マジデスカ!?
「私、2年生になったら絶対アリアナ様と同じチームになりたいわ」
食後のデザートを食べている時ジョージアが言い出した。
「チーム?」
(はて?)
「ご存じないかな?。2年になると成績順にクラス分けされるんだけど、クラスの中でも5つぐらいにグループ分けされるの。確か座学だけでなく実技や野外学習なんかもチームでやるのよ。チームごとの成績が出るはず」
(そ、そんな設定あったっけ?)
そういえばゲームでの中で2年になってからは、ヒロインはほとんど同じ人達と行動してたっけ。だいたいは攻略対象の人達で、後は仲良くなれた生徒とか・・・?。
(もしかしてチームが同じだったから?)
「私もアリアナ様と同じチームになりたいですわ。できればこのメンバーで!」
ミリアも頷きながらそう言った。
「チームは自分達では決められませんの?」
「同じクラスでしたら適正を考えながら、ある程度は要望を聞いて貰えるみたいですよ」
「なるほど・・・」
私の疑問にミリアが答えてくれた。
でも、そうなると・・・
「私は、皆さんと同じチームになれそうもないです・・・」
「私は、同じチームになれないかもしれませんわ・・・」
(ん?)
私とレティシアの声がほとんど重なり、お互い顔を見合わせる事となった。
「レ、レティ!?」
レティシアの目には涙が浮かんでいた。レティシアはきれいな手でハンカチを取り出し目に当てた。
「だって、私は皆みたいに成績が良くないんですもの・・・。一番上のクラスには入れませんわ」
「そ、それを言うなら私は魔力がゼロなんですもの。もっと無理だと思います!」
「アリアナ様ぁ・・・。」
「レティ・・・。」
本格的に泣いているレティシアと、私は思わず両手をがっしり握り合って抱き合った。
そんな私達を見てミリア溜息をつき、腰に手を当てると人差し指を立てて横に振った。
「アリアナ様!。アリアナ様は大丈夫だと思いますよ。魔術の実技の成績が悪くても、テストの成績上位者は上のクラスに組み込まれていたはずです」
「えっ?本当?」
「ええ、確かトップ3までは上位クラスに入ってたって、兄が申してましたわ。アリアナ様の成績なら文句なしです。それにレティもきっと大丈夫よ。あなたは他の人より魔力が強いし、魔術にも長けているから。きっと実技で取り返せるわよ」
ミリアの言葉にもレティシアはまだ半信半疑そうだ。
「そうかしら?・・・でもミリーにはいつも敵わないじゃない?」
「あのねぇ、ミリーと比べたって仕方ないわよ。魔術のエキスパートの家系なんだから。でもレティだって、氷魔法に関しては、同学年で敵う人なんていないと思うわよ。」
ジョーはお菓子をパクつきながら呆れた顔をした。そして口をもぐもぐさせつつ、
「それに、2年までまだ時間があるわ。それまで一緒に勉強すればきっと成績だって上がるわよ。」
レティシアの背中を叩いて励ました。力が強かったのかレティシアが前につんのめる。
(う~ん、ジョーはホントに前向きよね。レティは少し繊細でネガティブ。でもとっても優しい)
そんな二人を見てリリーが微笑みながら、
「私も2年生には皆さんと同じクラスになりたから頑張ります」
「リリーは大丈夫!絶対上位クラスよ。だって光の魔術を持ってるんですもの」
ミリアの言葉に私もうんうんと頷く。
(そうそう、しかも聖女候補になっちゃうしね。・・・ん?・・・待って・・・?)
上位クラスに入るってことはリリーはもちろん、ディーンや他の攻略者達とも同じクラスになるって事では!?
気付いて愕然としてしまった。
(待って待って、それって面倒な事にならない?ミリー達とは一緒のクラスにはなりたいけど奴らと一緒になるっていうのは危険だよ。テスト成績上位は狙ってはいたけど、ちょっと手を抜いたほうが良かったか・・・?いやいや、でも学年で3位以内でしょ?さすがにそこまで上位には入ってないかもしれないし・・・)
そして一週間後、テストの順位表が貼りだされた。
1年生:1位 3組 アリアナ・コールリッジ 700点/700点
「マジデスカ?」
嬉しさよりも動揺と焦りが勝った。
私は今までの方針を変えざるを得なくなったのだ。
自室のベッドで反省と共にノートに書き記す。
「まずは・・・」
1、勉強以外で目立たない!
これはもう不可能になった・・・。何故ならこの前ピクニックで湖に落ちて気絶した事で、一年生の全生徒の注目を浴びてしまったからだ。その上暴れ馬にいたずらした犯人を見つけたのは私だと言う噂も出回っているらしい。いや、確かに半分はそうなんだけどさ、
「いったい誰が流したのよっ?!そんな噂!それに・・・、あああ、勉強でも目立ち過ぎた!?くそっ・・・でも私には無理だっ!テストで手を抜くなんて。それに正直1位になってめっちゃ嬉しかった!」
懊悩にベッドで頭を抱えてごろごろと転がった。
ちなみに馬をけしかけた女生徒達は退学になる所だったが、私が先生に掛け合ったおかげで1カ月の停学で済んだ。公爵家の威光は素晴らしく効いた。
なぜそんな事をしたかと言うともちろん、逆恨みされては堪らないからだ。
「次は・・・」
2、なるべくヒロインに近づかない!
これに関しては完璧に自分から潰してしまった・・・。
「私から友達になろうって言ったもんね・・・はは。だってヒロイン可愛いし、いい子だし・・・ううう」
3、目指せクラーク×リリー
「唯一望みがあるのはこれだけかもしれん」
兄の為にも頑張りたい!。リリーと友達になったおかげで、接点を作るのは難しくないのよ。
「こうなると一番の問題は・・・」
4、ディーンと円満婚約解消!
「・・・もうどうして良いのか分からないいいいいっ!」
私は頭を掻きむしった。
「婚約解消の話を持ち出すだけで下手したら息の根が止まるわっ!どんだけディーンが好きなのよぉ、アリアナ!?」
(ん、でも待てよ!?)
私はハタと気づく。
(リリーとは友達になったんだし、ディーンにはもう私を断罪するネタは無いんじゃ・・・?)
「そうよ、そうよ!それさえ無ければ、1年の終わりに勝手に婚約解消される事は無いわよね?」
それにこの間の彼の様子を思い出せば、不思議な事にそこまでアリアナに悪感情を抱いてるようでは無かった。
私の中の「アリアナ」の妨害?があるから、こっちからは婚約解消の事は言えないけれど、ディーンは婚約解消したいはず。とにかく弱みを見せない様にして円満に事を勧める事が大切だ。
(ちょっとその時のアリアナの反応は怖いけど・・・。)
「よし!方針を立て直すわよ!」
最新バージョンとしては
1、これ以上目立たない
「これ以上どう目立ったら良いのかわからないけどね・・・。」
2、こうなったらヒロインと超仲良くなる。
「元々は乙女ゲームのヒロインが大好きなんだもん。もう大親友になってやるわいっ」
3、もっと目指せクラーク×リリー
「兄よ、私頑張るからね。」
4、ディーンに弱みを与えない!
「逆に弱みを握りたいくらいだよ。でもって、いっそこっちから断罪したりして」
そう考えるとちょっと気分が浮き立った。
「うん、結構アリかも?とにかく有利に立たなきゃ!」
そう張り切っていたけれど、その後そんな方針が吹っ飛ぶような出来事が起きるなんて、その時の私は知る由も無かったのだ・・・。




