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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
最終章 悪役令嬢は・・・
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人選

 トラヴィスとリリーの言葉を聞いてディーンが溜息をついた。そして一歩進み出ると、


 「殿下、護衛として同行する事をお許しください」


 「ディーン!?」


 「シールドなら私が一番得意だ」


 ディーンは驚く私を振り返ってそう言った。すると今度はクリフが一歩進み出る。


 「なら俺も行く。城を吹っ飛ばすのなら、トラヴィス殿下よりも俺の方が向いているからな」


 「え!?いや、あの、そんな・・・」


 私は慌てた。だってこの作戦は大部分が出たとこ勝負、つまりはとっても危険なのだ。二人を止めようとしたら、


 「兄上とディーンが行くのなら当然僕も行く!、心配で待ってなんかいられないよ!」


 ブラコンでディーンにぞっこんのパーシヴァルが声を上げた。


 「わたくしも!わたくしはアリアナの騎士です!」


 クローディアが私に駆け寄って跪き。


 「アリアナを守る事がわたくしの使命ゆえ」


 恭しく、私のスカートに口付けた。


 「そんな!だったら私だって・・・」

 「私は絶対行くわよ!」

 「お、俺も!」

 「み、皆が行くなら、わたくしも・・・」


 ミリア、ジョージア、ケイシー、レティシアも次々に声を上げていく。


 (おいおい、これじゃ収集が付かないぞ・・・)


 これは、もしかしてと思い、ちらっとクラークを見ると、彼は私に向かってにっこり笑った。


 (げっ!やっぱりだ。クラークも付いて来る気満々じゃん!)


 私はがっくりと脱力した。よく考えなくても妹溺愛の兄が、アリアナだけ行かせるはずは無いのだ。


 (だけど、さすがに全員は無理でしょ)


 何せ相手が呼んでるのは私とトラヴィスだけなのだ。護衛の騎士達は連れて行くにしても、貴族の令嬢令息が、こうもぞろぞろ付いて来たんじゃ、絶対不審に思われる。


 (どうするよ?ねーさん)


 トラヴィスはしばらく何か考えていたが、


 「一緒に行くのはディーンとクリフ。そしてグローシアだ」


 皇太子らしく、威厳のある態度できっぱりとそう言った。選ばれなかった者の顔に不満の色が浮かぶ。クラークなんか、トラヴィスに抗議しようと立ち上がっている。


 するとトラヴィスは私に顔を向けニヤリと笑った。


 (げっ!ねーさんの顔)


 「アリアナ、説明してやってくれ」


 (ちょ、ちょっと!?)


 どうやら面倒臭くなったトラヴィスは、私に理由の説明を丸投げしてきたようだ。それともジョー達の救出で勝手な事をした意趣返しのつもりか?

 なんてこった!


 こんにゃろめ!と思いながらも、私はトラヴィスの人選について頭をフル回転させた。


 「え~っとですね。まずミリーにジョー、レティは隣国に行かない方が良いです。3人は以前、エメライン王女のお世話役を断った経緯があります。彼女がそれを覚えてたら、恐らく、いえ絶対に面倒な事になります」


 執念深いエメラインの事だ。3人の事を許してはいないだろう


 「それからパーシヴァル殿下は洞察力に優れてるので、国内の要人の中に、精神魔術にかけられている者が居ないか探って欲しいです」


 セルナクに発つ前に、判明した人達に関してはリリーと私で解術をするつもりだけど、他の場所でも被害に遭ってる人がいるかもしれない。


 「そしてクラークお兄様は絶対に来ちゃ駄目です。私の件でコールリッジ家はエメラインに良く思われていませんからね。相手の気持ちを逆なでしかねません。お兄様はケイシー様と一緒に、トラヴィス殿下が居ない間の学園のとりまとめを行って欲しいです」


 そう言うとクラークはしょんぼりと項垂れた。

 どうだ、これで良いか?とトラヴィス見ると、満足そうに頷いている。なんて人使いの荒い皇太子だ!


 「という事だ。他の者はセルナクからの攻撃に備えて欲しい。パーシヴァル、お前は第二皇子だ。私に何かあった時、皇国と父を守って欲しい」


 パーシヴァルは情けなさそうに眉を下げながらも渋々頷いた。

 トラヴィスはクラークに目を向けると、


 「学園内も精神魔術の影響で荒れている。私が居ない間にケイシーと二人で何とか収めて欲しい。アリアナは私達で絶対に守るから・・・頼む」


 そう言うとクラークはしばらく黙ったままトラヴィスを見返していたが、


 「承知しました。アリアナを宜しくお願いします」


 そう言って深く頭を下げた。



 次の日から私とリリーは大忙しだった。

 思っていたよりも精神魔術の被害は多く、学園の生徒の過半数、そして教員や職員のほとんどが、自分では気づかない内に精神魔術の種を植え付けられていたのだ。


 もしこの人達が戦争が始まった時に、全員が裏切り行為をしていたと思うとゾッとした。

 生徒や教員同士で訳も分からず戦う事になり、学園は大混乱に陥っただろう。


 省庁の職員や、モーガン先生が入院していた病院も、学園と同様だった。特に魔法省や警察省などは、腕に覚えがある者も多い。もし彼らが国内で反逆行為に及んでいたら大変な事になっていただろう。

 国の機関は壊滅し、病院は機能しなくなる。


 (下手したら皇国は滅びちゃってた可能性もあるな・・・やばかった)

   

 知らない内にモーガン先生の魔術はこの国を深く蝕んでいたのだ。

 だけど、黒フードと二人でやった事だとしても、並大抵の労力では無かったはず。


 (どうしてここまで・・・、モーガン先生はそんなにも皇国を憎んでいたのか?)


 イーサンによって命を奪われたモーガン先生。死んでしまった今も、彼女についてはまだ謎の方が多い。


 そうして一週間後、私達は隣国セルナクに向けて出発した。

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