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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第二章 悪役令嬢は巻き込まれたくない
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隠しキャラ

 皆が帰る間際、私はもう一度一人一人に感謝の言葉を述べた。


 今回の無事でいられたのはほんとに皆のおかげ。私を助けてくれるのなんて兄だけだと思っていたのに。


 「ふむ、悪役令嬢のままだったら助からなかったかも?」


 自室でつぶやくと、私の中でアリアナが文句を言ってる気がして笑えてきた。


 だけどモヤモヤと気にかかる事はある。


 「イーサン・・・」


 私は彼の事を知っている。もちろん乙女ゲームの中の登場人物としてだ。でも・・・、


 私はベッドにドスンと腰を下ろし頭を掻きむしった。


 「攻略サイト見なきゃ会えやしない隠しキャラなのに、なんで簡単に出てくんのっ!?」


 ライナス・イーサン・ベルフォート


 彼は「アンファエルンの光の聖女」の中に出てくる隠しキャラの一人である。それだけに攻略本にも載っておらず、彼に会うのはかなり難しいのだ。


 (一部のコアなファンは夢中になってたけどね。正直私は興味ないのよ、あんなサド野郎!)


 イーサンは強い。魔力で言えばゲーム内で最強と言っても良い。しかも闇の魔力の持ち主である。


 彼は闇の組織に属してはいないが繋がっている。彼に会うには闇の組織が関係するストーリーに入らなくてはならず、暗い話が嫌いな私はもちろん未攻略だ。だから彼についての知ってる情報なんてほんの少しなのであって・・・。


 (今回クリフの事情に首突っ込んだからなのか・・・?だからって、あんなラスボスレベルのキャラ出てくるなんて事ある?)


 まだ時期的にはゲームの1部なのだ。


 (それに、なんだか私はイーサンに目を付けられた気がする・・・)



 最後に見た彼のにっこり笑った顔が目に浮かんでゾッとした。



 「『また遊ぼうって』・・・いやだ!。もう絶対、二度と会いたくないっ!」


 くわばら、くわばら・・・と頭を抱えていたら、私の部屋をノックする音が聞こえた。


 「は、はい、なにかしら?」


 「アリアナ様、ご友人がいらっしゃいましたが・・・」


 (ん?さっき皆、帰ったばかりなのに・・・)


 このパターン前もあったなぁ、と玄関ドアに向かうと、思いもよらぬ人が私に向かって「やぁ」と笑いかけた。



   ◇◇◇◇◇



 次の日、私は夏休み前の最後の授業を受けていた。


 教室にクリフの姿は無い。


 ミリア達もノエルも心配そうだったが私は黙っていた。



 お昼休みに中庭でお茶を飲みながらレティシアが夏休みの予定を聞いてきた。


 「明日から、夏休みですわね。アリアナ様は領に帰られるんでしょう?」


 「ええ、明後日お兄様と一緒に帰ります」


 「1カ月半もアリアナ様とお会いできないなんて、寂しいですわ・・・」


 ミリアが心底残念そうにため息をつく。


 「では、もし良ければ皆でコールリッジ領に遊びに来てくれませんか?。私も夏休み中皆と遊びたいです」


 「良いのですか!?」


 ミリア達が、目を輝かせた。


 「ええ、もちろんです。きっと兄や両親も喜びます」


 (皆、アリアナに友人が出来るか心配していたからなぁ・・・)


 前のアリアナだったら絶対無理だ。


 ジョージアは「やったー」と両手を上げた。ミリアとレティシアも手を取り合って喜んでいた。コールリッジ領は皇国中でも特に美しい場所らしく、夏場は避暑地にもなっている。


 (ふむ、貴族の夏休みなんて何したら良いか分からんもんね。皆で行けば楽しめるっしょ)


 私はリリーとグローシアにも


 「リリーとグローシアは夏休みはどうするの?できたら二人にも遊びに来て欲しいです。大勢の方が楽しめますもの」


 「私も行って良いのですか?」


 リリーの顔がパッと明るくなる。ああ、やっぱり可愛い!


 (ゲーム設定ではリリーは孤児院で育ってる筈だから、夏休み中帰る場所は無いのよね。だからゲーム内ではずっと寮に居た。まぁそこで色々イベントも発生していたけど・・・)


 リリーと攻略者達とのイベントを潰しちゃうのは忍びないけど、でももう色々すっ飛ばされてるからこの際良いよね。


 「もし予定が無かったらリリーは明後日一緒に私達の馬車で行きませんか?スペースはありますから」


 (ふふふ、クラーク×リリーを進めるにもちょうど良いしね)


 クラークは基本アリアナの意見には反対しない。リリーは感激して頬を染めて目を潤ませている。


 (ああもう!ほんっと可愛いっ!大好き!)


 私がヒロインのビジュアルに酔っていると突然、


 「アリアナ様っ!わたしくしも予定はございませんわ!」


 「グ、グローシア??」


 「わたくしも明日からの予定は全くございませんの!。」


 「え?、あの、・・・一旦領には戻らないの?」


 「はい、戻りませんっ」


 鼻息荒くこちらをぎらぎらとした目で見つめている。こ、これは・・・


 「あ・・・で、ではグローシアも私達の馬車で一緒に行きますか?」


 「はい、喜んでっ!アリアナ様をお守りするのが、わたくしの役割でありますから」


 目をいっそう輝かせて騎士の礼をする。



 (う~ん、娘がこんな感じになってしまって、ボルネス侯爵は良いのだろうか?)


 なんだかちょっと申し訳無い気分になる。それにしても最初会った時は典型的な鼻持ちならない貴族のお嬢様だったのに、グローシアはすっかり変わった。今はリリーの事もイジメてないし、むしろ庇ってくれているようだ。


 (何せ騎士だもんね。あはは・・・)


 ミリアがグローシアの様子を見て、むうっと口を尖らせた。


 「私達も一度実家に戻ってから、すぐにアリアナ様の元へ参りますわ!ええ、すぐに!」


 「は、はい!待ってますね、ミリア」


 ミリアは何故かグローシアに対抗心を持っているようだ。


 「僕も行っても良いのかなぁ・・・?」


 ノエルが恐る恐る聞いてくる。彼は魔力が弱くて私の捜索に加われなかったから、最近ちょっと遠慮気味だ。


 「もちろん!ぜひノエル様もいらしてください。クリフ様も一緒に。」


 「ありがとう!アリアナ嬢。でも、クリフはどうかなぁ?。あいつ元気になってると良いけど」


 ノエルは何も言わずに実家に帰ってしまった彼が心配なのだ。私も昨日クリフに会って無かったら同じように不安を感じていたと思う。


 「大丈夫!クリフ様はそんなヤワな方では無いですよ。きっと元気になってます」


 そう言って微笑むと何故かノエルは顔を赤くした。


 「そ、そっか・・・。アリアナ嬢がそう言うなら・・・、うん、きっとそうだよね」


 なんだかどぎまぎしながら慌ててお茶を飲んでいる。その様子を見てミリアが意味ありげに笑っていたけど、どうしたんだろう?


 (でも、うん!クリフはもう大丈夫)


 彼は決して平坦では無い自分の運命をしっかりと乗り越えた。そして新しい人生を歩み始めたんだ。


 私は少し冷めたお茶を口にして、昨日の事を思い出していた。

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