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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第一章 悪役令嬢は目立ちたくない
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隙を見せるな!

 私達はその後お茶とお菓子を頂きながら、テストの話やピクニックの時の話をして充分に楽しんだ。

 

 リリーはずっと笑顔だった。そして帰る間際に私の手を握って


 「ありがとうございます、アリアナ様」


 そう言って少し目を潤ませた。


 リリーはクラスでは友達がいないって言ってたから、こういう時間って今まで無かったのかもしれない。


 (私もミリア達と知り合うまで友達いなかったもんね。リリーみたいにイジメられてはいなかったけど、気持ちは分かるんだなぁ)


 4人が帰ったあと、兄のクラークはニコニコしながら自室からリビングに入ってきた。


 「良い友達ができたようで、良かったね」


 「・・・はい」


 なんだかちょっと照れくさくて、でも心はホカホカしていた。



 兄が自室に戻ったので私も夕食までもう少し勉強しようかと思っていた時だった。


 また外のドアがノックされる音が聞こえた。


 「あら、誰か忘れ物でもしたのかしら?」


 メイドが入口の方へ確認に行く。


 「アリアナ様、ご友人がいらっしゃいましたが・・・」


 「入ってもらってちょうだい。」


 だが、リビングに入ってきた『ご友人』の姿を見て私はひっくり返りそうになった。


 (な、なんで!?)


 「アリアナ、失礼する。」


 「ディ、ディーン様・・・!?」


 途端、頭が真っ白になった・・・。


 (な、なんでディーンがアリアナのところに来るのよ!?)


 (まさか、まだアリアナがリリーをイジメてるって思ってるの?だってピクニックで湖に落ちたのはリリーじゃなくて、私だよ!?馬が突っ込んできたのだって、他の女生徒の仕業だって事、分かってるはず!それとも他の事で難癖付けに来たのか!?)


 頭の中を色んな想像が駆け巡る。あまりにもぐるぐる考えすぎてオーバーヒートしそうだ。


 (いや、落ち着け私。ディーンに責められるような事は何もしていないはず。むしろリリーとは友達になって仲良くしてるんだから)


 私は荒くなっていた呼吸を整え、それでも警戒しながらディーンに引きつった笑いを返した。


「ご、ごきげんようディーン様。何かわたくしに御用でしょうか?」


 ディーンは一瞬うっと詰まったようなそぶりを見せて少し目を泳がせた。


 「そ、その・・・先日湖に落ちて体調を崩したと聞いた。もう具合は良いのかと思って・・・」


 (えっ?それだけ?)


 もしかして、私が学校を休んでいるのを知ってお見舞いに来てくれたのだろうか?。


 (いや、まさか・・・。だってあのディーンが?)


 私は一瞬ぽかーんとしたがはっと思い出した。


 そう言えば私、ディーンに助けて貰ったのに全くお礼を言ったなかった!


 (もしかして、それに文句を言いに来たの!?それならありうる!)

 

 私は急いでディーンに向かって頭を下げた。そして、 


 「あ、あのあの、あの時は助けて頂き、ありがとうございました。お礼が遅くなり大変申し訳ございません。おかげさまで湖に沈むことなく無事に帰ってこれました。熱は出しましたがたいそうな事もなく、この通り今は元気でございます!」


 合いの手を許さぬ早口で礼をまくしたてた。


 (はぁ、はぁ、どうだ!文句あるまい?)


 息継ぎができなかったのでちょっと苦しい・・・。


 「で、ですのでディーン様はどうぞお気になさらず、」


 どうぞお帰り下さい!と言いかけて慌てて止める。さすがに追い返したい気持ちが見えすぎて良くないかもしれない。


 私が心の中であたふた考えていると、ディーンは私からは目を逸らしたまま、口を開いた。


 「礼を言われるには及ばない。ああいう時は助けるのが当たり前だから。それより元気になって良かった」


 「は、はあ・・・ありがとうございます」


 (うん?)


 文句を言いに来たのではないのだろうか?。まさか、・・・ほんとにただのお見舞い?


 ディーンも私も突っ立ったままお互い黙ってしまった。二人の間に沈黙の時間が流れていく・・・


 (き、気まず・・・)


 そう思ってハッと気づいた。


 (やばっ!。私、ディーンが入って来てからお茶も出してない!)


 常識知らずと責められるかも?と私は焦った。とにかくディーンに隙を見せるのが怖かったのだ。


 「も、申し訳ございませんディーン様!どうぞお座りになってください。今すぐお茶の準備をさせますわ。ステラお茶の用意をお願い!」


 ディーンは黙ったまま私に勧められるままテーブルの椅子についた。そして私の優秀なメイドは、私が頼む前に既にお茶とお菓子の準備をしていた。


 (さすがよ、ステラ!。ナイスプレー!)


 心の中で手を合わせた。


 「いつもありがとうステラ。どうぞディーン様。ステラの淹れてくれるお茶はとても美味しいですわ」


 「あ、ああ。」


 ディーンはなんだか不思議そうに私を見てお茶を一口飲んだ。


 「・・・美味いな」


 「そうでしょう!?茶葉もステラが選んでますのよ。彼女はお茶のプロですわ」


 私が自慢げにそう言うと、ステラが頬を赤く染めながら恥ずかしそうに顔を伏せた。


 「ア、アリアナ様・・・。ディーン様の前で、私などを褒めすぎです・・・」


 「だって本当の事なんだもの。恥ずかしがることないですよ」


 その様子を見てディーンがクスリと笑った。


 (えっ!?)


 私はぎょっとなり自分の目を疑った。


 (ディ・・・ディーンが、まさか・・・笑った!?)


 アリアナの前で!?


 驚き過ぎて、つまもうとしたお菓子が手からこぼれた。


 だって、だって、ディーンがアリアナの前で笑うなんて、ゲームではなかった。彼の笑顔は全てリリーに向けられていたのだ。アリアナに向けられるのは不機嫌な顔か怒った顔だけだったのに。


 (いったい、何が起きてるの?)


 私はまじまじとディーンを見つめてしまった。


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