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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第三章 悪役令嬢は関わりたくない
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まさかの出会い

 リリーとグローシアは私の後ろを付いてきて、私を挟んで一緒にソファーに座った。


 (誰だろう?この人・・・)


 年の頃は30前後くらいか・・・、服装や物腰からして結構な身分の人に見えた。


 戸惑う私に母が「ほほほ」と笑った。


 「アリアナ、あなたは覚えていないかもしれませんね。前にもお会いしたことはあるのよ」


 母がそう言いうと、男性は少し首を振って


 「いえいえ、前回お会いしたのは・・・そう、アリアナ嬢がまだ婚約される前のことだからね。確か・・・5年も前になりますか。覚えてなくて当然ですよ」


 そう言って男性は私に柔らかい笑みを向ける。


 (ふむ・・・まぁ5年前だろうと去年の事だろうと覚えてないんだけどね、私は)


 何せ事故前のアリアナの記憶はゼロなのだ。


 (こういう時、色々困るのよね・・・。でも相手が覚えてなくて当然だって言ってくれてるから、今回は助かった)


 そう思いながら愛想笑いを浮かべると、


 「ああ、でも随分お奇麗になりましたね。ギャロウェイ公爵子息に奪われてしまったのが残念ですよ」


 「まぁ、リガーレ公爵様ったら」


 母がまた「ほほほ」と笑いながら父の方を見た。父も一緒に笑っている。


 リリーとグローシアは小声で「まぁっ!」「えっ?」と声を上げて、興味深々な様子で男性を見た。


 だけど私は男性のこの言葉を聞いた途端、氷水をかけられたように一瞬で体が冷え切ってしまった。


 (こ、こ、こ、こ・の・ひ・と・は・・・)


 男性と父と母は、楽し気に会話を続けていたが、なんだか水の中の会話を聞いているようだ。その上耳鳴りまで聞こえてきた。


 (まさか、まさか、まさか・・・)


 このふわりと分けた七三の髪型・・・、そしてインテリそうな口ひげ、何よりアリアナを見るその目つき!。


 (隠しきれてないのよ!。なんかやらしいんだって!)


 やばい、汗が止まらなくなってきた。


 (なんでここに居るのよぉぉぉぉ!このロリコン親父がぁぁぁ!)


 私はソファーにもたれたまま、気が遠くなりそうなのを必死でこらえた。


 グスタフは両親と会話しつつも、絶妙なタイミングで私に話を振って来る。


 (ぐっ!やめて・・・、流し目するのやめて・・・。)


 いくら見た目がイケおじだとしても、中身を知ってる私にはキツイ・・・。


 しばらくクラクラしながら状況に耐えていたら、リリーが私の様子がおかしい事に気付いてくれた。


 「あの、すみません・・・アリアナ様?。もしかしたらお身体の調子がすぐれないのでは・・・?」


 「そ、そうなのです。す、少し気分が・・・、か、風邪をひいたのかも」


 ワザとらしくごほごほと、咳なんかしてみる。


 「それはいけない、アリアナ!部屋に言って休みなさい」


 兄にも劣らず過保護な父がそう言ってメイドを呼んだ。


 「私達もアリアナ様に付き添いますわ」


 グローシアとリリーも心配そうな顔で、私と一緒にティールームを後にした。




 「アリアナ様、大丈夫ですか?」


 リリーが体を支えるように寄り添ってくれる。


 グローシアも私の右手をとって、先導してくれていた。


 「不覚・・・。アリアナ様の体調不良に気付かないとは・・・このグローシア、痛恨の極みです。お許しください」


 「だ、だいじょぶ・・・」


 (はは・・・、ごめん、今日は突っ込む元気もないよ)


 油断しきっていたところへの、ロリコン親父アタックはダメージが大きかったのだ。


 私は自室でベッドに横になった。


 (うかつだった・・・。奴がこんなにも近くに迫ってたなんて)


 よく考えれば卒業時に結婚なのだから、それまでに面識があってもおかしくないのだ。


 (ゲーム内ではアリアナはモブだから、細かい背景なんてわかんないもんなぁ・・・)


 自分の認識の甘さに思わず溜息が出てしまう。


 「お辛いですか?アリアナ様」


 ベッドの脇に座っているリリーが、心配そうに私を見る。


 「あ・・・いえ、大丈夫です、リリー。少し疲れただけだから」


 (ああ、ヒロインに心配してもらえるなんて、それだけで癒されるわぁ)


 ニヤニヤしてしまいそうだ。


 「やはり医師を読んできた方が・・あ・、わたくしが馬を飛ばして・・・!」


 (いや、待て!グローシア)


 「大丈夫ですから、落ち着いて!」


 今にも走っていきそうなグローシアをなだめ、咳払いして私は二人に言った。


 「少し眠ろうと思います。お二人は心配なさらないで。良かったらお散歩でもしてきてください」


 「そんな、体調の優れないアリアナ様をおいて、散歩など・・・、このグローシアには出来ません!」


 「でも、アリアナ様のお休みの邪魔になってはいけないですよ、グローシアさん。アリアナ様。私達は隣の部屋に居ますから、御用がありましたらいつでも呼んでくださいね」


 リリーがそう言うと、グローシアも納得して二人は私を気遣いながら部屋を出た。


 (さすがリリー。気遣いまでヒロインだよ。ふーっ・・・ちょっと一人で考えたかったから有難い。でもまだ頭が混乱しているや)


 楽しい夏休みに、まさかこんな悩みが浮上してくるとは。


 「ううう、もう!」


 私はベッドの上でこめかみを両拳でぐりぐり押さえた。

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