・・・。


 (断れなかったんだろうなぁ・・・)


 確かその頃ディーンには婚約間際の女の子が居たはずだった。それを無理やり引き離したのだ。いまさらながらにディーンが不憫になる。


 「もちろん、君の気持が優先だから無理強いするつもりはないが」


 「ありがとうございます!お父様」


 (あ~、溺愛設定で良かったぁぁぁ!)


 「どうかな?。君の将来の伴侶として、リガーレ公爵の事も候補に入れてあげては・・・?」


 以前のアリアナには父はこんな事は言わない。言っても理解できないからだ。


 (泣いて、暴れて、「ディーンが良いっ!」と言って終わりだろうなぁ)


 アリアナの父はアリアナが変化した事を理解した上で(中身が丸ごと変わったとは思って無いだろうけど)コールリッジ家の駒になる事を提案してきてる。それでいて強制しないところ父のアリアナへの愛情を感じた。

 確かに今の私なら父の言う事が正しいって分かる。でも・・・、


 私は背筋を伸ばし、アリアナの父と真っすぐに目を合わせた。


 「このような言い方をするのは大変申し訳ないとは思うのですが・・・、はっきり言わせて頂きます。私、リガーレ卿は生理的に無理なのですっ!」


 「は?」


 頭の良い父には珍しく、理解が出来なかったようなので、


 「生理的に無理なのです!」


 もう一度、はっきりと言い切ってやった。


 「せ、生理的・・・?」


 「はい、まず彼と会うと冷や汗が出て震えが止まらなくなります。喉は渇き、頭の中には霞がかかり、思考が上手く働かなくなります。要約すると・・・私は彼と結婚すると絶対に幸せになれないのです!。もう絶対無理なのです。どうしても、どうやっても、どう考えても、ありえない程、とにかくぜ~~~~ったい、無理なのです!」


 (あ~息も吸わずに言ったから、酸欠になりそう・・・)


 頭がクラクラしながら息をぜーぜーさせてる私を見て、父はよほどの事と思ったのだろう。少し呆然としつつも「分かった・・・」と言い、それ以上は無理強いしなかった。


 父は場を取り直すように「んんっ」と咳払いし、


 「それからもう一つ、噂を聞いているんだがね。・・・君はウォーレン家の子息とも仲が良いらしいね?」


 「クリフ様ですか?クリフ様はライバルですよ」


 「は・・・?ラ、ライバル?」


 今度は何故か目を丸くしている。


 「はい!学年一位という目標を同じくするライバルです。なかなかの強敵なので大変ですが、私は戦うのを楽しみにしているのです!」


 「そ、そうか・・・。」


 アリアナの父はどう言う訳か頭を抱えてしまった。


 「お父様?」


 (そんな、変な事言ったかな?)


 だけど彼はすぐ顔を上げた。

 「くっくっく・・・分かったよ、アリアナ。リガーレ卿は生理的に合わない。ウォーレン子息はライバル・・・と。私の娘は可愛い上にユニークだ」


 そう言って彼は私にウィンクし、


 「さぁ、もう休みなさい。明日はお友達が沢山来るんだろう?」


 「あっ、はい」


 「君が前よりもずっと元気になって、それに友人が沢山出来て本当にうれしいと思っているんだよ・・・。アリアナ」


 「はい。」


 「本当に良かったと思ってる。それは忘れないでくれ。・・・成長したね」


 父はそう言って、私の頭にふわりと大きな手を乗せた。


 私はなんだか、心がじわじわと温かくなった気がした。そして少し恥ずかしかった。多分これはアリアナと私、二人が持つ感情なのだ。



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