表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第一章 悪役令嬢は目立ちたくない
19/218

湖でパニック

 (な、何、こいつら!?腹立つ~~~!!そりゃね、アリアナは背も低くて、幼児体形で、出るとこ出てなくて幼く見えるわよ!)


 ・・・なんだか自分で言ってて悲しくなってきた。でもここまであからさまに人からイジられたのは初めてで、


 「あ、貴女ねぇ!いくらなんでも言い過ぎではないですか?」


 「あら、本当の事を言い過ぎたかしら?ごめんあそばせ」


 「・・・・!!!」


 私が歯噛みしていると女生徒はさらに続けた。


 「おお、怖い。この方私達を睨んでますわよ?」


 「ほんと、さすがお育ちの悪い方のお友達ですわね」


 「この方も庶民なのかしら?」


 「そうかもしれませんわね。おほほほほ・・・」


 (こいつら~~~~!)


 なんて嫌みな奴らだと思い、言い返そうとした時だった。


 「アリアナ様に失礼な事を言わないでくださいっ!」


 嘲笑する女生徒達を遮って、リリーが叫ぶように言った。


 「私の事を悪く言うのはかまいません。でもアリアナ様を傷つけるのは許せません!」


 リリーの言葉に女生徒達が気色ばむ。


 「な、なにを生意気に・・・」


 「そうよ、平民のくせに!」


 けれどリリーはひるまなかった。


 「貴族なら人を傷つけるような事を言っても良いのですか?人に対し、失礼な態度をとっても許されるのが貴族なのですか?だとしたら、私はそんなものになりたくありません。貴族とは他の人より重い責任を担っていて、人を守る立場であるはずです。だからこそ平民より良い暮らしが出来るのではないのですか?私にはあなた達がそうだとはとても思えません!」


 真っすぐに女生徒達に向かって言い放った。


 (ふぉ~!か、か、かっこいい~~~!リリー素敵!最高!)


 私は横でリリーの雄姿に見とれていた。


 (これぞヒロイン!さすが聖女候補!)


 だけど言われた方はそうではなかった様で、女生徒達は怒りのあまりに顔を真っ赤にさせると、


 「よ、よ、よくも平民の分際で・・・この・・・この無礼者っ!」


 「えっ?」


 女生徒の一人はボートのオールを持ち上げると、あろう事かこちらに向かって投げつけてきたのだ。

 

 「うそっ!」


 それをなんとか避けようとした私は、ボートの上で思い切りバランスを崩してしまった。


 (ヤバいっ!)


 「アリアナ様っ!」


 スローモーションのように手を伸ばすリリーを見ながら、


  バシャンッ!


 私・・・湖に落ちてしまった。


 「う・・・ごぼっ!」


 思いっきり水を飲んでしまう。


 そういえば私って泳げないんだっけ・・・。


(あ・・・これは詰んだ)


 半分パニック、半分諦めの気持ちで手足をバタバタさせていると、どう言うわけか突然、私は一気に水面に引き上げられた。


 「う、ゲホッ、ゴホッ、ゴホッ・・・・」


 ボートの上に引っ張り上げられ、思いっきり咳込んでしまう。目から涙があふれてくるし、・・・やだ鼻水が・・・


 「大丈夫かっ!?」


 「あ、ありが・・・ゴホッ、ゴホッ・・・」


 「無理して喋らなくていい。落ち着いてゆっくり息を吸うんだ」


 そう言って背中をさすってくれる。そのゆっくりしたリズムに少しずつ落ち着き、呼吸も楽になってきた。


 ハンカチを渡されたのでそれで顔を拭き、ついでに鼻もかんだ。うん・・・、洗って返さなきゃね。


 「アリアナ様!大丈夫ですかっ?アリアナ様っ!」


 少し離れた場所でリリーの声がする。顔を上げると私達が乗っていたボートに一人しゃがみ込んでいる、青い顔をしたリリーがいた。そしてその右の方には、焦った顔をした女生徒達のボートもある。


 (・・・あれ?じゃ、私が乗っているのは誰のボート・・・?)


 不思議な気持ちで振り返ってみると、私の背をさすっているずぶ濡れのディーンと目が合った。


 「ディ・・・!ひっ、ゲホッ、ゴホゴホッ」


 折角落ち着いてきたのに、別の理由で咳込んでしまった。


 横目で様子を伺うと、ディーンの横には第二皇子のパーシヴァルまで居るではないか!


 (こ、これって一体、どういう状況?!?)


 逃げねばと思いつつも身体は動かず、それに加えて目の前がぐるぐると回りだして・・・


 「う、う~ん・・・」


 湖に落ちたショックのせいか、はたまた状況による緊張のせいか、私はアリアナになってから二度目の気絶をしてしまった。




 ガタガタというリズミカルな音。そして温かい毛布の感触。


 気が付いたら馬車の中だった。


 「アリアナ様!気が付かれましたか?」


 向かい側の席からミリア、ジョージア、レティシアが心配そうにこちらを見ている。


 クリフとノエルは居なくて、代わりに担任のエライシャ先生が私の隣に座っていた。私は毛布で体をくるまれて、エライシャ先生に膝枕をしてもらっていたのだ。


 「・・・エライシャ先生・・・」


 私の口から出た声が思いのほか弱々しかったので、自分でも驚いてしまった。


 身体が凄く重いし、なんだか頭も痛い気がする・・・。


 「喋らなくて良いですよ。湖に落ちて濡れたせいか、熱がありますからね。寮に着くまでこのままゆっくり寝ていなさい。」


 「・・・はい・・・」


 普段は厳しめのエライシャ先生の声がとても優しかった。私はその声になんだか安心し、そのまま眠ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ