何を仰るんですか!?
次に私が目が覚めたのは寮の自室のベッドルームだった。まだ涼しい時期に湖に落ちたせいだろう、風邪をひいてしまったのだ。
結局私は1週間学校を休んだ。
眠っていて会えなかったのだが熱があった間、ミリア達やリリー、クリフやノエルもお見舞いに来てくれたらしい。兄のクラークは私にそのような友達が出来ていたことに驚き感動し、そして喜んでくれた。
4日目の日曜日の朝には熱は下がり、月曜日に学校に行こうとしたのだが、過保護な兄や使用人達に反対されて寮のリビングで自習する事になった。
勉強しながらも、なんとなくピクニックの時の事を思い返していた。
(「ドキドキハプニングピクニック」のイベント・・・あれはヒロインの為のものなのに、なんで私が湖に落ちるのよ・・・)
ピクニックで湖に落ちた後、どうやら私は婚約者のディーンに助けられたらしい。私とリリーがあのいけ好かない女生徒達と言い争っていた時に、どうやらディーンとパーシヴァルもボートに乗って私達を(というかリリーを)追いかけてきていたらしいのだ。
(怖っ。そんなにリリーが心配なのかな?。やっぱり私がまだ意地悪すると思っているんだね・・・なんてしつこい)
不覚にも気を失った私をディーンが岸についてからも運んでくれたらしい。これはリリーが兄に伝えてくれたことだ。
「あ~あ、もう!。ディーンには絶対近づきたくなかったのに・・・」
そして問題はそれだけではなかった。
(まずい・・・私は目立った。絶対目立ってしまった!)
「くぅ、勉強以外では目立たないって決めてたのに・・・」
私が小声でぶつぶつ言っていると部屋の玄関の扉をノックする音が聞こえた。
「誰かしら?」
そういえばもう学校の授業が終わっている時間だ。
「アリアナ様、ご友人がお見舞いにいらっしゃいましたがいかがいたしますか?」
メイドのマリアがそう聞いてきたので、
「ありがとう。こちらにお通しして頂戴」
そう言って私は勉強道具をテーブルの上から片付けた。
「アリアナ様、お加減はいかがですか?」
「もう起きられても大丈夫なのですか?」
そう言いながら、ミリア、ジョージア、レティシア、そしてリリーが入ってきた。
「皆様来てくださいってありがとう!。もうすっかり熱は下がりました。お兄様が心配して学校に行かせてもらえないだけなのです」
「あまり無理はなさらない方が良いですわ。もうすぐ中間テストが始まりますし、ちゃんと養生なされた方が良いですわ。」
ミリアの声に皆もうんうんとうなづいている。
「でも学校に行けないと授業に遅れてしまいそうで・・・。私は只でさえ1カ月遅れで入学していますもの。これ以上休みたくはないのです」
「あら、アリアナ様なら絶対大丈夫ですわ!」
ジョージアが勢いよくそう言うと、
「そうそう、授業中の先生の質問に答えられなかったことが無いじゃないですか」
レティシアも、優雅に笑いながらそう言う。
この二人ってタイプが全く違ってて対照的だけど、気が合うみたいで仲がいい。そして二人を上手くまとめているのがミリアだ。
(ミリアは社会人になったら、良い上司になりそうなタイプだよな~。)
そんな事を考えてたら、
「アリアナ様は頭も良いんですね」
とリリーが感心したように言うので慌ててしまった。
「頭が良いわけではないですよ。ガリ勉しているだけなのです。それに・・・『頭も』って言い方はおかしいですよ。他に取り柄が無いですもの。」
「「「「何を仰るんですか!?」」」」
4人の声が勢い良くきっちり揃ったので、思わずのけ反ってしまった。
「アリアナ様はお可愛らしいです!」
「そう!、それにお優しいですし!」
「しかも努力家で!」
「公爵令嬢様なのに、まったく偉ぶったところなくて!」
ミリア、ジョージア、レティシア、リリーが身を乗り出して食い気味でそう言うので、ますますのけ反ってしまった。
「あ、ありがとう・・・皆様」
皆の目ががぎらぎらしててちょっと怖い・・・。話を変えよう。
「そ、そうそう、先ほど仰ってた中間テスト!」
この学校は2学期制で、4回のテストの結果と実技の成績で2年のクラスが決まる。
「もうあと10日程ですよね。どんな問題が出るのでしょう?」
そう言った私にミリアが、
「ほとんどの先生は例年とさほど変わらない問題らしいですよ。アリアナ様はクラーク様がいらっしゃるから去年の過去問はお持ちですよね?」
(過去問!?)
「い、いいえ!持っていないです。お兄様に聞いてみないと」
「きっと、クラーク様ならアリアナ様の為に保存していると思いますよ。でも、もし宜しければアリアナ様、私達とご一緒に勉強しませんか?。私は兄弟が多いので兄や姉から過去問をたくさん貰ってるので」
(おお!友達と一緒に勉強!)
憧れの学園ライフだ。
「良いのですか!?助かります!。ありがとうございます」
(最高!なんて優しいのよ、ミリア)
「いえいえ、アリアナ様と一緒に勉強できれば私達も色々教えて頂けますし嬉しいですわ。・・・それから、その・・・。」
ミリアはちょっとためらいながら、
「その・・・宜しければ、リリーさんも一緒に勉強しませんか?」
「えっ!?私も?」
「ええ、お嫌かしら・・・?」
「い、いいえ!嬉しいです!宜しくお願いします。」
リリーもミリアも頬をうっすら紅潮させている。
(これは!)
なんて微笑ましい光景だ!。それに二人とも美少女だから眼福!
(でも良かった。リリーも良い感じに皆と友達なれたみたいで)
最初の思惑とは違ったけど、私のロリコン回避にも近づけた気がした。




