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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第八章 悪役令嬢は知られたくない
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事故?

 レブナン先生の期待に応えられるだろうか。私は1分程で考えをまとめて先生に説明を始めた。


 「え~っとですね・・・まず、トラヴィス殿下はレティと二人でチームを組みましょう」


 「え!?たった二人かい?」


 レブナン先生が面食らった表情を私に向けた。


 「はい、魔力の高いグループ内なら2人チームで十分だと思います。トラヴィス殿下は、ほとんどの種類の魔術を使えますし、レティは魔力はやや弱いですが攻撃に加えて回復魔術もできますから」


 「な、なるほど」


 先生が得心した様子で頷いた。


 「次はクリフとリリーのペアですね。クリフは魔力量と攻撃力はトラヴィス殿下並みですが、シールドが苦手で回復系が使えません。リリーとタッグを組むのがベストかと思います」


 「うんうん」


 「それからディーンとミリア。ディーンはシールドが得意ですし回復も使える。それに複数の魔術を同時に使えます。ミリアは土系魔術という珍しい魔術を使えて魔力も攻撃力も抜群ですから、面白い組み合わせになると思うんですよ」


 先生は「ちょ、ちょっと待ってくれ」と言うとメモを取り出した。ペンでさらさらと書きつけると、


 「よし続けて」


 と、ぎらぎらした目を私に向けた。若干血走ってるし、鼻息も荒い。


 (ちょ、ちょっと怖いかな・・・)


 「あ、兄のクラークとパーシヴァル殿下のペアです。兄はシールドだけはトラヴィス殿下に負けないくらい得意です。それに使える魔術の種類が多いのと、気配を消したりも出来るので色んなパターンで戦えます。パーシヴァル殿下は魔術の数はやや少ないですが、魔力量が多く攻撃力が高い。上手く噛み合えば、かなり強いチームになると思うのですが」


 最初は面倒だと思っていたけど、説明していくうちに少しワクワクしてきた。


 (うん、この組み合わせなら、どのチーム同士で戦っても良い勝負が出来そう)


 「魔力量と魔術のバランスを考えたら、以上の組み合わせが良いと思います」


 レブナン先生は満面の笑みで手を叩いた。

 「素晴らしい!素晴らしく理にかなっている!アリアナさん、中級レベルと下位レベルの生徒達の組み合わせも手伝ってくれないかな?」


 「分かりました!」


 私とレブナン先生がチーム分けをしている間は、トラヴィスが他の生徒達の面倒をみてもらい、30分くらい試行錯誤した結果、ようやく組み分けが終わった。


 「ようし!では新しいチーム同士で戦闘訓練だ!」


 先生は全く疲れた様子無く、生き生きした顔で生徒達に指示をしている。


 (ふう・・・!)


 私も、ほんの少しでも授業に参加出来て嬉しかったし、組み分けを完璧に終えた達成感に浸っていた。

 だけど一人、離れたところで戦闘の見学をし始めると、何だか滅茶苦茶視線を感じるぞ?


 (ん?)


 探すまでも無かった。ほとんどの女生徒達が私を睨んでいるでは無いか!ある事に思い至って私は愕然となった。


 (し、しまった、忘れてたぁ!)


 思えば参加した女生徒のほとんどは、イケメンである攻略者達とお近づきになる事が目的じゃないか!私がやった組分けは、彼女達からイケメン共と引き離した事になるのだ。


 (う、うかつ・・・さすがにそこ迄は考えが及ばなかった・・・)


 逆恨みの視線が、突き刺ささる様に痛い。

 私は彼女達の目線が届かないよう、こそこそと木の影に隠れる様に場所を移動した・・・が、その時だった!


 「危ない!!」


 そう叫ぶクリフの声と共に、


 バンッ!バリッ!バサバサ!


 という何かが裂ける様な大きな音が、頭上から聞こえて来たのだ。


 「えっ!」


 驚いて上を見上げたところを、誰かが私を抱え込んで転がった。


 「んぎゃああ!」


 ゴロゴロと何度も転がって、潰された様な声が出てしまった。


 (何?何?何?何が起きたの!)


 心臓がバクバクしながら目を開けると、10㎝くらいの距離でクリフと目が合った。


 「ぎ・・・」


 辛うじて、もう一度叫びそうになった所を必死で食い止めた。


 (あ、危ない・・・至近距離の美形はいきなりだと衝撃が・・・)


 バクバクどころか、心臓がコサックダンスを踊ってるようだ。呼吸も止まりそうで、絶対に体に悪いぞ!


 (どうしてこんな状況に!?)


 どうやら私はクリフに抱えられて地面に転がっているみたいだけど、全く理由が分からない。

 あたふたと半ばパニックになっているとクリフは身体を起こしながら、私を引き起こして地面に座らせた。


 「怪我は無いかっ!?」


 滅茶苦茶心配そうな顔で聞いてくる。


 「はは、はい!」


 少し声が震えた。 

 クリフがホッとした表情で緊張を緩める。そして周りからも「大丈夫か!?」と走り寄る人々の影が私にかかった。

 

 (そう言えばさっきの大きな音は何だったんだろう?)


 少し落ち着いてきて周りをキョロキョロ見回すと、クリフの背中越しに、私が座っていた場所に太い木の枝が落ちているのが見えた。


 (嘘だろ・・・)


 やっと状況が分かってきて血の気が引いた。


 (あんなの、下敷きになってたら大怪我だよ・・・)


 「あ、ありがとう、クリフ。おかげで・・」


 助かりました、とクリフに礼を言おうとした時に、駆けつけてきたディーンが私の頬に手を添えた。


 「大丈夫か!?アリアナ!」


 視線が合った途端に、ぼぼぼっと顔が熱くなってくる。


 (何で!?)


 意識しすぎ!今はそんな場合じゃないだろ!


 「だ、だ、大丈夫です!なんとも無いです!」


 ディーンから急いで目を逸らす。顔を見ると駄目だ。

 クリフの手を借りて立ち上がると、遠くからクラークやリリー達も駆け寄ってくるところだった。

 「何があったんだ!?」「怪我は無いですか?」と心配されるのに、笑顔で大丈夫と返事しながら、どうして枝が落ちて来たんだろうと木を見上げた。青々とした葉が茂っていて、枯れ枝が落ちたとは考えにくい。


 「それた衝撃波の魔術が、木を直撃したんだ」


 まるで私の疑問に答えるかのように、トラヴィスがこちらに歩いて来ながらそう言った。


 「中級レベルのグループの方からだったな」


 彼の言葉に数人の生徒の視線が一人に集まった。その中心で、冷えた眼差しをしたマーリンが私の方を真っすぐに見ていた。

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