エピローグ
「もう!、もっとスピ―ドは出ませんの!?」
「アリアナ、今日の天気でこれ以上馬車を急がせるのは危ないよ」
お兄様のクラークは、わたくしをやんわりとをたしなめた。でも、わたくしはそんなの聞いていられない。
「ダメですわ、お兄様!だってディーン様はもう学園に着かれてるんですって。わたくしも早く行かないと」
「別に、ディーンは逃げやしないと思うよ。」
「そんなことを言ってるのでありませんわ!ディーン様は女性におもてになるのです。おかしな人に言い寄られてるかもしれませんわ!」
そう、わたくしは心配なのだ。とにかくディーン様はもてる!公爵令息で美形で頭も良い!もてない方がおかしいくらい。
「大丈夫だよ、アリアナ。ディーンはお前の婚約者じゃないか。それに、お前はとても可愛らしいからね。ディーンが他の女性に目移りする事は無いよ」
お兄様は「そんなことがあったら僕が許さないよ」と言いながら、私を愛おしそうに見た。でも私は心配で仕方なかった。
「まだ、学園は遠いんですの?」
馬車の外は大雨の様だ。強い風の音も鳴っている。
「夕方までに着かないと、今日中にディーン様には会えませんわ!」
そう言って、御者にもっとスピードを出すように言おうと思い、前方の小窓を開けた時だった。
ドーン!と言う鼓膜を破るような音と、真っ白い閃光が辺りを包んだ。
「キャー!」
わたくしはそのまま意識を失った。