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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
最終章 悪役令嬢は・・・
201/218

一人じゃない

 さっきの強い風で乱された自分の髪を整えるふりをして、私は顔を隠した。

 色々こっぱずかしくて仕方がない。


 「ディ、ディーンって性格変わりましたよね。ま、前は絶対そんなじゃ無かったですよ?」


 動揺を誤魔化すように口を開いたが、どもるし声は少し上ずってる。


 「そうだね。自分でもそう思うよ。こんな私は・・・気に入らない?」


 「そんな事は無いですよ!」


 思わず勢い込んで大声で返事をし、驚いたディーンの顔に我に返った。


 (うあ、もう!・・・は、恥ずかしいぞ・・・)


 再び顔を伏せる私に、ディーンは柔らかい声で話し続ける。


 「これまで色んな事があっただろ?新しい事に出会って、知らなかった事を知って・・・嫌な事や辛い事もあったけど、おかげでそれまでの自分が、固い小さな枠の中にいた事に気付いたんだ」


 「枠・・・ですか?」


 「ああ、その中に居るのはとても楽だった。自分の嫌な部分も知らずに済んだから。・・・君と最初に会った時の事を覚えてる?」


 「え?・・・あ!あの、学園の廊下でリリーと一緒に会った時の事ですか?」


 「そう。私は君とリリーが二人で居るのを見だだけで、君がリリーに嫌がらせをしているのだと思った。正確にはアリアナがだけど」


 「あ~ありましたねぇ・・・」


 あの頃のディーンは私の天敵だった。何だか懐かしいや。


 「当時の私は真面目なだけが取り柄で、頭の固い融通の利かない子供だった。自分の考えだけが正しいって思い込んでいたんだ」


 「そ、そこまで言わなくても・・・」


 確かに、近いものはあったかもなぁ・・・。

 完全に否定しきれないのが心苦しい。だけど、それはゲームでそういう設定だったから仕方無いのじゃなかろうか?


 ディーンは苦笑しながら、


 「これでも自分の至らない部分や、馬鹿な所に気付く様になって、自己嫌悪で落ち込んだりもしたんだよ。気付いてた?」


 「え!?そうなんですか!?・・・全然気付かなかった・・・)


 そう答えるとディーンは「あっはは・・・」と屈託なく笑った。そう言えば、こんな少年っぽい所も昔は見られなかったなぁ。


 私は気になって聞いてみた。


 「あの・・・今はどうなんですか?」


 「何が?」


 「まだ・・・落ち込んでたりします?」


 ディーンは恥ずかしそうに眉を下げた。


 「・・・たまにね。私はズルい人間だから・・・。アリアナにも『クズ男』だって言われたしね」


 「あ、あれは!違うじゃないですか!ただのアリアナの勘違いで・・・」


 「違わないよ。それに『クズ男』でも良いかなって思ってるんだ」


 「は!?」


 驚く私にディーンは悪戯っぽい目を向けた。


 「それ以上落ちようが無いだろう?・・・最近はさ、落ち込んだ時は、とことん落ち込む事にしてるんだ。そうすれば、後は上に浮かぶだけだろ?」


 (え・・・)


 「くだらない事は考えないで、行動する事に集中しようと思ったんだ。そうしたら、少し気持ちが楽になった」


 穏やかな笑みを浮かべる彼に、私は胸が熱くなった。


 (同じ・・・私もそうなんだよ・・・)


 彼が語った事は、いつも私が大事にしていた《《儀式》》だ。


 (辛い時はいつもそうやって、自分を励ましてたんだ・・・)


 一人じゃない。


 嬉しかった。

 心が震える程に。


 「・・・そろそろ戻ろう。風が冷たくなってきた」


 ディーンが自分の上着を私にかける。

 「ありがとう」と笑いかけると、彼の頬が少し赤くなった。


 「あのさ・・・一つだけ聞いて良い?」


 「何でしょう?」


 ディーンは言いにくそうに、もごもごしつつ、


 「どうして・・・リガーレ公爵が嫌なんだい?」


 「はい?」


 「彼は私よりもずっと大人だし、権力も経済力も上だ。周りの評判だって良い。なのにどうしてそんなに嫌っているのかと思って・・・」


 心底不思議そうに聞いてくる。


(マジか・・・あ!もしかして、この世界にはロリコンと言う概念は無いのか・・・?)


 そう思いながら、私は深く溜息をつきながら説明した。

 

 「ディーンは両親が亡くなった10歳の少女を、色ボケた邪な気持ちで引き取ろうとする、血の繋がらない叔父がいたらどう思います?」


 「え?」


 「終始、気持ち悪い目で見られたらどんな気持ちになりますか?」


 「リナ・・・!?」


 あ~~~~~!!思い出すだけで、ぞわぞわする!

 私は危ないところで、祖父の元へ逃げる事が出来た。だけど、それ以来ロリコンだけは、この世の中で一番の天敵なのだ!


 「リガーレ公爵は顔もそっくりなんですっ!!」


 叫ぶように言った私に、ディーンは最初、呆気に取られた顔をしていたけど、そのうちホッとしたような顔で笑い始めた。


 「どうして笑うんですか!?」


 こっちは真剣なんだぞ!


 「幸運だったなと思って。私がリガーレ公爵より有利なのは、君と年が近いという事だけだから」


 「は?、まさか!何を言ってるんですか?ディーンの方がずっとカッコいいじゃないです・・・か・・・」


 (ヤバい・・・何を言ってんだ、私は)


 急に恥ずかしくなってきた。


 借りてる上着を頭からかぶって顔を埋めると、その上からふわりと抱きしめられた。


 (うが・・・!?)


 「お休み、リナ・・・」


 ディーンの去って行く足音を聞きながら、


 (な、なんちゅう・・・)


 ディーンって、7つ年下なんだよね!?


 再度、指を使って計算しながら、私は口から半分魂が抜けだした気分になっていた。

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