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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第二章 悪役令嬢は巻き込まれたくない
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さぁ来い、婚約解消!

 私は先日の事件以来、ディーンに会っても恐れたり焦ったりする気持ちが無くなっていた。


 (ディーンは皆と一緒に私を助けに来てくれたんだよなぁ・・・)


 その気持ちが素直に嬉しかった。あんなに嫌っていたアリアナを助けようとしたんだもんね。


 アリアナを断罪して婚約破棄する奴だけど、彼もきっと辛かったのかもしれない。


 (ふむ、多分だけどね)



 ディーンは俯いたまま話を続けた。


 「この前、足を怪我したという君を寮に送って行ったとき・・・」


 ディーンは一瞬言葉に詰まったが、顔を少し上げ私の目をまっすぐ見た。


 「君とクリフ殿の間を疑うような事を言って済まなかった。たわいない噂を信じるような事をして恥ずかしいと思う。・・・・それから私は・・・」


 彼はまた私から目を逸らし、もう一度深く頭を下げた。


 「私は・・・確かに一時期リリー嬢を好ましく思った時もあった。君という婚約者が居るのに、それは本当に申し訳なかったと思う・・・。すまなかった」


 なぜか心がズキンと痛んだ。だけどこれは私の感情では無い。不思議とそれが分かる。


 (ああそっか、アリアナだ。アリアナが傷ついているんだ)


 私は自分の胸にそっと右手を添えた。


 (一時期好ましくねぇ・・・。はっきりリリーが好きだって言えば良いのにさ。まっ、そういう訳にもいかないか。曲がりなりにも婚約者の前だ)


 ゲームと違ってアリアナは悪役令嬢をやってない。だからディーンはアリアナの非をあげつらう事は出来ないだろう。だからこそディーンには誠実な態度を取って欲しいと思う。


 私はディーンの次の言葉を待った。今回の事件でディーンは光の魔術を使ったリリーを素晴らしいと言っていた。あの聖なる光を放つリリーを見た時の感動は私だって忘れられない。

 彼女は美しく、そして神々しかった。誰もが心を奪われたに違いないのだ。アリアナだって・・・彼女には敵わないって思い知っただろう。


 私は握りこぶしで心の準備をした。


 (さぁ、来い!婚約解消!アリアナ泣かないでよ!私が付いてるからさ。頑張って受けて立とうじゃん!)


 でも、しばらく待ったがディーンは何も言わない。


 (ん?)


 「あの、ディーン様お話をどうぞ」


 「えっ?」


 「お話があるんですよね?さぁ、どうぞ」


 「えっ、いや・・・話なら今終わったけど・・・」


 私と彼の間でしばらく沈黙が流れた。


 「ええっ!終わった!?肝腎な事を仰ってないでしょう?」


 「えっ!?いや、本当にこれだけだけど・・・」


 ディーンは顎に手を当て、真剣に言い忘れたことがあるだろうかと考えてるようだ。


 「あれ?あれれっ?」


 私は戸惑いから、公爵令嬢らしからぬ間抜けな声を出してしまった。


 「えっと、なあんだ・・・それだけなんだ・・・」


 拍子抜けとはこの事である。


 一気に脱力している私にディーンが訝しい顔をした。


 「ああ、それだけだが。何か不満でも?」


 「いえいえ別に不満なんて・・・ただ、てっきり婚約解消を言い渡されるのかと思いましたので・・・」


 つい正直にそう言うと冷静だったディーンの顔色が変わった。


 「なっ!、そんな事、勝手に出来るわけないだろう!?」


 椅子から立ち上がらんばかりにそう言う。


 私はそんな彼を見て(はぁ?何言ってんだ?)と思った。


 (いや、ゲームの中じゃあなた、結構勝手にやってましたよ?)


 「こ、公爵家両家の約束事だ。自分の我を通すような事は出来ない!」


 (いんや!かなり我を通してたってば)


 呆れた私は椅子を座り直して、少し背筋を伸ばした。


 「別に、公爵家同士の約束とは言え親同士の口約束ですし・・・。ディーン様が嫌がれば誰も無理強いはしませんよ。・・・他にお好きな方が出来たのであれば、正直に仰って良いですよ・・・」


 最後の方は、私の感情とは裏腹に勝手に語尾が震えた。


 (アリアナか・・・そりゃ辛いよね・・・)


 私がアリアナの気持ちを思ってしんみりしていると、突然ディーンが立ち上がって私の方に身を乗り出した。彼の顔が真っ赤になっている。 


 「な、何を言ってるんだ!?いや、その・・・先ほど言ったように、リリー嬢の事はただ好ましく思っただけで、好きとかそう言う訳ではなく・・・。友人として・・・」


 冷静な私とは正反対に、ディーンの口調はしどろもどろだ。


 「君だってそうだろう?。ク、クリフ殿の事を友人と言ってたじゃないか。友人として好ましく思っているのじゃないのか?」


 (・・・ディーンってば何でこんなに動揺してんだ?)


 不思議に思ったけど、質問には素直に答えた。


 「まぁ、そうですねぇ。確かにクリフ様の事は友人として好きですよ。あの人クールに見えて本当は凄く笑い上戸なんですよ。笑い出すと止まらないんです。それに意外と親離れしてないっていうか・・・ギャップがあって、一緒に居ると面白いですよ」


 クスクス笑いながらそう言うと、何故かすーっとディーンの目が冷たくなった。


 「・・・随分、彼の事を良く知ってるんだね」


 「ええ、そりゃまぁ、同じクラスの友達ですし」


 「いくら友人でも仲が良すぎるんじゃないか?異性なのだから適切な距離は保った方が良いと思う」


 真面目な顔でそんな過保護な父親みたいな事を言う。


 (かったいなぁ。真面目過ぎなんだよね、ディーンは)


 なので、ちょっとからかってみたくなった。


 「ディーン様。そんな事を仰ると、まるでやきもちを焼いてるみたいに聞こえますよ」


 私がそう言うとディーンは一瞬きょとんとした。だがみるみる顔が真っ赤に染まり、目を泳がせて口元を腕で隠した。

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