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モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい  作者: 優摘
第六章 悪役令嬢は利用されたくない
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皇国と闇の組織

 でもイーサンの馬鹿笑いのおかげで、頭の中は冷えた。


 「もう気は済んだ?だったら話を戻すわよ。まずモーガン先生が闇の組織の一員だというのは本当なの?」


 「ああ、そうだ」


 「ではどうして、貴方がそれを教えてくれるのよ?闇の組織に属していないとは言え、関係はあるんでしょ?」


 前回のクリフの事件の時も私を誘拐までしたのだ。相当深く関わっているはずだ。だけどイーサンは小さく肩をすくめると、


 「仕方なく付き合ってるだけさ。・・・大事な物を取られてるんでね」


  珍しくイーサンの顔から笑みが消える。いつもニヤニヤ笑ってる顔しか見ていなかったから、普通の表情だと普段よりも幼く見えた。


 (ん?・・・要は人質みたいに、大切な物を取られてるって事なのかな?でもイーサンぐらいの力の持ち主だったら、簡単に奪い返せそうな気もするんだけど・・・)


 私の表情を読んだのか、イーサンは自嘲気味に笑って、


 「何処に隠されているのか分からない上に、壊されたりしたら取り返しがつかないのさ。それに組織自体は犯罪集団になってはいるが、中にいる奴ら全てが腐ってるわけじゃない。だから全員殺して、組織をつぶすわけにもいかなくてね」


 「あんたさらっと、恐ろしい事を言ったね・・・。まぁ、それはおいといて・・・でも犯罪を仕事にしてるなら、他の人も腐って無いとは言えないんじゃないの?」


 「闇の組織は闇の魔力を持ってしまった子供達の最後の逃げ場所だ」


 「え・・・?」


 「お貴族様は知らないだろうな。平民出身でも強い魔力を持つ者は、皇国から学校に行く金が出たり、色んな便宜を図ってもらえる。だから、この皇国の子供達のほとんどは、10才過ぎると魔力のテストを受けるんだ」


 「・・・そうなんだ」


 貴族は魔力が少なかったり、私みたいにゼロでもアンファエルン学園に通う事が出来る。だから魔力のテストは2年に進級時に受けるのが普通だ。


 (まぁアリアナが魔力ゼロなのは、テスト受ける前からゲームで知ってたけどさ、はは・・・)


 せめて少しでも魔力があれば、良かったのにと思う。せっかくこんな世界にいるんだから魔術を使ってみたかった。トラヴィスが羨ましい。


 そんな私の思いとは関係なく、イーサンは話を続ける。皮肉のこもった笑みが彼の表情に浮かんだ。


 「闇の魔力の持ち主は、ほとんどが平民から出てくるんだよ。まぁ単に分母が多いせいかもしれないがな。それに、もし貴族の中にそう言う者が出た時は、一族は必死で隠すだろうし」


 「なるほど・・・」


 確かに、そうかもしれない。私も知ってる限りでは、貴族の中に闇の魔力の持ち主が出た話は聞かない。


 「平民で闇の魔力の能力者が出た時はどうするの?精神魔力の持ち主の様に、封じる為の魔法具を付けられるの?」


 「そうだな・・・魔法具を付けられ、その上で牢に監禁される。時には始末される事もある」


 「えっ!?」


 そんな事、学園では教えてくれなかった。それに何処の本にも書いてなかったぞ!


 「だ、だって、ここ何年かは闇の能力者が出た事は無いって・・・。だから、この前イーサンが暴れた時、凄く問題になったんだよ!?闇の能力者は闇の組織の中に何人か居るって聞いたけど・・・でも、その人達も皇国の者じゃないだろうって・・・」


 私達はそう習った。どの資料にも本にも、そう記されていた。


 (もしかして闇の魔力の能力者は、もっと頻繁に表れていたってことのなか?・・・だとしたら・・・)


 「まさか・・・闇の魔力の能力者の出現を、ずっと皇国が隠してきたと言うの?」


 「そうさ。皇国は闇の能力者が出た時、それを絶対に公にしないようにしてきた。何十年も何百年も、秘密裏に処理を行ってきたんだ。なぜなら闇の能力者はこの国にとっては、禁忌だから。存在する事さえ許されない・・・」


 「ど、どうして!?」


 イーサンはそれには答えず、黙ったまま、顔をランプの方に向けた。そして、


 「とにかく組織はそういう闇の魔力を持ってしまった子供を、密かに保護し匿っている側面もある。・・・それだけではないけれどな」


 一瞬イーサン口元が歪み、語尾が震えた。


 「イーサン・・・?」


 「いや・・・何でも無い。いずれにせよ大人になったら、結局そいつらは犯罪に利用される。そうして、心まで闇に落としていく奴もいる」


 イーサンが意図的に話を変えた事が分かったが、私はそれには触れなかった。なんだか、イーサンの横顔が辛そうに見えたからだ。だから、あえて彼の話に合わせる事にした。


 「悪循環だね。だったらその元凶になってるトップを潰さないと。その中にモーガン先生が入ってるの?」


 「そうだな・・・」


 「トラヴィス殿下は、どうして組織から狙われてるの?」


 いまや彼は私の大事な同士だ。そこはちゃんと聞いておきたい。


 「今回、暗殺以来をしてきたのはバフィア国の者だ。どうやら隣国のセルナク国のエメラインとの婚約を邪魔したいようだ」


 「げっ」


 私は、げんなりした気分になった。なぜなら、このストーリーを知っていたからだ。


 (あれだ・・・バフィア国はエメラインとトラヴィスの結婚で、皇国とセルナク国の繋がりが強くなるのが嫌なんだよね。だからトラヴィス・ルート以外の時は、たまに、この流れがあるんだったっけ)


 トラヴィスも、この事は絶対に知っている筈だけど、必ず起きる事じゃ無いから忘れているかもしれない。


 (これは直ぐにでも、ちゃんと確認しなくちゃ)


 それともう一つ、どうしてもイーサンに言いたい事があった。


 「貴方さっき、モーガン先生が私に絡むのは、私に居る周りの人に重要人物が多いからって言ったよね?もう一度言うけど、私が中心にいるなんて完全に誤解だからね!意味が分かんないよ、ただのとばっちりじゃんか」


 何度も言うが、私はただのモブなんだよ!頭を抱える私に、イーサンは呆れた顔向けた。


 「さっきも言っただろ。お前は目立つんだよ」


 「んな、馬鹿な!」


 「それに俺が気に入ってるからだろうな・・・」


 「は?」


 どういう事だ?


 「俺がお前に興味を持ったから、サグレメッサもお前に目を付けたみたいだ。あいつは俺に執着してるからな。・・・まぁ、せいぜい気を付けろ」


 な、何だって!?


 「ちょ、ちょっと!じゃあ、今の私の状況って、全部あんたのせいじゃんか!」


 「全部じゃない。目立つお前が悪い」


 「目立ってない!」


 また頭に血が上ってきた。なんでイーサンと話すと、いつもこうなるんだ?。イーサンは、カッカしている私を全く気にすることなく窓に目を向けると、


 「そろそろ夜明けだ。じゃあな、公爵令嬢。また来る」


 「何言ってんのさ!絶対もう、来なくていい!」


 イーサンはフッと笑うと、


 「またな、アリアナ」


 そう言うと同時にイーサンの姿は消えていた。彼が座っていた所のベッドのへこみだけを残して。


 私はへなへなと床に座り込んで、がっくりと両手を付いた。


 (疲れた・・・)


 そう言えば私は病み上がりだった。それなのに、あのイーサンの馬鹿のせいで、余計に体力を消耗してしまった。


 ベッドに戻ろうかと思ったが、イーサンが座ってた所に寝るのは、なんとも嫌な気分がした。私は溜息をついて、寝室のソファに横になった。


 (ステラ達が起きたら、シーツを変えて貰おう)


 さっきは目が冴えていたけど、何度も怒ったその反動か、私は柔らかいソファに沈むように眠ってしまった。

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